団は、一刻も早い戦闘停止と和平交渉開始を呼びかける声明を出
しています。ロシアによるウクライナ侵攻がはじまったのは、2
月24日のことであり、きわめて早いタイミングでこの声明は出
されています。声明の全文を掲載します。
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◎相互の尊重/双方の利益
2月24日に始まったウクライナでのロシアの軍事作戦に関連
し、一刻も早い戦闘行為の停止と早急な平和交渉の開始が必要だ
と我々は表明する。世界には人間の命より大切なものはなく、あ
るはずもない。相互の尊重と、双方の利益の考慮に基づいた交渉
と対話のみが最も深刻な対立や問題を解決できる唯一の方法だ。
我々は、交渉プロセスの再開に向けたあらゆる努力を支持する。
──ゴルバチョフ財団
https://bit.ly/3zfF7Yp
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現在、50歳以上の人で、ミハイル・ゴルバチョフ氏の名前を
知らない人はいないはずです。元ソ連大統領で、現在、財団総裁
のミハイル・ゴルバチョフ氏(91)は約30年前、米ソ冷戦を
終結に導き、ノーベル平和賞を受賞しています。
ゴルバチョフ氏は何をやったのでしょうか。
1985年、ゴルバチョフソ連大統領は、中央統計局の改革に
乗り出し、経済統計の整備をはじめたのです。1990年、ソ連
は、IMF、世界銀行、OECDなどの調査団を受け入れ、この
ときの調査結果は、「IMF等によるソ連経済調査報告書」にま
とめられ、公開されています。社会主義国家のソ連では考えられ
ない画期的なことです。
これがゴルバチョフソ連大統領による「グラスノスチ(情報公
開)」です。しかし、その次の年の1991年、ソ連が崩壊して
しまうのです。
ソ連崩壊から3年後の1994年のことです。ロシア科学アカ
デミーのヨーロッパ比較社会・経済研究センターのヴァレンチン
・ミハイロヴッチ・クードロフ氏という経済学者は次のように述
べています。
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現在のロシア統計は旧ソ連の統計から生まれ、悪しき伝統を引
き継いでいる。ソ連時代には生産の伸び率が意識的に水増しされ
ていた。分析に必要な分類[グループ分け]のできない統計表が
作成され、多くのデータばかりか、あらゆる部門にわたる統計も
公表が制止されていた。こうした統計では、重要な経済研究はも
とより、適切な行政的決定にも役に立たない。
例えば、ソ連における工業生産が(1917年から1987年
までの)70年間に330倍に増加し、国民所得が、149倍に
なったことを裏付けるような計数はまったく存在しない。ところ
が、ほかならぬこうした数字がソ連邦国家統計委員会の統計年鑑
記念号に載っている。
──ヴァレンチン・ミハイロヴッチ・クードロフ著/是永純弘訳
『世界経済と国際関係』1994年1月号より
上念司著/『習近平が隠す本当は世界3位の中国経済』
講談社+α新書744−2C
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なぜ、中国の話がソ連の話になるのかというと、中国は、この
ソ連式の統計処理を受け継いでいると思われるからです。そうな
ると、公表されるGDP統計自体が信用できなくなります。
日本のGDPが中国に抜かれたのは2010年のことです。そ
もそも中国のGDPに占める不動産ビジネスの割合は、公式では
20%とされていますが、実態は30%以上はあります。中国と
しては、何としてもGDPで日本を追い抜き、GDP世界2位に
浮上したかったのです。そういう意味からも、中国のGDPには
嵩上げ部分があると考えられます。
経済評論家の上念司氏の上記の本に、きわめて興味深いグラフ
が掲載されています。それを添付ファイルにしてあります。この
グラフは、1985年を起点とし、中国政府発表のGDPの公式
統計、GDPの水増しの量が3%、6%、9%と設定した場合の
それぞれの2016年時点でのGDPの伸び率を示しています。
そうすると、公式統計において日本は大差を付けられているも
のの、少なくとも2010年の時点では、中国はたとえ9%の水
増しでも、日本のGDPを抜いていないのです。ちなみに、20
16年の日本のGDPは522兆円です。これは、中国のGDP
の計算が異常に早いことと無関係ではありません、
住宅建設に限っていうと、中国のデベロッパーは、地方政府か
ら開発の許可を取って土地の利用権を取得すると、直ちに開発計
画物件の販売計画を立てて、販売を進めることができます。何し
ろ住宅が完成していなくても、住宅の購入契約を締結した時点で
住宅の代金全額を手にすることができるし、しかもこのお金は、
実質的に無利子なのです。
したがって、中国のデベロッパーは、その代金を使って、次々
と住宅を建設できるし、いろいろな事業の展開も可能です。つま
り、人為的に住宅のバブルの創出がやれるので、GDPをいくら
でも膨らませることができます。
住宅の購入者がなぜそういう仕組みを許してきたかというと、
住宅を購入したときから、住宅が完成して引き渡しを受けるまで
の期間に住宅の価格が上がることが期待できたからです。購入契
約時よりも住宅の価格が何倍にもなっていれば、そのまま住宅を
転売すれば大儲けができます。つまり、引き渡し時の転売です。
これは、購入契約書自体を売るということと同じですから、その
契約書自体が金融商品化していることになります。
だからこそ、習近平主席が「住宅は人が住むもの」とわざわざ
念を押したのです。こういう仕組みで、中国のGDPは膨張して
いったのです。 ──[新中国論/011]
≪画像および関連情報≫
●中国で新築住宅販売が半減!不動産バブル崩壊とゼロコロナ
対策の「板挟み」
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中国経済の減速傾向が鮮明になっている。不動産バブルの
崩壊と新型コロナウイルスの感染再拡大の悪影響が大きく、
中国経済は二つのマイナス要因に挟撃されている。いずれも
共産党政権の想定を上回る勢いで、中国経済を下押ししてい
る。3月の暫定値ではあるが、不動産開発上位100社の新
築住宅販売は、前年同月比で53%減少した。原因として、
共産党政権が不動産バブルの軟着陸(バブルつぶし)を目指
して、不動産融資などの規制を強化したことが決定的だ。
また、コロナ禍対策に関して、習近平政権はゼロコロナ対
策を徹底している。それは社会と経済活動の維持に欠かせな
い人流や物流、サプライチェーンを寸断している。
個人消費、自動車などの生産、さらに建設活動などの鈍化
は免れないだろう。2022年、中国が5・5%前後の経済
成長率目標を達成することが難しくなっている。不動産企業
向けのローンなどを組み込んだ「理財商品」の価値がさらに
下落し、共産党政権への不平や不満が増える展開も否定でき
ない。習政権は3期目続投を円滑に実現するために、急速か
つ大規模な景気刺激策を打ち出さなければならないと危機感
を強めているだろう。
不動産バブル崩壊と感染再拡大の挟撃によって、中国経済
の減速が止まらない。加えて、IT先端企業への締め付け強
化も、景気を下押ししている。その目的の一つは、SNSを
用いて人々が共産党政権の目の届かないところで結託し、党
独裁体制への批判が増える展開を阻止するためだろう。
https://bit.ly/3SbZgaq
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日中のGDP推移