2022年07月22日

●「中国で李克強首相期待論が顕在化」(第5777号)

 明らかに中国に何らかの異変が起きています。2022年5月
25日のことです。中国の中央政府である国務院は次の会議を開
催しています。
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◎2022年5月25日開催
 「経済対局を安定化させる全国テレビ・電話会議」
 【新華社北京5月26日】中国国務院は25日、全国経済安定
化テレビ電話会議を開いた。李克強(り・こくきょう)中国共産
党中央政治局常務委員・国務院総理が重要演説を行った。韓正中
国共産党中央政治局常務委員・国務院副総理が会議を主宰した。
                  https://bit.ly/3PuJl4K
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 この会議の写真は添付ファイルにしてありますが、中国で普通
に行われる会議とはいささか異なるのです。会議のタイトルは、
「経済対局を安定化させる全国テレビ・電話会議」となっている
ので、テーマは「経済」ということになります。
 昨日のEJで述べたように、これまで経済をテーマとする会議
は、中央財経委員会で行われ、そのトップは国務院総理(首相)
が担っていたのです。胡錦濤政権時代の同委員会のトップは、温
家宝氏(首相)でした。しかし、習近平政権になってから、習近
平国家主席は、同委員会の主任の座を李克強首相から奪い、経済
運営の主導権は習近平主席が握っているのです。
 そういう状況において、この会議はきわめて異例です。そもそ
も国務院の主催であり、李克強首相がトップになっている会議だ
からです。この時期、このような会議が堂々と行われる異常さに
ついて、中国人ではあるが、2007年に日本国籍を得た石平氏
は、最近の著書で次のように述べています。
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 習近平政権になってからは、どの分野の会議にしても「習主席
不在」の全国大会が開催されたことはなく、異例中の異例、まさ
に前代未聞のことである。その意味するところはすなわち、李首
相が習主席から経済運営の主導権を奪い返しつつあって、そして
地方における自らへの支持を拡大しているということである。全
国の10万人規模の幹部たちが李首相召集の会議に参加してきた
この光景は、まさに、李首相自身の勢力拡大と地位上昇の象徴で
あって、少なくとも経済運営の面においては、「天下」はもはや
「李克強の天下」となった。
 大会において李首相は「重要講話」を行い、経済立て直しの具
体策を示す一方、習主席肝煎の「ゼロコロナ政策」に対する言及
は一切なかった。言ってみれば李首相は、「ゼロコロナ政策」の
乱暴さと愚かさを特徴とする「習近平路線」と一線を画して、自
らの現実路線を標榜しているのである。──石平著/ビジネス社
       『バカ殿を指導者にした/断末魔の習近平政権』
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 さらに注目すべきことがあります。この5月25日の会議に、
解放軍上将の魏鳳和国防相が参加していることです。これはまさ
に前代未聞のことであり、習近平体制への反対姿勢を示したもの
ととられても仕方がない行為です。これに対して、習近平主席が
沈黙していることが不気味です。
 まだ、あります。外から見ていると、何でもかんでも習近平主
席が牛耳っている現代の中国においては、考えられないことが起
きています。
 上記の5月25日の李克強首相主催の会議に管濤(かんとう)
という著名な経済学者が参加していることです。管濤氏は、中国
銀行所属の学者で、彼は、4月12日の中国紙・毎日経済新聞に
登場し、李克強首相を次のように絶賛したのです。
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 李克強首相は各業界の抱える問題と困難を詳しく把握しており
問題のポイントをきちんと押さえている。人々は中央上層部が当
面の情勢を把握していないのではないかとの心配を抱いていたが
李首相は実情をきちんと理解しているだけでなく、具体的な対策
も持っている。だから心強い。
            ──石平著/ビジネス社の前掲書より
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 現在の中国では、李克強首相を褒めるということは、習近平主
席を批判することを意味するので、なかなかできないことです。
しかも、それを中国メディアが取り上げているという事実です。
明らかに現在の中国において、李克強首相が力をつけてきており
それは、暗に習近平体制への批判として捉えることができます。
 4月29日のことです。恒例の共産党政治局会議が開催されて
います。この会議のなかで、コロナ対策についても言及があり、
次の2つのことが示されたのです。
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  @感染拡大を防ぐのと同時に経済を安定させるべきである
  Aコロナウイルスの変異と経済発展の効果的な統括を図る
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 多くの中国ウオッチャーは、これによって中国も、極端なゼロ
コロナ対策を改め、現実路線に戻ると期待したのです。ところが
その6日後の5月5日、習近平主席が共産党の最高指導部である
中央政治局常務委員会を主催したのです。そこでは、当然ゼロコ
ロナ対策の緩和について言及があることが期待されたのです。し
かし、そこで示されたものは、これまでのゼロコロナ対策の正当
性を主張する次のような内容だったのです。
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 今までのコロナ対策、つまりゼロコロナ政策は、党の政策と趣
旨に基づいて定められたものであって、科学的であり、有効な政
策である。しかも重要な戦略的効果をすでに挙げたものである。
            ──石平著/ビジネス社の前掲書より
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                 ──[新中国論/004]

≪画像および関連情報≫
 ●ゼロコロナ政策維持に腐心する習近平政権/秋の党大会にら
  み景気対策で庶民の不満緩和に躍起
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   【北京=新貝憲弘】中国の政権が、厳しい行動制限で新型
  コロナウイルスの感染拡大を抑え込む「ゼロコロナ」政策の
  維持に腐心している。長期政権を目指すため政策の成果を誇
  示する習氏だが、上海でのロックダウンに代表されるように
  経済への悪影響は深刻。景気対策や部分的な緩和にも踏み切
  り、庶民の不満を和らげようと懸命だ。
   「わが国は人口規模が大きいため、『集団免疫』や『成り
  行き任せ』のような防疫政策を取れば目も当てられない結果
  になる」
   習氏は6月末に湖北省武漢市を視察した際、ゼロコロナ政
  策が中国の実情に合わせて生まれたものであり、とくに高齢
  者や子どもを守るためにも維持しなければならないと強調し
  た。習氏の発言はゼロコロナ政策の堅持に聞こえるが、実際
  は緩和とも取れる動きが相次いでいる。
   中国政府は隔離期間を2週間から1週間に短縮したほか、
  国内移動の制限も緩和。李克強首相は積極的なインフラ投資
  で就職難の解決や消費喚起を促すよう指示した。国営新華社
  通信は「われわれはコロナ防疫と経済社会の発展をよく釣り
  合わせ、今年の経済を比較的良いレベルまで発展させる自信
  がある」との論評を配信した。  https://bit.ly/3ATj6kx
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経済対局を安定化させる全国テレビ・電話会議.jpg
経済対局を安定化させる全国テレビ・電話会議
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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