2022年07月14日

●「強制貯蓄が溶ければ景気回復する」(第5772号)

 参院選に大勝したにもかかわらず、岸田首相の顔は厳しいまま
です。それは、安倍元首相を突然失った喪失感によるものである
ことは確かですが、これからは何もかも自分で決断してやらなけ
ればならない立場になったことによる不安感を伴う責任感ではな
いかと考えられます。
 安倍元首相の突然の逝去を受けて、岸田首相は親しい人に、次
のようにいったといわれます。
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 もう一つの中心がなくなった。どうやって安定をつくるのか、
考えないといけない。             ──岸田首相
           2020年7月12日付、日本経済新聞
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 「もう一つの中心」とは何かというと、宏池会には「楕円の理
論」というものがあって、ものごとには、二つの中心がある方が
一つよりも安定するという考え方です。その二つの中心の一つが
安倍元首相であり、もう一つが自分であると考えて、ここまで、
やってきたが、その一つが突然なくなってしまった。その喪失感
が、岸田首相の表情を厳しくさせているのです。
 岸田政権の課題はたくさんありますが、何よりも重視すべきは
エネルギー問題のからむ物価高への適切な対策であり、早急に景
気を回復させることです。6月14日(火)に、ニッポン放送の
「飯田浩司のOK! Cozy up!」に高橋洋一氏が出演して、 次の
やりとりをしています。
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飯田:資金繰りについて飲食業の方々に聞くと、むしろコロナ禍
 から起動していくときに運転資金が必要なので、「ここから先
 が踏ん張りどころなのですよ」という話を聞きます。
高橋:金融支援でどこまでできるかわかりませんが、やはり景気
 をよくしないと本質的には難しいですよ。
飯田:全体のマクロをよくしていかないと。
高橋:日本銀行はこんな話をしていないで、全体のマクロ経済を
 よくすることを考えていただきたいです。「急速な円安が経済
 にマイナス」と言われていますが、「急速」ということはない
 と思います。
飯田:急速ということは
高橋:こういう関係を活かすマクロ経済政策により、需給ギャッ
 プ(GDPギャップ)を縮めるようにするべきです。黒田さん
 はGDPギャップについて、強制貯蓄があるから縮まるかのよ
 うに説明していますが、大問題です。飲食が大変なら「Gо・
 Tоトラベル」など「呼び水」になることをやるべきです。そ
 うすれば本当に需要が出ます。
飯田:資金繰りを支援するのであれば、経済を回して利益を上げ
 てもらった方がいいと。
高橋:日銀の黒田総裁は「強制貯蓄で回復します」などと言わず
 に、「ここは呼び水が必要です」ということで、「総理Gо・
 Tоトラベルをぜひ」と言った方が面白いではないですか。
                  https://bit.ly/3aC84VX
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 このやり取りのなかで、「強制貯蓄」という言葉が出てきます
が、これは何を意味しているのでしょうか。
 これは、日銀がいい出したことですが、「感染症の影響下で消
費機会を失ったことなどにより積み上がった手元資金」を意味し
ています。例えば、夏休みに旅行に行く予定でいた家庭が、コロ
ナ禍で行けなくなったとします。そのさい、旅行に使う資金が使
えなくて手元資金として残りますが、その資金のことを「強制貯
蓄」といっているのです。2020年中に約20兆円が強制貯蓄
されたと見ています。国民一人当たり16万円になります。
 一方、「リベンジ消費」という言葉もあります。「リベンジ消
費」は、我慢した分を日頃より高価な商品──高級時計とか、高
級車などの購入やサービスに使うことをいいますが、多くの場合
これは長続きしないのです。
 黒田日銀総裁は、強制貯蓄があるから、これが溶ければGDP
ギャップは埋まるといっていますが、「旅行にいったことにして
貯蓄する」と考える家庭もあります。そのためには「Gо・Tо
トラベル」など「呼び水」が必要であり、黒田総裁はそのことを
強調すべきであると高橋洋一氏がいうのです。
 そもそも景気回復のための経済政策はGDPギャップ(需給ギ
ャップ)を有効需要で埋める必要があります。6月6日の内閣府
発表の2022年1月〜3月のGDPギャップは、▲3・7%、
これは、年換算で21兆円の需要不足ということになります。
 高橋洋一氏によると、内閣府の推計は甘いところがあって、実
際にはGDPギャップは30兆円はあり、これを解消しない限り
日本はデフレから脱却できないといっています。現在、米国はイ
ンフレになっていますが、これは、バイデン政権になってから、
大型の財政出動をして、GDPギャップがなくなっているからイ
ンフレになっています。つまり、デフレから脱却するということ
は、このGDPギャップをなくすことを意味します。
 なぜ、GDPギャップをなくさなければならないかについて、
高橋洋一氏は、次のように述べています。
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 経済対策では、GDPギャップを有効需要で埋めるという原則
がある。というのは、GDPギャップがあると、その後(だいた
い半年程度で)失業率が上昇するからだ。政府には最低限、雇用
を確保する責務があると考えれば、余計な失業を放置しておくの
は許さないという考えだ。もちろん、雇用を維持したうえで、給
与が高くなれば申し分ないが、経済対策の一般則では雇用を確保
した上でないと、給与は上がりにくい。    ──高橋洋一氏
                  https://bit.ly/3P2t1IF
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              ──[新しい資本主義/128]

≪画像および関連情報≫
 ●デフレギャップ、内閣府版は過去最大 日銀となぜ違う
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   内閣府が2020年10月8日に公表した2020年4〜
  6月期の需給ギャップのマイナス幅は数字を遡れる1980
  年以降で最大となった。マイナスなのは、日本経済の供給の
  「実力」に対する需要不足を示し、「デフレギャップ」と呼
  ばれる。これに先立つ5日に日銀が公表した同じ時期のデフ
  レギャップは11年ぶりの大きさと、リーマン・ショック時
  よりはまだ小さい。内閣府と日銀でなぜ違うのか。
   内閣府が「GDPギャップ」と呼ぶ需給ギャップは、4〜
  6月期はマイナス10・2%だった。3四半期連続で水面下
  に沈み、マイナス幅はリーマン・ショック後で最も大きかっ
  た09年1〜3月期のマイナス6・9%を上回った。
   需給ギャップとは、実際の需要を示す現実のGDP(国内
  総生産)と日本経済の平均的な供給力である潜在GDPの差
  を、潜在GDPに対する比率で%表示したもの。経済全体の
  「稼働率」を表しているといえ、需要不足による設備や労働
  力の遊休の度合い、景気の状況、物価の下落圧力などを知る
  ための重要な指標だ。日銀版では4〜6月期はマイナス4・
  83%だった。約4年ぶりにマイナス圏に転じ、その深さは
  09年4〜6月期以来とこちらも深刻な需要不足を示してい
  る点では変わりない。だが、どうして数字に違いが出てくる
  のだろう。        https://s.nikkei.com/3IzvA2r
  ───────────────────────────
GDPギャップ.jpg
GDPギャップ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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