たかについて考えています。岸田政権は、元安倍政権と違って、
ウクライナに侵攻したロシアに対して、G7と一体になって非常
に厳しい姿勢で臨んでいます。
2014年のロシアのクリミア侵攻のときは、安倍政権でした
が、日本はG7とともに制裁は課したものの、ロシアのプーチン
大統領をして、日本を「非友好国」と指定するほどの厳しい制裁
ではなかったように思います。
しかし、ロシアは隣国であるし、北方領土の問題や、日ロ漁業
交渉もあるので、プーチン政権やその後の後継政権と領土交渉が
できる余地を残しておく必要があります。それが外交というもの
です。まして岸田首相は、外相を長く務めていましたが、プーチ
ン大統領とそれほど親しい関係とは思えないのです。
そういう意味において、岸田政権として、やらないでもよかっ
たのではないかと思われることが2つあります。
─────────────────────────────
@駐日ロシア外交官の国外への追放措置
A岸田首相のNATO首脳会議への参加
─────────────────────────────
ところが、ロシアに対して一貫して強気の岸田首相ですが、日
本企業(三井物産/三菱商事)が出資する「サハリン2」事業に
ついては、同じくこの事業に参加する英蘭ロイヤル・ダッチ・シ
ェルが撤退を表明したにもかかわらず、「サハリン2はきわめて
重要なプロジェクト」であるとして、「撤退しない」と主張して
います。ロシアに対する強気な姿勢は、サハリン2に関しては、
かなりトーンダウンしているようにみえるのです。
そういう岸田政権に向けて、プーチン大統領は、サハリン2を
ロシア側が新たな設置する会社への移管を定めた大統領令に署名
したと通告してきたのです。NATO首脳会議がロシアを「最大
かつ直接の脅威」と指摘した直後のタイミングであり、プーチン
大統領による岸田政権への強烈な「報復措置」と考えられます。
ロシア産のLNG(液化天然ガス)は、日本のLNG輸入の約
9%を占めますが、これが止まると、値上げが続いている電気・
ガス料金が、さらに高騰する可能性があります。ロシアに強気な
岸田首相が、サハリン2に対してだけは、何となく弱気なのには
別な事情もあります。
それは、岸田首相の選挙区・広島市に本社を置く広島ガス株式
会社(通称:広島ガス)という企業がありますが、このガス会社
は、LNGの年間輸入量のうち、約5割に当たる20万トンをサ
ハリン2から仕入れている関連しています。もし、これが止まる
と、広島の県民生活や県経済に、重大な影響が出ることになりま
す。プーチン大統領は、そのことを百も承知していて、サハリン
2に手を出してきたものと考えられます。明らかに日本に対する
報復であるといえます。しかし、岸田首相は「すぐに液化天然ガ
スが止まるものではない」の一点張りで逃げているように感じま
す。この間の事情について、7月2日発行の「日刊ゲンダイ」は
次のように報道しています。
─────────────────────────────
今年3月の参院経済産業委員会で、野党議員が、「(広島ガス
が)サハリン2からの調達ができなくなってしまった場合、(広
島の)県民生活や県経済に大きな影響が出るのではないか」と懸
念を示していた通り、供給停止のツケは消費者に回ってきかねな
い。すでに電力大手10社のうち8社が、燃料費の上昇分を価格
転嫁できる料金制度の上限に到達。広島に本社を置く中国電力も
上限に達したうちの1社だ。
「生活必需品や光熱費の高騰は今まさに起こっている問題。前
々から業界団体や県民から物価高への不安が出ていたのに、岸田
首相は何ら対応できていない。サハリン2をめぐっても「対応を
考える」と繰り返していますが、本当に対策を講じているのか疑
問です」(広島県政関係者)これが「外交の岸田」の軍拡外遊三
昧の“成果”だとしたら、そのツケを払う地元有権者は、浮かば
れない。 ──2022年7月2日発行「日刊ゲンダイ」
─────────────────────────────
広島ガスとは別に、ロシアによるサハリン2の措置に日本が衝
撃を受けている情報もあります。とにかくサハリン2に関する日
本の対応は、非常に潔いとは思えないものであるからです。英蘭
ロイヤル・ダッチ・シェルは、ロシア軍がウクライナに侵攻した
直後、このプロジェクトからの撤退を表明しています。きわめて
潔いし、「不当なことは許さない」という断固たる姿勢です。
また、サハリン2に隣接する石油・天然ガス開発プロジェクト
であるサハリン1に出資する米石油大手のエクソンモービル社も
3月にはこの事業からの撤退を決断し、その翌月には、撤退に伴
う損失として、34億ドルにのぼる損金処理を既に行っているの
です。日本だけがサハリン2に関しては、ダラダラと、未練がま
しく「撤退しない」と表明しているのです。「日本憎し」に凝り
固まっているプーチン大統領は、その日本の弱みを衝いてきたと
いえます。
この日本の鈍い姿勢には、日本がサハリン2に関連した新規事
業を経済産業省が主導して、ロシアと密かに進めつつあったこと
に関連しています。それは、ロシア最北部に位置するギタン半島
でのLNG開発事業です。この開発事業には、初期投資だけでも
1兆2千億円もの資金が投入される予定になっているウルトラビ
ッグプロジェクトです。
経済産業省としては、ここから算出される天然ガスから、水素
を分離し、クリーンエネルギーに区分される水素を確保する計画
だったといわれています。したがって、サハリン2から撤退する
と、この事業の計画が雲散霧消してしまうので、サハリン2から
の撤退を躊躇っているのです。なお、この計画には、安倍元首相
が一枚噛んでおり、その命を受けて、今井官房参与が動いていた
とされています。 ──[新しい資本主義/122]
≪画像および関連情報≫
・サハリン2の次は「中国による北方領土開発」か、ロシアの
報復は止まらない/近藤大介氏
───────────────────────────
連日の猛暑で電力不足がクローズアップされる中、日本国
内で「サハリン2ショック」が収まらない。6月30日、ロ
シアのウラジーミル・プーチン大統領が、極東地域の日ロ共
同天然ガス事業「サハリン2」に新たに事業体を設立し、す
べての資産をその事業体に移行するという大統領令に署名し
た。権益を求める会社は、1カ月以内にロシアに再申請を行
うようにとのことである。その際の条件などは不明だが、日
本側がとても受け入れられないような条件を突きつけられる
可能性がある。
「サハリン2」は、ロシアのガスプロムが50%+1株、
イギリスのシェルが27・5%−1株(2月に撤退を表明済
み)、三井物産が12・5%、三菱商事が10%の権益を保
有している。2009年、「中東一辺倒のエネルギー輸入先
を分散させる」との日本政府の肝煎りで稼働した。生産量の
約6割をLNG(液化天然ガス)として日本向けに輸出して
おり、日本の輸入LNGの約9%にあたる。
日本には翌7月1日にこのニュースが伝わり、それから数
日、岸田文雄政権は、日本国内に広がる「サハリン2ショッ
ク」を抑えるのに躍起になっている。実は私は、シェルが、
「サハリン2」からの撤退を表明した直後の3月初旬、岸田
政権のある関係者から、こんな話を聞いていた。「三井物産
と三菱商事は『絶対に撤退しない』と強情を張っている。ま
た萩生田光一経産相も、『権益を日本が手放せば、第三国に
渡ってしまい、ロシアを制裁することにならない』と述べて
いる」。 https://bit.ly/3ulYY6G
───────────────────────────
プーチン大統領/サハリン2について宣言