2022年07月01日

●「消費減税なら年金財源3割カット」(第5763号)

 6月26日のNHKの『日曜討論』で、またしても与党から、
とんでもない発言が飛び出し、騒ぎが起こっています。発言の主
は、自民党の茂木幹事長です。
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 消費税なんですが、みなさんからお預かりしている消費税、こ
れは年金・介護・医療そして子育てシェア、社会保障の大切な財
源です。これをですね、野党のみなさまがおっしゃるように下げ
るとなると、年金財源は3割カットしなくてはならなくなる。
     ──26日の「日曜討論」における茂木幹事長の発言
                  https://bit.ly/3yoOuph
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 茂木幹事長という人は頭の良い人です。その理由をちゃんと説
明しています。年金には「国庫負担分」があります。金額にする
と12・8兆円。公的年金の収入は52・5兆円(2020年度
予算)。12・8兆円はその24%に相当します。この国庫負担
金は消費税収を財源にしています。したがって、消費税を6%引
き下げると、年金収入は13兆円の減収になり、年金財源が約3
割カットされてしまうことになります。
 理路整然としています。しかし、これは自民党の立場からの論
理展開です。年金制度が創設されてからしばらくの間は、保険料
が大量に入ってくる一方で、出て行く年金が少なかったので、年
金資金は貯まる一方だったのです。そのため、無駄な箱モノを建
てたりして、巨額の資金が無駄に使われ、財源が相当減少してし
まったのです。そのため、年金の種類に関係なく、誰でも受け取
れる基礎年金の部分に税金を投入することが決められたのです。
それが国庫負担分です。
 そのため政府は、年金支給のため、毎年国庫負担金分を税金か
ら手当てしなければならなくなり、その財源に毎年苦慮するよう
になります。何しろ日本は経済が30年も成長しない国であり、
税収が増えないからです。しかし、それは政府の責任であり、ひ
いては、超長期政権の自民党の責任です。そこで考えられたのが
消費税を増税し、それを国庫負担分の財源にする方法です。
 そういうわけで、消費税を5%から10%に税率を引き上げる
ときに、消費税法第1条第2項に「毎年度、制度として確立され
た年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するた
めの施策に要する経費に充てるものとする」を加えて、主たる使
途を明記したのです。
 しかし、これは、消費税を社会保障の目的税にしたわけではな
く、税金として入ってくるものから国庫負担を手当てすることに
は変わりがないのです。お金には色はついていないからです。こ
のことは、6月27日のEJで述べています。
 しかし、そもそも年金は、収入のなくなった高齢者が支給を受
けるものです。その支給の原資を、一部とはいえ、年金以外に収
入のない高齢者も負担せざるを得ない消費税で用意する──完全
に間違っていると思います。
 しかも、コロナ禍はまだ終わっておらず、そうでなくても国民
全般に収入が減っているのに、物価は高騰し、実質収入は激減し
ています。政府として何か対策を立てるべきです。そのための政
権与党ではありませんか。
 しかし、収入を突然上昇させることは困難であり、誰もが支払
わざるを得ない消費税を暫定的に減額し、実質収入をこれ以上下
げないように配慮する──これが政府として採択すべき合理的な
政策であると思います。消費税減税は、コロナ禍以降、経済対策
の一環として世界中で行われています。減税を実施している国と
地域は、世界で91になるのです。主要国で減税していないのは
まさに日本だけです。
 税理士で、立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏は、今回
の茂木発言について、次のように述べています。
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 恐らく茂木さんの言った「年金3割カット」は国が負担する社
会保障費の3割、約10兆円規模を指しているのだと思いますが
消費税を減税しても、他に財源を見つければ解決する話だと思い
ます。例えば、試算によると、金持ちや大企業優遇の現行の税制
を見直して“応能負担”に基づく累進化を進めれば、約40兆円
の税収が見込まれます。消費税が法人税減税などの穴埋めに使わ
れているといった問題もあるのに、いきなり「年金カット」を言
い出すのは、いくら何でも乱暴です。
 消費税減税に踏み切って、法人税の累進化を進められないのは
自民党が輸出製造業などから莫大な企業献金をもらっているとい
うこともあるのでしょう。でも、物価高に苦しむ多くの有権者は
消費税減税を望んでいると思います。消費税減税は自民党政権に
とって弱点となっているようです。      ──浦野広明氏
                 https://bit.ly/3NkMYZC
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 減税は絶対にしない──これが岸田内閣のポリシーのようであ
り、だから「財務省寄り」といわれています。岸田首相は、減税
に関してだけは「聞く耳」をまったく持っていないようです。し
かし、この物価高で何もしないで選挙に突入するとは大変な自信
であり、それは驕り以外のなにものではありません。
 直近の毎日新聞と社会調査研究センターの世論調査では、支持
は48%で、5月21日の前回調査(53%)より5ポイント下
落しています。不支持は44%で、前回調査(37%)より、7
ポイント上昇しています。支持が50%を切り、支持と不支持が
「48対44」と4ポイント差に迫っています。
 選挙まで、今日を含めて、まだ9日間あるのです。ひとつでも
失言が出ると、支持と不支持は逆転します。岸田内閣のこの考え
方から推測すると、防衛費を増加させるのは、赤字国債は論外で
必要な歳出を削減するか、増税で賄うしかないという方針でくる
と考えられます。「新しい資本主義」はどこへ行ってしまったの
でしょうか。        ──[新しい資本主義/119]

≪画像および関連情報≫
 ●岸田政権の「新しい資本主義」よりも「新しい経済政策」の
  ほうがよほど重要だ
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   岸田政権の「新しい資本主義」を批判するのは無駄だ。な
  ぜなら、筆者に言わせれば中身がゼロであり、岸田政権自身
  もそれを知っていて、ほかにもっといいキャッチコピーを思
  いつかなかっただけのことではないか。「アベノミクスとは
  ちょっとだけ違うよ」(わずかに左だよ)ということ以上のも
  のはない。
   そもそも、資本主義とは、制度でも体制でもなく、近代に
  生まれた社会の状況を描写したにすぎず、一政府ごときに作
  れるものでも変えられるものでもない。善悪を超えて、歴史
  的事実として、社会的現状として受け入れざるを得ないもの
  だ。一方、経済政策は作ることができる。変えることができ
  る。それこそが政権の役割だ。ただ、残念なことに、どうも
  岸田政権にはいいアイデアが浮かばないようだ。資産所得倍
  増政策は所得倍増計画をモジっただけで、中身は株式投資の
  すすめにすぎず、アベノミクスと同じになってしまった。当
  初の戦略から離脱してしまっている。さらに、現在の物価高
  に対して、財政政策で金をばら撒くという180度逆の政策
  を行っており、経済学どころか、経済の原理原則も、わかっ
  ていないようだ。財政出動すればインフレは加速する。
  インフレを抑えるためには財政を絞り、金利を上げ、景気の
  過熱を抑え、円安を止めるしかない。正反対だ。
                 https://bit.ly/3A7BkOG
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茂木幹事長.jpg
茂木幹事長


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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