2001年07月16日

●マネタリーベースとマネーサプライの違い(EJ第659号)

 現在、日本を襲っている深刻な不況――これを克服するカギを
握るのは日本の中央銀行、日銀であると思います。しかし、われ
われは、あまりにも日銀のことについて知りません。そこでEJ
では、日本の本当の伏魔殿である日銀にメスを入れております。
もう少しお付き合い願います。大事な情報がこのあと出ます。
 「マネタリーベース」と「マネーサプライ」ということばを一
緒に使ってきておりますが、その違いを明らかにしておく必要が
あります。これら2つはかなり紛らわしいことばだからです。
 マネタリーベースとは、何度も述べたように、市場に流通して
いる現金(流通現金)と日銀当座預金の合計をいいます。
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     流通現金+日銀当座預金=マネタリーベース
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 これに対して「マネーサプライ」とは、市中銀行を除く公衆に
よって保有されている現金通貨と預金通貨の合計量のことをいう
のです。金融機関が除かれているのがポイントです。なお、日本
の場合はこれに譲渡性定期預金(CD)を加えるのが慣行となっ
ています。
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    マネーサプライ=現金通貨+預金通貨+CD
    ただし、金融機関をのぞく
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 もう少し覚えておくべきことがあります。というのは、この定
義では「預金通貨」の範囲が明確ではないのです。そこで、次の
次の記号を意味を知っておく必要があります。
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       M1=現金通貨+要求払預金
       M2=M1+定期性預金
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 要求払預金というのは、要求によって支払われる当座預金、普
通預金、通知預金などのことです。経済雑誌などでマネーサプラ
イについて述べるときは「M2+CDによれば・・」というよう
に表現するのはこういう意味があるのです。
 それでは、郵便貯金はどこに属するのでしょうか。
 郵便貯金は、M1同様の高い流動性を持っていますが、M2に
は含められていないのです。それは、郵便貯金までは日銀のコン
トロールが及ばないからです。そこで、別途M3というものを設
けたのです。
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       M3=M2+郵便貯金など
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 しかし、銀行預金から郵便貯金へのシフトが起こると、M2は
減少するのにM3は伸びるという事態が起きるので、金融状態に
対する判断をするさいに混乱が生ずる恐れがあります。
 さて、日銀は現在不況を克服するため現在量的緩和策をとって
います。その目標は当座預金残高5兆円に置いていますが、この
目標はほとんど達成されているはずです。しかし、この12日、
13日に開かれた日銀政策決定会合で決まったことは、日銀のホ
ームページによると次の内容であり、何も変化はないのです。
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 1.日本銀行当座預金残高が5兆円程度となるよう金融市場調
   節を行う。
 2.なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化
   する恐れがある場合は、上記目標にもかかわらず、一層潤
   沢な資金供給を行う。
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 しかも、日銀は量的緩和をやる前には、ゼロ金利政策もとって
おり、日銀としては前例がないほど超金利緩和政策を続けてきて
いるのです。そのため資金はもうジャブジャブに市場に溢れてい
るはずなのです。しかし、お金が余っているのは短期金融市場の
中だけであり、資産市場にはお金は回っていないのです。
 マネタリーベースで見ると、1990年代半ば以降増加ペース
が高まっています。今年の5月時点の平均残高は約67兆円です
が、この数字はバブルの最盛期に比べて1.7倍も増加している
のです。マネタリーベースは増えていることは確かです。
 しかし、マネーサプライはどうかというと、前年比2〜3%程
度で推移しており、あまり伸びていないといえます。そうすると
コール市場ではお金が余っているけれども、それが貸し出しなど
で資産市場に出回っていないということになります。
 しかし、金融機関としては、日銀当座預金に置いていても利子
はつかないので、何かに投資しているはずです。実はその資金は
国債市場に向けられているのです。銀行をはじめとする金融機関
は潤沢な資金を企業や個人への貸し出しに使わず、ひたすら国債
を購入しているのです。
 1997年末から2000年末にかけて預金取扱機関が保有す
る国債残高は36%増えており、保険・年金基金については49
%も増えているのです。財政赤字が深刻にもかかわらず、この債
券市場への資金流入が長期金利を歴史的低水準にとどめていると
いうわけです。
 このことから分かるように、資金が不足しているのではなくて
資金が循環していないことが問題なのです。ですから、日銀にい
くら一段の金融緩和を望んでも滞留する資金が増えるだけのこと
であり、問題の解決にはならないのです。
 それでは、どのようにしたら資金は循環するのでしょうか。
 資金を投資機会に結び付ける手段としての施策がいま求められ
ているのです。その前提となるのが構造改革です。
 経済アナリストの木村剛氏は、日本経済を水道管に例えて、不
純物で水道管が詰まっているときには蛇口をいくらいっぱい開い
ても効果が乏しいといっています。まずは水道管(=日本経済)
から、不純物(=不良債権)を取り除くことが肝要であるという
わけです。          −−[円の支配者日銀/15]
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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