響を受けて、ガソリンはさらに170円/Lを超えて、高騰する
ものと考えられます。政府は、これに対応するための激変緩和措
置として、石油元売り会社へ5円の補助金を支給してきましたが
ガソリンの高騰が収まらないので、3月から、補助金を5円から
25円に引き上げて高騰を抑えようとしています。
この政府の措置は非常に姑息なやり方です。「トリガー条項」
を何とか実施したくない政府の意思のあらわれでもあります。な
ぜか。減税は「絶対にやりたくない」からであり、財務省が猛烈
に反対しているからです。これを見ても財務省こそ日本のデフレ
を加速させている張本人であることがわかります。
トリガー条項を巡っては、政府、自民党、公明党、国民民主党
の間で、ドタバタが続いています。ほとんどの人は、何をやって
いるのか、複雑でわからないと思われるので、簡単に説明するこ
とにします。
ガソリンは、次のように、ガソリン税と石油税の2つに消費税
が課せられています。完全な二重課税です。税としてきわめて好
ましくないことを平然とやっています。
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ガソリン税 ・・・ 53・8円×消費税10%
石油税 ・・・ 28円×消費税10%
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この「53・8円」のなかには、「25・1円」の上乗せ分が
含まれています。トリガー条項というのは、ガソリンの平均小売
価格が1リットル当たり160円を3カ月連続で超えた場合、ト
リガーを弾くように25・1円を減税する措置のことです。旧民
主党政権時代の2010年度税制改正で導入されています。しか
し、東日本大震災が発生した2011年に、旧民主党政権が被災
地の復興財源を確保するため凍結を決め、現在も凍結されたまま
なのです。
今こそこの凍結を解くべきだと国民民主党、公明党が岸田政権
に求めているのです。ところが、岸田首相周辺の財務省出身の取
り巻きスタッフや、財務省が猛烈に反対し、元売りへの補助金を
5円から25円に引き上げて、トリガー条項の凍結解除をやらな
いようにしようとしています。したがって、元売り25円引き下
げは、明らかにこの上乗せ分「25・1円」を意識しています。
「25円下げるからいいじゃないか」ということのようですが
この上乗せ分25円には消費税10%がかかっており、トリガー
条項凍結解除で25円を減税すると、その消費税部分まで取れな
くなってしまうからです。この対応を見ても、財務省はただのケ
チで、まるで経済というものを理解していません。
テーマに戻ります。安倍政権のアベノミクスという名のリフレ
政策は、なぜ中途半端に終わったのでしょうか。リフレ政策とい
うのは、デフレ状態を脱却し、インフレにならない程度の水準ま
で物価を引き上げるために、金融政策や財政政策を実施すること
をいいます。世の中に出回るお金の量を増やすなどの方法によっ
て、人々が予想する将来の物価水準を示す期待インフレ率を押し
上げ、デフレから脱却しようとする考え方です。
リフレとは「リフレーション」のことであり、デフレからは何
とか脱却したが、本格的なインフレには達していない状態のこと
をいうのです。そのための「異次元の量的緩和」です。
量的緩和とは、金融機関が日銀に対して設けている日銀当座預
金に国債などを買い入れて、資金を供給し、市中のお金の量を増
加させようとする日銀の政策です。
しかし、日銀が金融機関の日銀当座預金にいくら資金を積み上
げても、銀行がそれを引き出して、企業や個人に融資しないと、
市中に流通するお金の量は増えないのです。ところがデフレでは
資金需要が低いので、銀行から融資を受ける人は少ないので、資
金が日銀当座預金にブタ積みされるだけになっています。
これについては、添付ファイルをご覧ください。上下2つのグ
ラフがあります。GDP、財政支出、マネタリーベース(日銀当
座預金)の関係を示しています。
一目見てわかるように、マネタリーベースは、1993年頃よ
り、どんどん増えていますが、GDPは伸び悩んでいます。これ
をみれば、誰だって、マネタリーベースとGDPの伸びとは無関
係であることがわかります。
しかし、財政支出とGDPは、ぴったりくっついています。こ
のグラフを見れば、財政支出を増やせば、GDPは伸びるのでは
ないかと誰でも思います。したがって、2013年にアベノミク
をはじめるとき、もっと積極的に財政支出を伸ばすという発想が
なぜ出てこないか不思議です。確かに3本の矢のうち第2の矢で
ある「機動的財政出動」があり、財政出動しているのですが、安
倍政権は、5%だった消費税の税率を2回に分けて、10%に倍
増するという愚かなことをしているのです。増税は、いうまでも
なく、金融引き締め政策です。これは、アクセルとブレーキを一
緒に踏むようなものです。
添付ファイルの下のグラフは、OACD33か国の、1997
年から2015年の財政支出の伸び率にGDPの成長率をプロッ
トしたものです。明らかに財政支出とGDPの成長率には強い相
関があることは明らかです。
これを見ると、成長率のトップは中国で、日本の成長率は最下
位です。天と地の差です。負けている理由は「財政支出が少なす
ぎる」ということです。こんなことは学者でなくても素人でもわ
かります。縛っている理由は、対GDP比256%の政府の借金
でしょうか。日本では、おそるおそる財政出動しているように感
じます。「そんなものは関係がない」とMMTは主張しているの
です。びっくりするような財政出動をしても、日本はデフレです
から、絶対インフレにはならないのです。財務省と日本の主流派
経済学者は理屈をこねずに反省してほしいものです。
──[新しい資本主義/第048]
≪画像および関連情報≫
●世界が前代未聞の債務の波に襲われても破綻しない理由
アレックス・ハドソン氏
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<世界全体の債務残高は277兆ドルに達し返せる当てもな
いが、それでも政府は必要な支出を惜しんではいけない>
いかに私たちが健忘症でも、まだ忘れてはいないだろう。
わずか10年前までは(少なくともヨーロッパでは)緊縮と
禁欲、そして徹底した歳出の削減だけが生きる道だったこと
を。「天気のいいうちに屋根の穴を塞ぎ」、借金を減らして
経済成長を促せ。それが必須で、借金のし過ぎは取り返しが
つかないことになる。それこそが常識だった。
「最新の研究によれば、債務残高がGDPの90%を超え
ると長期の成長にネガティブな影響を及ぼすリスクが高まる
そうだ」。10年前に、英財務相となる直前のジョージ・オ
ズボーンはそう言い、こう付け加えていた。英国の債務残高
は「2年以内にGDPの90%を超える見込み」だと。
https://bit.ly/3J9CTO1
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GDPと財政支出の関係