2022年03月15日

●「MMTは真にブードゥ−経済学か」(第5690号)

 ロシアは、米国の支援を受けてウクライナが生物兵器の研究を
していたと、とんでもないことをいいはじめています。ロシアが
生物兵器を使うための「偽旗作戦」だといわれています。偽旗作
戦とは、攻撃手を偽る軍事作戦の一種で、海賊が「降伏」の旗を
掲げて敵敵を油断させて、逆に相手の船を乗っ取るという行為に
由来します。旧ソ連のお家芸の一つです。
 現在EJで展開しているMMT(現代貨幣理論)も、主流派経
済学者から「トンデモ理論」といわれており、まったく相手にし
ない経済学者もたくさんいます。
 EJでは、MMTを過去にも取り上げており、関連書籍をほと
んど読んでみましたが、実際に行われている経済政策に照らして
みると、MMTの方が納得できる点が多いことは事実です。もち
ろん、MMTのすべてが正しいというつもりはありませんが、ア
タマから反対せず、素直に主張を聞く価値はあると考えます。
 岩村充早稲田大学名誉教授は、もちろんMMTには反対の立場
の主流派経済学者ですが、MMTの主唱者の一人であるステファ
ニー・ケルトン教授について次のようにコメントしています。
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 MMTに反発する学界主流派の中には、日本でも有名なポール
・クルーグマンやケネス・ロゴフあるいはロバート・シラーなど
超大物が顔をそろえていますし、実務エコノミストからもサマー
ズ元財務長官とか、ジェローム・パウエル現FRB議長なども攻
撃側に立つという具合です。
 一方で、MMTの主唱者ステファニー・ケルトンは、それまで
ほぼ無名だった1969年生まれの大学教授です。普通なら臆し
そうなものなのですが、私が彼女をすごいなと思うのは、そうし
た権威筋や実権派の面々にひるまず反論するところです。このあ
たりの風景は、はたで見ている分には、彼女があのジャンヌ・ダ
ルクのように映るところもあって、やや不謹慎ながら「よっ、ケ
ルトン!」とでもお声かけしたくなるところもあるのですが、そ
れはやめておきましょう。彼女の主張は、いくら何でも難点が多
すぎるからです。       ──岩村充早稲田大学名誉教授
                  https://bit.ly/3tQCCZF
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 著名な経済学者が反対したからといって、その理論が間違って
いることにはならないと思います。もともとMMTを持ち出した
のは、アレクサンドリア・オカシオ・コルテスという米国の若い
下院議員です。彼女は、再生可能エネルギーを100%にするた
めの政策「グリーン・ニューディール」の財源として、MMTに
基づいて、赤字国債の発行を主張しているのです。
 これにノーベル賞受賞経済学者であるクルーグマンは、MMT
を「経済モデルなんてものじゃない」とバカにしたように吐き捨
て、ハーバード大学教授のケネス・ロゴフ氏は「ナンセンス」と
切り捨て、米国の経済学者で元財務長官のローレンス・サマーズ
氏は「MMTはいかがわしいブードゥ−経済学」と揶揄していま
す。はじめからバカにしているし、きわめて感情的な反対のよう
に感じます。ていねいにMMTについて検討して出した言葉とは
とうてい思われないものです。
 安倍政権のアベノミクスでは、日銀は、2013年6月から、
インフレ率を2%に設定し、その目標を達成するべく、大規模な
量的緩和政策を実施しています。
 量的緩和政策というのは、中央銀行の行う金融緩和政策のひと
つであり、その目的は、モノが売れず景気が悪いときに金利を下
げることです。反対に景気が過熱したときに金利を上げることを
金融引き締めといいます。金融緩和には次の2つがあります。
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           @質的金融緩和
           A量的金融緩和
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 @の「質的金融緩和」とは何でしょうか。
 質的金融緩和とは、日銀が保有する国債の保有期間を延ばした
り、国債以外にも買い入れたりする、いわゆる「質的」な手段に
よって、市中に出回るお金を増やすことです。日銀が保有する国
債を長く保有すること、そして国債以外に証券取引所に上場され
ている投資信託など多様な金融資産を買い入れることがここでい
う質的金融緩和です。
 Aの「量的金融緩和」とは何でしょうか
 金利を下げるといっても、金利がゼロになると、それ以上下げ
られないことになります。そこで、日銀は、金融機関が政府から
買った国債を買い取って、金融機関の持つ「日銀当座預金」残高
を増やします。金利はゼロになると、それ以上下げられませんが
日銀当座預金の量ならいくらでも増やせるわけです。そういうわ
けで、日銀の黒田総裁は「かつてない異次元のレベル」と銘打つ
「超金融緩和」を実施したのです。
 結局、日銀は、この量的緩和によって400兆円くらい日銀当
座預金を増やしたはずですが、現在にいたってもインフレ率2%
は達成されていないのです。これは、どのように考えても、政策
の失敗というしかないわけです。しかし、日銀は現在でもこの政
策を続けています。これについて、中野剛志氏は、次のように述
べています。
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 中央銀行は、インフレ対策は得意ですが、デフレ対策は苦手な
のです。ところが、主流派の経済学の教科書には、中央銀行がマ
ネタリー・ベース(日銀当座預金)を操作することで、貨幣供給
量を増やしたり減らしたりしていると書いてあります。恐ろしい
ことに、経済学の教科書は、事実と異なることを教えているので
す。これは、現代の天文学の教科書が天動説を教えているような
ものでしょう。           https://bit.ly/3CBPqav
─────────────────────────────
             ──[新しい資本主義/第047]

≪画像および関連情報≫
 ●日銀の量的緩和がもたらす致命的な3つの害悪
  小幡績慶応義塾大学大学院准教授
  ───────────────────────────
   まず、日銀が当たり前のようにやっている長期国債の買い
  入れから見ていこう。これも本来は不要である。
   国債買い入れの目的は、金利を低下させることである。だ
  が、本来であれば、これは短期金利のコントロールのための
  手段である。だから、伝統的には世界中の中央銀行が長期国
  債を買い入れることはせず、超短期のコール市場の金利のコ
  ントロールの補助として、短期国債を買い入れてきたのであ
  る。むしろ本来の呼び方である「オペ」(オペレーション)
  という言葉がふさわしい。
   しかし、リーマンショック以降、世界では量的緩和が長期
  国債の買い入れを意味するものとして定着してしまった(も
  ともと「量」とは民間銀行の日銀への当座預金の量であり、
  長期国債の買い入れとは無関係である)。
   ただ、現実的な効果としては強力で、民間における投資活
  動への直接的な金利の影響は、長期金利によるものであるか
  ら、短期金利をコントロールして長期金利に間接的に影響を
  与えるという伝統的な金融政策を超える絶大な力を持った。
  再び、しかし、日銀は、この強力な手段も使い果たしてしま
  い、長期金利を直接目標にしてコントロールを図る、イール
  ドカーブコントロールに移行した。目標を「10年物の金利
  をゼロとする」と宣言してしまっているから、長期金利低下
  効果(上昇させる場合も今後ありうるから正確な用語として
  はターゲット効果)はさらにより直接的である。
                 https://bit.ly/3MEYNe9
  ───────────────────────────
岩村充早稲田大学名誉教授.jpg
岩村充早稲田大学名誉教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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