外相の発言です。3月10日、ウクライナ危機がはじまってから
はじめて行われたウクライナのクレバ外相とロシア外相の会談の
後の発言です。平然とウソをついています。
外交官が公開の席でこんなウソをついて大丈夫なのかなと普通
の人は思いますが、実はぜんぜん平気なのです。なぜなら、ロシ
アの外交官というのは、自分が明らかにウソだと分かっていても
それを堂々と語る話術があり、それと同時に、周りのみんなもウ
ソだと分かっていることを本人も分かりながら、それでも堂々と
語る技術を徹底的に訓練されているからです。
彼らのロジックはこうです。「ウクライナのゼレンスキー政権
は過激派のネオナチ政権で、ウクライナ特定地域在住のロシア人
に対して、ジェノサイド(民族大量虐殺)的攻撃を加えているの
で、我々は彼らを解放するために行動しているだけである」。こ
れもほとんどウソですが、ロシアのプーチン政権がウクライナを
攻撃するための大義名分になっています。
ロシアのウソは論外ですが、日本の経済においてもこういうウ
ソが平然とつかれています。それは財務省のいう次のメッセージ
です。それは、数字としては事実であり、一見ウソには思えない
し、日本の主流派経済学者はこれと同じ意見です。
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日本政府の財政赤字(一般政府債務残高/GDP)は256%
であり、他の先進国よりも劣悪な状態にある。このままでは、財
政が破綻する。 ──矢野康治財務省事務次官
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しかし、この矢野財務次官の主張は間違っています。彼が自分
の主張が間違いであることを知っていて、あえてそういうウソを
ついているのか、本当にそう思っているかはわかりませんが、現
職の財務次官が一般誌にその主張を公開している以上、正しいと
信じていると思います。
主張が間違いであるというのは、次のような論理展開です。
国債は政府の借金である。その多くは日本の民間金融機関が引
き受けている。それらの金融機関が「国債は多く発行され過ぎて
いる」と判断したら、当然国債は買われなくなる。そうすれば国
債の金利が上がる。この状態が続くと、需要と供給の関係で、買
う人が少なくなり、さらに金利が上昇する。
しかし、現在でも国債の金利は低いまま、正常に取引されてい
る。民間金融機関は国債を求めている。ということは、国債は発
行され過ぎていないということになる。
どうでしょうか。国債は正常に取引されており、財政破綻など
あり得ないことです。
財政法第4条に次の一文があります。
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財政法第4条:国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、
その財源としなければならない。
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これは、「借金をしないで、歳入(国の収入)だけで、予算を
まかないなさい」といっているのです。こういう国の考え方自体
が、国の財政を家計と同一視していることになります。
もちろん、そんなことで、国家の財政を運営できるわけがなく
借り入れについては「建設国債」の発行が認められています。つ
まり、インフラ整備や建築などの予算に関しては「建築国債」、
財政運営資金が不足するときは、例外的に「特例公債」の発行も
認められています。ここでいう「特例公債」がいわゆる「赤字国
債」といわれるものです。
しかし、建設国債も赤字国債も同じ国債です。お金に色はつい
ていないのです。要するに、建設国債も赤字国債も、その年の予
算のうち、税収でまかないきれないものを補うために発行される
のです。そこには、「なるべく借金をさせないようにする」とい
う家計的配慮があります。ここから税収を増やすために、「赤字
国債ではなく増税」という発想が生まれてくるのです。
これに関して、財務官僚出身の高橋洋一氏は、次のように述べ
ています。
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国債を発行して得た資金は必要な用途に割かれるだけである。
だから、もちろん、金融市場の現場では、建設国債と赤字国債は
同じ国債として扱われており、区別されていない。その証拠に、
もし金融機関で国債を買ったら、自分が買った国債は建設国債な
のか、赤字国債なのか聞いてみたらいい。どっちであるとは答え
られないはずだ。
建設国債と赤字国債を区分しているのは、政府の予算の中だけ
である。それも、先進国で予算において国債を建設国債と赤字国
債とに区別しているのは、基本的には日本だけだ。
──高橋洋一著/あさ出版
『新・国債の真実/99%の日本人がわかっていない』
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「建設国債は可」という考え方のバックには「モノが残る借金
はよい」という考え方があります。この考え方はおかしいです。
「投資のための借金は可」とすべきです。モノにこだわるから人
に投資するという発想がなく、日本は、世界に比して、教育投資
が大きく遅れています。「赤字国債を発行してまでやることでは
ない」と考えてしまうからです。「建設国債」を作るなら「教育
国債」を作るべきであります。
日本経済が成長しない原因はデフレですが、そのデフレから日
本が30年も抜け出せない原因は「赤字国債」を忌避する国家の
姿勢にあります。何をいいたいのかというと、赤字国債をなるべ
く発行したくないという考え方があるため、財政の出動を極端な
ほどに抑制しているからです。このことについて、中野剛志氏の
考え方などを参考にして検討していくことにします。
──[新しい資本主義/第046]
≪画像および関連情報≫
●「赤字国債など総動員」ってまずくない?
岸田首相発言に違和感
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「赤字国債をはじめ、あらゆるものを動員する」。就任後
間もない昨年11月の岸田文雄首相の発言が、気になってい
た。巨額の経済対策の財源に赤字国債を充てると勇ましく宣
言しているが、赤字国債は本来なら財源不足を補うため仕方
なく発行するはずのものである。「動員」してしまうのはマ
ズいのではないか。官僚や専門家に悪影響がないか聞いてみ
た。【大久保渉/デジタル報道センター】
まずは発言を思い出したい。岸田首相は2021年11月
19日、内閣記者会のインタビューのなかで、経済対策の財
源に関する質問にこう答えていた。
「今は緊急時で国民の命や暮らしを守るために必要なもの
をしっかりと用意しなければいけない。財源については赤字
国債をはじめ、あらゆるものを動員する」
インタビューの後半では、別の記者からの財政規律に関す
る質問に「今は緊急事態」と改めて経済対策の必要性を強調
し、「財源は赤字国債も含め、あらゆる手段(政府の判断で
自由に使える)予備費等を総動員して考えていかなければい
けない」と繰り返した。「あらゆるものを動員」「総動員」
と威勢はいいが、結局は赤字国債、すなわち借金である。発
言は、海外メディアのロイターやブルームバーグが当日の電
子版で「経済対策の財源、赤字国債はじめあらゆる手段を総
動員」などと報じた。翌日の朝刊では、日経新聞が1面で報
じ、毎日新聞は5面の一問一答記事の中に盛り込んだ。
https://bit.ly/3MVGsd1
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ロシア/ラブロフ外相「我々は攻撃していない」