2022年03月10日

●「あちらの赤字はこちらの黒字なり」(第5687号)

 「あちらの赤字はこちらの黒字」──これは、ステファニー・
ケルトン/ニューヨーク州立大学教授の本の第4章のタイトルの
名称です。これと同趣旨のことを高橋洋一嘉悦大学教授は次のよ
うにいっています。
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 借金というのは、必ず誰かの資産になる。国債は政府の借金だ
が、貸している民間金融機関にとっては「資産」である。民間金
融機関は、国債という資産を買って、利子収入を得ているのであ
る。今ほど低金利では、「利ざやで儲ける」というほど大きな額
にはならない。しかし、わずかでも利子収入を生む「資産」であ
ることには違いない。
 しかも、国債は金融市場の「コメ」だ。だから金融機関は、金
利が低くても国債を買い続ける。借金とは、どこまでいっても、
「借りる側」と「貸す側」の二者関係の話だ。貸し手が喜んで貸
している間は、金利は低いままだが、「なんだか危ないから、も
う貸したくない」という貸し手が増えれば金利は上がる。国債は
金利が低いまま取引されているから、「発行されすぎ」というロ
ジックは成り立たない。やはり単純な話なのである。
                 ──高橋洋一著/あさ出版
    『新・国債の真実/99%の日本人がわかっていない』
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 一方に借り手がいれば、必ず他方に貸し手がいます。当然のこ
とです。民間部門の中でも誰かの「債務」は誰かの「債権」を意
味しています。「債務」というのは金品を支払う義務ということ
であり、「債権」というのは金品を要求する権利のことです。
 AがBにお金を貸せば、Aは債権者であり、Bは債務者になり
ます。政府が国債を発行して銀行がそれを引き受ければ、銀行が
債権を持ち、政府は債務を負います。債権というのは、土地やお
金などとともに資産に含まれます。したがって、政府が借金をす
ればするほど、民間部門の金融資産は増加するのです。
 ところで、国債の売買はどのようにして、行われるのでしょう
か。政府は予算を立てますが、そのうち税収でまかなえない部分
は、国債を発行してまかなうことになります。その概要について
知っておく必要があります。
 政府の発行した国債は、基本的には銀行や信用金庫、証券会社
など、民間の金融機関が引き受けることになります。政府は国債
をこれらの民間金融機関に売り、その代金が予算に使われます。
以下、整理します。
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      @売買者 ・・・・・    財務省
      A購入者 ・・・・・ 民間金融機関
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 国債は、どのようにして売買されるのでしょうか。国債は、つ
ねに「入札」によって売買されます。これについて、高橋洋一氏
は次のように解説しています。ちなみに、高橋洋一氏は、かつて
大蔵省(現財務省)時代に、国債の売買を担当してきたことがあ
るそうです。
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 国債の入札は多数の金融機関によって行われるが、入札は一度
きりで、その入札額によって買えるかどうかが決定する。国債の
基本単位は「100円」だから、「100円1銭」や「100円
5銭」といった非常に小幅な入札額の競争だ。ちなみに、金融機
関同士では、どこがいくらで入札したかはわからない。入札が出
揃ったら、財務省の担当者は、入札額が高い順に売り先を決めて
いき、発行額に足りたところで切る。それ以下の入札額を出した
ところは、国債を買えない、ということだ。
           ──高橋洋一著/あさ出版の前掲書より
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 国債を発行するとき、財務省は、民間金融機関に対して次のよ
うに通達します。「利率1%の10年債を額面1000億円発行
します」。伝えるのは次の3つです。
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    @   利率は何%か ・・・     1%
    Aいくら発行するのか ・・・ 1000億円
    Bいつ償還されるのか ・・・   10年債
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 国債が買えるかどうかは、民間金融機関の国債担当者の腕の見
せどころになります。基本単位は「100円」であり、もし、基
本単位の100円で額面100億円買うと入札すると、100億
円支払うことになります。実際の入札額は「1銭刻み」になるの
で、入札額は「100円1銭」とか「100円2餞」というよう
になります。財務省の担当者は、入札された額を検討し、財務省
として最もトクなところを選ぶことになります。
 入札の判断を決めるのは「利子」です。このケースでは、金利
は1%で額面に対してかかるので、利回りを考慮して額面を決め
ることになります。金利が1%で100億円買うのであれば、毎
年1億円の利子収入ということになります。100億円買う場合
年1億円の利子収入は変わらないのです。
 銀行の国債担当者が入札額を決める場合、今後金利が下がると
考える場合、入札額を少し高くします。金利が高いうちに確実に
国債を買っておくという判断です。逆に金利が上がると考える場
合は、入札額を少し低くします。このあたりのさじ加減がなかな
か難しいのです。なぜなら、100円で100億円入札する場合
と、90円で100億円入札する場合では、利回りに差が出てく
るからです。添付ファイルの図をご覧ください。
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 100億円で1億円の利子収入の利回り ・・・   1%
  90億円で1億円の利子収入の利回り ・・・  1.1%
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             ──[新しい資本主義/第044]

≪画像および関連情報≫
 ●【初心者対象】国債って何?/仕組みや利回りを
  分かりやすく解説
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   国債とは、簡単にいうと国が発行する債券のこと。日本国
  が発行する債券は「日本国債」と呼ばれます。債券とは資金
  を借り入れする際に発行される有価証券で、借用証書でもあ
  ります。債券は発行される団体によって呼称が異なります。
   @地方公共団体が発行する債券・・・地方債
   A企業が発行する債券・・・・・・・ 社債
  国家として、社会保障の整備や各種インフラ整備などには税
  金を充てるのが一般的です。しかし、それらの財政支出が税
  収入で賄えなくなると、国は国債を発行して投資家からお金
  を募ります。国の借金の申し出に賛同した投資家が国債を購
  入することで、国にお金が入る仕組みになっています。「国
  債=国の借金」という捉え方が一般的なのは、国家と投資家
  の間にこのやり取りがあるからです。
                  https://bit.ly/3ISTFkm
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 ●図の出典/──高橋洋一著/あさ出版の前掲書より
国債の利回り.jpg
国債の利回り
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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