2022年02月18日

●「国債発行で民間の金融資産増える」(第5674号)

 前回、質問者は、「いまの日本の一般歳出のうち、税収等で賄
えているのは約3分の2。残り3分の1は新規国債で賄っている
状態」といっていますが、2021年度予算で、事実を数字で確
認してみます。
 2021年度予算の一般会計歳出総額は、106・6兆円です
が、その内訳は次のようになっています。
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 社会保障      ・・・ 33・6%(35・8兆円)
 国債費       ・・・ 22・3%(23・8兆円)
 地方交付税交付金等 ・・・ 15・0%(15・9兆円)
 公共事業      ・・・  5・7% (6・1兆円)
 文教科学振興    ・・・  5・1% (5・4兆円)
 防衛        ・・・  5・0% (5・3兆円)
 その他       ・・・ 13・4%(14・3兆円)
─────────────────────────────
 要するに、2021年度においては、これだけのお金が必要に
なるということですが、これに対する歳入の内訳は、次のように
なっています。
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 所得税       ・・・ 17・5%(18・7兆円)
 法人税       ・・・  8・4% (8・4兆円)
 消費税       ・・・ 19・0%(20・3兆円)
 その他税収     ・・・  8・9% (9・5兆円)
 その他収入     ・・・  5・2% (5・6兆円)
 公債金       ・・・ 40・9%(43・6兆円)
─────────────────────────────
 2021年度予算の国の一般会計歳入106・6兆円は、税収
等と公債金(借金)で構成されますが、税収等では歳出全体の約
3分の2しか賄えておらず、そこりの3分の1は公債金(借金)
に依存しています。質問者の指摘の通りです。
 これでみると、消費税の税収は、所得税・法人税よりもダント
ツに大きく、歳入全体の19%を占めています。財務省が消費税
率の引き上げにやっきになる気持ちはわかります。
 日本経済はバブル崩壊後の1990年度を境に低迷し、税収は
減少傾向にあります。つまり、出て行くお金が大きく、入ってく
るお金が少ないのですから、歳出と税収の差は開くばかりです。
これを「ワニの口」のように開くばかりと例えるのです。
 以上のことを前提として、議論は今日から核心に入ります。中
野剛志氏によると、主流派経済学者は重要な事実誤認をしている
といっています。
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中野:実はなぜこんなことになるのか、「国債金利が高騰する」
 「財政破綻する」と言い続けてきた経済学者もまともに説明で
 きていません。いや、説明できるはずがないんです。というの
 は、彼らが根本的な「事実誤認」をしているからです。
――事実誤認ですか?
中野:ええ。あなたは先ほど「民間の金融資産(預金)が豊富に
 あるから、銀行は国債を引き受けることができる」とおっしゃ
 いましたね?つまり、銀行が国債を買う原資は民間が銀行に預
 けている金融資産だというわけです。そして、政府は、国債を
 発行することで民間の金融資産を吸い上げて、それを元手に財
 政支出を行っているのだから、国債を発行すればするほど民間
 の金融資産は減ると考えているわけですよね?
――そうですね。
中野:しかし、そこが、決定的な間違いなんです。事実は逆で、
 「国債を発行して、財政支出を拡大すると、民間金融資産(預
 金)が増える」んです。
――ちょっと理解できません・・・。「国債を発行して、財政支
 出を拡大すると、民間金融資産(預金)が増える」なんてこと
 があるわけないじゃないですか?
中野:しかし、それが事実です。理解できないのは、あなたが、
 「貨幣とは何か?」を正しく理解していないからです。もっと
 も、主流派経済学も貨幣について正しく理解していません。さ
 きほど、「世界中の経済学者や政策担当者が受け入れている主
 流派経済学が大きな間違いを犯していることを、MMTが暴い
 てしまった」と言いましたが、このポイントがまさにそれなん
 です。              https://bit.ly/34E0K9C
─────────────────────────────
 毎年毎年長期にわたって、国債の残高が積み上がっていること
は動かすことのできない事実です。「借金が積み上がっている」
わけです。質問者は、このような状態でも国債が発行できている
のは、民間の金融資産(預金など)が豊富であるから、銀行など
の金融機関が国債を引き受けてくれているというのです。
 しかし、毎年のことですから、そのようにして政府が民間の金
融資産を吸い上げていくと、金融資産は減少し、やがて国債を引
き受けられなくなる──国債を発行すればするほど、民間の金融
資産は減ると考えているわけです。
 これに対して、中野剛志氏は、そこが決定的な間違いであると
指摘し、次のようにいっているのです。
─────────────────────────────
 国債を発行して、財政支出を拡大すると民間金融資産(預金)
が増える。それが理解できないのは、「貨幣とは何か?」という
ことを正しく理解していないからである。   ──中野剛志氏
─────────────────────────────
 国が借金をしているといっても、国が返す円というお金自体を
発行しているのですから、国がお金を返せなくなるという事態は
発生しえないわけです。
 この中野氏のMMTロジックについては、来週のEJで掘り下
げることにしたいと考えています。
             ──[新しい資本主義/第031]

≪画像および関連情報≫
 ●財務次官のバラマキ政策批判が話題、国の借金「ワニの口」
  はなぜ開き続けるのか
  ───────────────────────────
   ワニの口とは、一般会計の歳出と税収の推移を示す折れ線
  グラフが「ワニの口」のようにどんどん開いていく状態をた
  とえた表現です。矢野次官が平成10年頃に命名したもので
  す。なぜ、歳出と税収で乖離が生まれてきたのかと言えば、
  歳出を増加せざるを得ない事情がその都度生じてきたからで
  す。ワニの口が開き始めたのは、1990年ですが、この時
  はバブルが崩壊して株価や不動産価格が暴落しました。政府
  は、その後、経済対策として公共投資、減税、地域振興券の
  配布、規制緩和などを行いました。その結果、歳出は増え、
  税収が減ったので、ワニの口が開きました。1999年にな
  ると、ITバブルにより株価が上昇し、税収が増え、歳出も
  減少に転じました。2001年から小泉政権となり、道路公
  団民営化や郵政民営化など行政改革に取り組み、歳出削減も
  なされたため、ワニの口は閉じかけました。
   ところが、2008年にリーマンショックが起こり、政府
  は2009年4月、「経済危機対策」を発表し、国民1人に
  つき、1万2000円(18歳以下と65歳以上は2万円)
  の「定額給付金」が支給されました。そのためワニの口は再
  び広がりました。2014年になると、アベノミクスによる
  る効果と、消費税を8%に引上げたことによる税収の増加に
  よって、ワニの口は閉じてきました。さらに、2019年に
  消費税を10%に引上げ、さらに税収を増やそうとしました
  が、新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年、
  大幅に歳出の増加をせざるを得ない状況となりました。この
  ように、ワニの口が広がったのには理由があるわけです。
                  https://bit.ly/3oTpeT9
  ───────────────────────────
「貨幣が理解できていない」/中野剛志氏.jpg
「貨幣が理解できていない」/中野剛志氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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