2022年02月16日

●「自国通貨建国債発行国の破綻なし」(第5672号)

 新しい資本主義を考えるとき、日本経済成長の政策を考えると
き、MMT(現代貨幣理論)の理解は欠かせないと思います。M
MTはEJで一度取り上げていますが、消化不良で終わった感が
あります。そこで、このテーマで、もう一度チャレンジしてみる
ことにします。
 日本のMMTの主唱者の一人、中野剛志氏について、日本の経
済学者で、日本銀行副総裁の若田部昌澄氏と、経済アナリストの
森永卓郎氏は、次のような評価を下しています。
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◎若田部昌澄氏
 中野が経済学を理解した上で、自説に適した理論を的確に選び
「そう言われればそうかな」と思ってしまうような論を展開して
いる。
◎森永卓郎氏
 中野の議論もきちんと経済学に基づいたもので立つ経済学が違
うのだと若田部が指摘していると書評に書いている。「国内市場
の保護のために最も強力な手段は為替である」という点に関して
は、若田部と中野の立場は一緒であり、円高やデフレは基本的に
は貨幣問題で、資金供給量の多寡が為替・物価を決定するという
基本的な経済理論を共有していると述べている。
                    ──ウィキペディア
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 ダイヤモンドオンラインにおいて、素人の記者が、中野剛志氏
に対して、徹底的にMMTについて迫るという興味ある次の企画
が出ています。
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 中野剛志さんに「MMTっておかしくないですか?」と聞い
 てみた。          ──ダイヤモンドオンライン
                 https://bit.ly/33lPZbe
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 しかし、この連載は13回もある長文であり、EJでは重要な
要点を絞って、要約することにします。狙いは、MMTに対する
正しい理解です。
 MMTというのは、ポッと出の新奇な理論という印象がありま
すが、中野剛志氏はそれは間違いであるとしたうえで、MMTは
20世紀初頭のクナップ、ケインズ、シュンペーターらの理論を
原型として、アバ・ラーナー、ハイマン・ミンスキーなどの卓越
した経済学者の業績も取り込んで、1990年代に成立した経済
理論であると説いたうえで、世界中の経済学者や政策担当者が受
け入れている主流派経済学が、大きな間違いを犯していることを
指摘しています。
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──もしも、現実の経済政策に影響を与えている主流派経済学が
 大きな間違いを犯しているとしたら一大事です。しかし、「主
 流派経済学の理論が基盤から崩れ去る」と聞くと、やはり「ま
 さか」という気がします。そこで、改めてMMTについてご説
 明いただけませんか?
中野:MMTを最も手短に説明するとこうなります。日英米のよ
 うに自国通貨を発行できる政府(中央政府+中央銀行)の自国
 通貨建ての国債はデフォルトしないので、変動相場制のもとで
 は政府はいくらでも好きなだけ財政支出をすることができる。
 財源の心配をする必要はない、と。
──「政府はデフォルトしないから、いくらでも好きなだけ財政
 支出できる」と聞くと、やはり抵抗を感じます。政府やマスコ
 ミはずっと「これ以上財政赤字を増やしたら、財政破綻する」
 と言い続けているし、多くの国民もそう思っているはずです。
中野:まぁ、そうですね。それが社会通念でしょう。でも、「日
 本政府はデフォルトしないから、いくらでも財政支出できる」
 というのは、MMTを批判する人々も同意している、あるいは
 同意できる、単なる「事実」を述べているにすぎないんです。
──単なる事実ですって?しかし、「GDPに占める政府債務残
 高」は240%に近づいており、主要先進国と比較しても最悪
 の財政状況です(添付ファイル参照)。これも厳然たる事実で
 すよね?
中野:ああ、これはよく見るグラフですね。たしかに、「GDP
 に占める債務残高」は深刻な財政危機に陥っているギリシャや
 イタリアよりずっと悪くて、日本はダントツの最下位です。
                 https://bit.ly/3HRwrdU
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 確かに、グラフを見ると、日本の債務残高がダントツで高いで
す。これは否定できない事実です。しかし、ダントツ1位の日本
は財政破綻せず、2位のギリシャ、3位のイタリアが財政危機に
陥っているのはなぜでしょうか。
 これは、明確な根拠があります。それはギリシャもイタリアも
ユーロ加盟国であるからです。もともとギリシャは「ドラクマ」
イタリアは「リラ」という自国通貨を持っていたのですが、両国
は、自国通貨を放棄し、ユーロという共通通貨を使っており、そ
のため、自国通貨建ての国債は発行できないのです。
 しかし、ユーロ建ての国債は発行できます。ところがその発行
権を持つのは欧州中央銀行だけであって、ユーロ加盟各国にユー
ロ建て国債を発行する権限はないのです。このことから、自国通
貨建て発行権を持つことがいかに有利か理解できると思います。
 これに対して反論もあります。自国通貨建ての国債を発行でき
る国でも財政が破綻した国があるというのです。アルゼンチンが
そうです。アルゼンチンには「ペソ」という通貨があり、自国通
貨建て国債を発行できるのに、2001年に破綻しています。
 これに対して中野氏は、「アルゼンチンの場合は、外貨建ての
国債がデフォルトしたことによる財政破綻である」と主張してい
ます。外貨建て国債の場合は、その外貨の保有額が足りなければ
デフォルトします。    ──[新しい資本主義/第029]

≪画像および関連情報≫
 ●救世主かトンデモ理論か・・・MMTは世界経済を
  本当に救えるか?
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   「なぜ景気後退局面にもかかわらず、経験則から消費を弱
  らせるとわかっていた消費増税を実施したのか」「なぜ政府
  の財政出動は事業規模で見れば多額だが、実際の真水の部分
  はこんなに渋いのか」という疑問を持っていただければ、こ
  こから先は興味深く読んでいただけるのではないか。
   MMTとは、Modern Monetary Theory の頭文字を取って
  作られた略称である。日本ではMMTは「現代貨幣理論」と
  いう訳で知られている。MMTの特徴については後述すると
  して、まずはMMTが注目を集めた背景を説明したい。景気
  後退の真っただ中で、消費増税をした理由は何か。内閣府の
  『令和元年度年次経済財政報告』では今回の消費増税を「財
  政健全化のみならず社会保障の充実・安定化、教育無償化を
  はじめとする『人づくり革命』の実現に不可欠なもの」と説
  明している。財政健全化が消費増税の理由の1つだ。
   また、新型コロナウイルス禍のいま、実態としては他国に
  見劣りする財政出動しかしないのも財政健全化を優先したい
  からだろう。要は財政健全化のために現在ある財政赤字を減
  らして、黒字に持っていきたい。そうしないと国家が破綻す
  るという考え方だが、MMTは「財政黒字こそ、経済にブレ
  ーキをかける元凶だ」と考える。そもそも、EU加盟国とは
  違って、日本は日銀が自国通貨の「円」をお札として刷るこ
  とができる。これを「自国通貨発行権がある」という。
                 https://bit.ly/3rMG0oJ
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債務残高国際比較(対GDP比).jpg
債務残高国際比較(対GDP比)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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