り上げられたことがあります。なぜ、1億総活躍かというと、そ
のときの目標が、老若男女の誰もが頑張って、GDP600兆円
の達成を成し遂げようとしたのです。
アベノミクスのはじめの刺激によって、そのときは、国全体が
活気づくのではないかと期待は多少はあったのですが、現実はそ
んなに甘いものではなかったのです。現在はっきりしていること
は、600兆円への道のりは遠く、世界に占める日本のGDPへ
のシェアは、30年前の18%から現在は6%になっています。
忘れられた30年、30年デフレが深く影を落としています。
そして、豊かさの指標とされる1人当たりGDPにいたっては
世界24位まで後退し、アジアでもシンガポールや香港の後塵を
排しています。今のところ日本は韓国よりも上位にいますが、韓
国の成長率を考えると、このままではいずれ韓国にも抜かれてし
まうことは必至です。日本は何をしているのでしょうか。岸田政
権はそれを達成できる政権なのでしょうか。
30年もデフレが続く国──そんな国は他にあるでしょうか。
ここまでくると、日本の経済戦略は、明らかに間違えていると思
わざるをえません。日本は、何よりも優先して経済を成長させる
必要がありますが、それをやれるのは政権党である自民党であり
自民党に重大な責任があります。
岸田首相は当初所得倍増政策を口にして、すぐ引っ込めていま
すが、その達成はけっして不可能ではありません。それを達成す
るためには、計算上次のことを実現する必要があります。インフ
レ率を4%にして、名目成長率が5%になると、14年間で所得
倍増は実現します。もし、名目成長率が7%になれば、10年で
所得倍増は実現します。これでやっとEUや米国に追いつけるレ
ベルです。ところが日本は、それと真逆のことをしています。他
の国にはできるのに、なぜ、日本ではできないのでしょうか。
複数の要因があると思いますが、日本が経済成長できないこと
に責任があるのは、財務省とその考え方です。簡単にまとめて書
くと、次のようになります。
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日本の財政は健全ではない。したがって、何よりも優先して
財政再建を急ぐべきである。 ──財務省の考え方
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安倍元政権は、経済の面ではよく頑張ったと方だと思います。
アベノミクスの方向は間違っていなかったのですが、その前政権
(民主党政権)と自民党が結託し、法律化されていた消費税の増
税計画を変更せず、無謀にも、2回にわたり、消費税の税率を5
〜10%に倍増させた責任があります。これによって、アベノミ
クスによるデフレ脱却はできないで終わっています。
岸田現政権は、財務省の包囲網に囲まれています。岸田首相の
派閥である宏池会が財務省と深い関係があるからですが、岸田首
相を支える大臣や補佐官などに財務省出身者がズラリです。添付
ファイルに写真を付けておきます。
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寺田 稔内閣総理大臣補佐官
村井英樹内閣総理大臣補佐官
木原誠二内閣官房副長官
後藤茂之厚生労働大臣
小林鷹之経済安全保障大臣
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高橋洋一氏の著書に面白い話が出ています。財務省の力の源泉
は、下部機関の国税庁を有していることです。財務省のキャリア
は、40歳前半で国税庁に出向します。その出向先の役職は、東
京国税局調査査察部長です。このポストを務めた後、官邸勤務に
なるのです。
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官邸勤務になって官房長官などの秘書官になります。その秘書
官になった時の最初の挨拶が、「前職は東京国税局調査査察部長
です」から始まります。この挨拶を聞くと、官房長官や副長官の
政治家は、「おおっ」とものすごく驚きます。
そして、続いて、「東京国税局調査査察部長でしたので、部長
として、今回の査察部の人事は私がやりました。何かありました
ら、何なりと私に申し付けてください」と挨拶するのです。
これを言われると、政治家がみなビックリします。東京国税局
の調査査察部長をやった人間が、自分の秘書官か、ということと
同時に、その政治家を査察できる能力と人脈を持っているという
ことを宣言されたからです。 ──高橋洋一著
『岸田政権の/新しい資本主義で無理心中させられる/
日本経済』/宝島社刊
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自分の前職が東京国税局調査査察部長であることを伝えるだけ
でなく、そこの人事は私がやったので、どのようなことでもやろ
うと思えばできますよと政治家に暗に伝えることによって、一種
のプレッシャーをかけているのです。こんなことができるのは、
財務省が国税庁という実行部隊を傘下に持っているからこそであ
り、財務省は国税庁を手放すことはないのです。
政治の側からいうと、財務省から国税庁を切り離して、歳入庁
として内閣府に移管したいのです。実際にそういう案は何回も野
党から出ています。
しかし、財務省は、絶対にこれを拒否し、あらゆる手段を駆使
して、この案を主張する政治家をスポイルしようとします。政治
家というものは、何らかの秘密を持っているものであり、彼らに
対しては絶対に抵抗不能です。
まして国を統治した経験のない野党の議員に増税についていう
ことをきかせるくらい朝飯前のことであるといえます。だから、
旧民主党が政権をとったとき、財務省のいいなりになってしまっ
たのです。 ──[新しい資本主義/第021]
≪画像および関連情報≫
●「歳入庁」という誰も反対しない構想が実現しない理由
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世の中には、その建前に対しては有効な反論が全くないの
に、実現しないものがある。世界のレベルでは、例えば「世
界平和」だ。世界が平和になることに対して、誰も表立って
反対しない。これは昔からそうなのだが、実現していない。
世界のどこかで深刻な戦争・紛争があるし、将来の戦争・紛
争の種になりそうな対立関係が常に存在する。
率直に言って、世界平和が実現しないのは、直接的には戦
争・紛争を自分にとって有効な手段として使いたい為政者が
存在するからだし、間接的だがより本質的には戦争・紛争・
対立関係がある方が好都合な勢力が存在するからだろう。
日本のレベルに目を転じると、「歳入庁」がこれによく似
ている。税金に加えて、年金、健康保険、雇用保険などの社
会保険料の徴収、ついでに付け加えるならNHKの受信料な
ども、「公の制度として集めることが必要なお金」なのだか
ら、一括して強制的に集めて、それぞれの財源として配分す
るなら、効率がいいし、何よりも徴収漏れに伴う不公平が起
きにくい。これを実現する仕組みとして、海外に例があるこ
ともあって、期待されている有力なアイデアが、「公の共通
集金人」とも言うべき歳入庁だ。 https://bit.ly/3LdUgyC
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岸田首相の脇を固める財務官僚