2022年01月31日

●「事業規模を大きくし財政出抑える」(第5661号)

 2021年11月19日のことです。岸田内閣は、新たな経済
対策を閣議決定しています。東京新聞は、このことを次のように
報道しています。
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 政府は19日、財政支出が過去最大となる55兆7000億円
の新たな経済対策を閣議決定した。民間の投資分なども含めた事
業規模は78兆9000億円にのぼる。18歳以下の子どもへの
10万円相当の支給などお金を配る政策が柱で規模が膨らんだ。
対策実行のためには新たな国債(借金)発行は避けられないが、
政府は財源確保の議論は後回しにしている。(坂田奈央)
    ──東京新聞/東京・ウェブ https://bit.ly/35zKnuI
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 この種の報道内容のポイントは、次の2つです。2つの違いに
注目すべきです。
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        財政支出:55兆7000億円
        事業規模:78兆9000億円
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 この場合、注目されるのは「財政支出」です。財政支出は必ず
「前年度歳入によって行われる」ので、2021年度歳出は20
20年度歳入によってまかない、これに借金「国債」を合わせま
す。新聞報道は、「財政支出55・7兆円」を強調して、過去最
大と書き立てます。その内訳は次の通りです。
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      コロナ対策   ・・ 22・1兆円
      経済再開    ・・  9・2兆円
      新しい資本主義 ・・ 19・8兆円
       防災     ・・  4・6兆円
     −−−−−−−−−−−−−−−−−−
                 55・7兆円
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 これに対して「事業規模」とは、景気浮揚などを狙った経済対
策で動くお金の規模のことです。国による財政支出のほか、財政
投融資、地方自治体や企業の資金、金融機関の融資も含みます。
 このうち、国の財政支出、または、国と地方合計の財政支出が
「真水」と呼ばれます。財務省は、国の財政を悪化させる(と考
える)真水の拡大をできるだけ抑え、その他を膨らませて事業規
模を大きく見せる手口を使います。しかし、報道機関はそのこと
はよくわかっているので、「事業規模」よりも「財政支出」の方
に注目して「財政支出が過去最大となる55兆7000億円」と
いうように報道するのです。
 55・7兆円についても前菅政権からの積み残し分もあり、実
際の真水は22兆円でしかないのです。これでは財政支出55兆
円の半分にもならず、事業規模78・9兆円の3分の1にも届か
ない。真水が大きくないと、経済の回復は困難な情勢です。
 これは、高橋洋一氏の指摘ですが、「新しい資本主義」の財政
支出に19・8兆円が計上されています。しかし、補正予算で見
ると8・3兆円でしかないのです。10兆円不足しています。な
ぜでしょうか。それは、財政投融資で作られる「10兆円規模の
大学ファンドの年内実施」を「新しい資本主義」の予算に入れて
いるからです。つまり、これは、経済対策として2021年度に
おいて、既に執行中の政策なのです。
 しかし、岸田首相は、2021年12月6日の所信表明演説で
は、それがあたかも「新しい資本主義」における成長戦略である
かのように語っています。
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 新しい資本主義」の下での成長
 まずは、成長戦略です。官と民が共に役割を果たし、協働して
成長のための大胆な投資を行います。
(1)イノベーション
 科学技術によるイノベーションを推進し、経済の付加価値創出
力を引き上げます。上場を果たしたスタートアップが、更に成長
していけるよう、上場ルールを見直すなど、スタートアップ・エ
コシステムを大胆に強化します。
 大学改革にも積極的に取り組みます。
 『十兆円の大学ファンドを年度内に創設する』とともに、イノ
ベーションの担い手たる研究者が、大学運営ではなく、研究に専
念できるよう、研究と経営の分離を進めます。
 成長をけん引する、科学技術分野の人材育成を強化するため、
大学の学部や大学院の再編に取り組みます。さらに、地域の中小
企業と連携した大学発ベンチャーの創出にも取り組みます。
 『』は私がしたものですが、これが、「新しい資本主義」のい
の一番の政策ですから、岸田政権の成長戟略のお里がしれてしま
うというものです。             ──高橋洋一著
    『岸田政権の/新しい資本主義で無理心中させられる/
                   日本経済』/宝島社刊
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 「需給ギャップ」というものがあります。個人消費や投資など
の「総需要」(実質GDP)と、労働力や生産設備などの潜在的
供給力(潜在GDP)との差のことです。供給力が総需要より高
ければ、マイナスの需給ギャップとなり、その分の需要が必要に
なります。
 内閣府によると、2021年7〜9月期はマイナス4.8%で
あったと2021年12月2日に発表しています。金額換算で年
27兆円程度の需要不足に相当するとしています。そうであると
すると、27兆円の需給ギャップに対して、実質22兆円の経済
対策では足りませんが、あと一息ということになります。
 しかし、高橋洋一氏は、内閣府は失業率を高めに見ているので
需給ギャップは低めに出ているとしています。
             ──[新しい資本主義/第018]

≪画像および関連情報≫
 ●基調的な物価の低迷が続くなか独自の道を歩む日銀
  (金融政策決定会合)/木内登英氏
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   10月27・28日に開かれた日本銀行金融政策決定会合
  では、政策変更は行われず事前予想通りの無風に終わった。
  展望レポートでは、2021年度の実質GDP成長率の見通
  し(政策委員見通しの中央値)は+3・4%と、前回7月時
  点での見通しの+3・8%から下方修正された。7月時点と
  比べて新規感染者数は大幅に低下するなど個人消費を取り巻
  く環境は改善してきたが、それを上回る景気への逆風が新た
  に生じているため、見通しは下方修正されたのである。
   逆風の第1は、不動産部門の不振を映した中国経済の減速
  傾向である。緊急事態宣言の下で個人消費が低迷する日本経
  済を下支えしてきた輸出が、そのけん引役を失っている。第
  2は、東南アジアでの感染拡大を受けた半導体など自動車部
  品の調達難に伴う自動車の生産減少である。この要因は、今
  年7〜9月期、10〜12月期の実質GDP成長率をそれぞ
  れ年率で2%程度押し下げる可能性が見込まれる。第3は、
  原油価格など資源価格上昇の企業、個人への影響だ。年初か
  らの原油価格上昇と円安の影響により、実質個人消費は1%
  程度押し下げられると見込まれる。
                 https://bit.ly/3KYhU22
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岸田首相所信表明演説.jpg
岸田首相所信表明演説
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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