2021年11月10日

●「トークンはどのように発行するか」(第5610号)

 「トークン」についてさらに考えます。企業はどのようなとき
に、どのようにして、「トークン」を発行することができるので
しょうか。
 トークンは、「ICO」に基づいて発行されますが、これに似
た言葉に「IPO」があります。ICOという言葉は、おそらく
IPOをもじって作られた言葉であると思います。
─────────────────────────────
 IPO ・・・ 新規株式公開/Initial Public Offering
 ICO ・・・ 新規通貨公開/ Initial Coin Offering
─────────────────────────────
 ある小規模の新興IT企業を例として取り上げます。その企業
は、IT業務を運営し、普通に営業していますが、あるよいアイ
デアを持っていて、それを事業化しようと考えています。こうい
う企業がそのための資金を調達しようとする場合、ICOにした
がって、トークンを発行する方法があります。
 この場合の資金調達の方法には、銀行に融資を申し込むとか、
いわゆるクラウドファンディングなどの方法で資金を集めるとか
いろいろな方法があります。ICOによるトークンの発行はその
ひとつです。
 ICOを実施しようとする企業は、仮想通貨市場に対して、な
ぜ、トークンを発行するのかアナウンスする必要があります。こ
れが「ホワイトペーパーの発行」です。ホワイトペーパーは、資
金調達の目的、使途、投資家への還元方法などをまとめたものを
いいます。
 続いて、企業は「オファーの提示」を行います。オファーとは
契約条件を規定した内容書です。このオファーを受けた投資家は
事業全容を把握し、投資する額や期間といったことを指定するの
です。ICOは、IPOと違って証券会社が関与していないので
このようなオファーが必要になるのです。投資家としては、その
事業が魅力的であれば、トークンを購入することになります。
 ICOの目的には次の2つの目的があります。
─────────────────────────────
           @通貨の普及
           A資金の調達
─────────────────────────────
 @は「通貨の普及」です。
 事業目的が魅力的であれば、発行したトークンは値上がりし、
それによってその仮想通貨も値上がりするはずです。仮に、イー
サリアムでトークンを発行したとすれば、そのトークンの値上が
りは、基軸通貨であるイーサの値上がりに対して、影響を与える
のです。
 企業にとっても、自社の発行したトークンが広く普及し、値上
がりすれば、発行した企業として大きな利益につながることにな
ります。日本だけでなく、世界に対してアッピールすることにな
るので、一人ひとりが投資している金額がわずかでも、巨額な金
額になることが多いです。
 Aは「資金の調達」です。
 発行したトークンの認知度が上がると、その発行元である企業
のホワイトペーパーに注目が集中します。そして、そのホワイト
ペーパーに示された事業内容が魅力的であり、その実現可能性が
高く、投資家の信頼が得られると、企業は目標とした資金が得ら
れることになります。
 ICOのメリットとデメリットについて考えてみます。
 企業側と投資家のメリットとデメリットについて、以下にまと
めておきます。
─────────────────────────────
  ◎企業側のメリット
   @調達した資金は借金ではないので返済不要である
   Aトークンに対して株式を発行する必要がないこと
   B世界中から幅広く資金調達することができること
  ◎投資家のメリット
   @トークンは少額でも購入は可能で、投資しやすい
   Aトークンの価格が上昇すると、大きな利益になる
   Bトークンが上がると基軸仮想通貨も値上がりする
  ◎企業側のデメリット
   @簡単に参入できるので、ライバル企業も多くなる
   A国によってはICOを運営する制度が異なること
  ◎投資家のデメリット
   @大きな損失が発生するリスクの可能性があること
   A投資家保護がなく詐欺にかかる可能性もあること
─────────────────────────────
 ALIS(アリス)という日本企業があります。ウェブサイト
にアクセスすると、一般的なブログサービスと同じように、記事
やカテゴリが並んでいます。他のサイトと大きく異なる点は、記
事の内容に関して、ALISは、独自の暗号資産である「ALI
Sトークン」を報酬として、配布している点です。
 良質な記事を書いた人と、その良質な記事に対して、いち早く
「いいね」をつけた人には、「ALISトークン」が報酬として
与えられる仕組みになっています。トークンの発行など一連の仕
組みをブロックチェーンによって実現しています。つまり、IC
Oを日本で一番最初にはじめた企業がALISというわけです。
ALISは、ICOを開始した直後に、たった4分で1億円を達
成したといいます。ALISについては、情報を集めてさらに詳
しくお伝えするつもりです。
 このように、ビットコインやイーサリアムのような仮想通貨の
世界では、そのブロックチェーンを利用して、もうひとつの仮想
通貨トークンが作られ、それによって企業の資金調達にも役立っ
ていることがわかります。これらにおいて、日本は改めて世界に
対して非常に遅れていると感じます。
             ──[デジタル社会論V/064]

≪画像および関連情報≫
 ●DXに関心があるすべての企業が注目すべき新しい
  資金調達法──withコロナの時代
  ───────────────────────────
   企業のデジタルトランスフォーメーションが進み、その波
  は資金調達にも及んでいる。ITが発達し、これまでにも新
  たな資金調達手段が生まれたが、改正金商法が施行されるま
  さに今年・2020年には、また新たな形の資金調達が可能
  になる。新型コロナウイルスが拡大し、経済の先行き不透明
  感が増す中、将来を見据えてDXに取り組む企業・ビジネス
  パーソンが今こそ注目すべきこと、取るべき行動とは何か。
   デジタルトランスフォーメーションとは、進化したデジタ
  ル技術で人々の生活をより良いものへ変革することだ。AI
  5G、IоTなどの充実で日々の生活、暮らしも変わりつつ
  あるが、ビジネス・企業経営においてもDXは急速に進んで
  いる。資金調達でもデジタル化が進み、クラウドファンディ
  ングなど、新しい資金調達手段が生まれているが、なかでも
  今注目されつつあるのが、セキュリティトークンによる調達
  「STO」(セキュリティトークン・オファリング)だ。S
  TOというと、仮想通貨であるコイン、トークンを発行する
  ICOと比較し、「ICOを進化させたもの?」と思われが
  ちだが、STOとICOは別物だ。
   セキュリティ(Securities)とは株式や債券などの有価証
  券のことで、これをブロックチェーンで管理してトークンを
  発行する。つまり、「有価証券をデジタル化したもの」が、
  セキュリティトークン。まさに今年施行の改正金商法で実現
  する、これからの技術でありサービスなのだ。
                  https://bit.ly/3wxHvbe
  ───────────────────────────
トークン.jpg
トークン
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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