2021年11月04日

●「『分散型』概念を正確に理解する」(第5606号)

 イーサリアムの開発者であるヴィタリック・ブテリンの分散型
の考え方をもう少し探ってみることにします。ブテリン氏は盛ん
にこういっていたのです。「ぼくを惹きつけてやまないのは『分
散型』というアイデアである」と。ここで「分散型」という概念
について正確に理解する必要があります。
 添付ファイル「コミュニティのパターン」を参照して読んでい
ただければ幸いです。図に関しては、坪井大輔氏の本で出ていた
ものです。
─────────────────────────────
    @中央集権型 Centralized
    A中央集権ハブ非中央集権型 Decentralized
    B分散型 Distributed
─────────────────────────────
 @は「中央集権型組織」です。
 これは、私たちの今の社会の組織はほとんどこれです。中央集
権型組織は、企業でいうと、一か所の強力な中心に情報が集まり
ます。GAFAのように、大きなプレーヤーが多くのサービスの
提供を通して情報を集めます。
 Aは「中央集権ハブ非中央集権型組織」です。
 これはDAOの世界です。日本には明確なこのスタイルの組織
はありませんが、坪井大輔氏によると、LINEのビジネスがこ
れに近い状態になっているとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 (LINEは)かなりDAOを意識して大きな投資をされてい
るように私には見えます。LINEという全体の大枠の中に、い
ろいろなサービスを散りばめて、それぞれか自律的なシステムと
して動いて、サービスごとに小さな中央集権をつくる。ただ、こ
れは全体をLINEがコントロールしていて、たくさんある小さ
な中央集権は、それぞれまったく関係ないようだけれど、実は一
個一個がつながっています。それぞれをクローズアップしてみる
と、突き詰めていえば、やはり中央集権のコミュニティです。
              ──坪井大輔著/翔泳社/SE刊
   『WHY BLOCK CHAIN/なぜ、ブロックチェーンなのか』
─────────────────────────────
 Bは「分散型組織」です。
 これは、完全な分散型ネットワークです。これは、ビットコイ
ンのネットワークそのものであり、「パブリックチェーン」と呼
んでいます。完全な分散型で、誰も管理しません。坪井氏による
と、社会がすぐにこのようになるというのは考えられず、分散型
は飛躍しすぎていて未来の話に属するといっています。この世界
観を追い詰めると投資がかさみすぎるというのです。
 さて、話をヴィタリック・ブテリン氏の「分散型」の考え方に
戻します。彼は、自分が惹きつけてやまない分散型について、記
者の質問に対して、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ブロックチェーンの魅力は、これまでとはまったく異なる方法
でアプリケーションの構築を行えるところにある。ぼくを惹きつ
けてやまないのは「分散型」というアイデアだ。フェイスブック
のようなひとつの企業にコントロールされるネットワークの代わ
りに、人々がコラボレートすることでできるネットワークを構築
することができる。ひとつの会社やひとりの人間に支配されるこ
とはない。そしてそこには、より効率的で、より公平なマーケッ
トが生まれる可能性がある。人々のやりとりが透明化されて、攻
撃されにくい、よりレジリエントなシステムが生まれる可能性が
ある。それらすべての特徴が、人々のためになると思う。
               ──ヴィタリック・ブテリン氏
                  https://bit.ly/3GDcya4
─────────────────────────────
 ここで述べられているヴィタリック・ブテリン氏の「分散型」
の世界が、イーサリアムによるスマートコントラクトの世界につ
ながったといえます。
 そもそもビットコインに代表される初期のブロックチェーンは
「たった今行われた出来事」を順次記録していくだけの仕組みに
過ぎなかったのです。ブテリン氏は、これをイーサリアムによっ
て、「当事者が合意する条件の下で、特定の処理を将来において
確実に実行すること」に発展させています。これがスマートコン
トラクトの始まりです。
 契約とは何でしょうか。
 一般的な契約とは、当事者同士が行った何らかの約束が、将来
きちんと果たされるように、法律とその執行機関の下で合意を取
り交わすことです。これが契約です。
 イーサリアムにおけるスマートコントラクトは、ブロックチェ
ーン上に自動的に作動するプログラムを実装することによって、
特定の第三者による仲裁なしに確実に合意内容を執行することが
できるのです。つまり、イーサリアムでは、ブロックチェーンは
プログラムそのものと、プログラムの実行結果を記録することが
できるようになっています。
 それでは、プログラムの実行環境とプログラミング言語はどの
ようなものを使っているのでしょうか。これについては、次のよ
うになっています。
─────────────────────────────
   ◎実行環境
    イーサリアム・バーチャル・マシン(EVM)
   ◎プログラミング言語
    ソリディティ(Solidity)
─────────────────────────────
 「ブロックチェーンにプログラムを組み込む」という仕組みが
少しずつ見えてきていると思いますが、いかがでしょうか。ブテ
リン氏は、やはり大変な天才です。
              ─[デジタル社会論V/060]

≪画像および関連情報≫
 ●スマートコントラクトとは?仕組みと事例からわかる
  仮想通貨との関係
  ───────────────────────────
   仮想通貨といえばビットコインが有名ですが、それ以外に
  も注目されている仮想通貨が存在します。例えば、イーサリ
  アムと呼ばれる仮想通貨は、将来的にはビットコインの価値
  を上回るのではないのか、と言われているほどです。
   同じ仮想通貨といえど、イーサリアムにはビットコインに
  は無い機能があります。それがスマートコントラクトです。
  スマートコントラクトは非常に便利で魅力的な機能なだけに
  将来的にはビットコインのサイドチェーンにスマートコント
  ラクトと似たような機能が追加されるだろうと言われている
  ほどです。
   一体、スマートコントラクトとはどのような機能を持って
  いるのでしょう?この機能を活用すると、どのような恩恵が
  受けられるのでしょうか?    https://bit.ly/3o3Hecj
  ───────────────────────────
コミュニティのバターン.jpg
コミュニティのバターン
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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