にいっています。
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ビットコインが電卓のような計算機だとすると、イーサリアム
はアイフォーンである。 ──ヴィタリック・ブテリン
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よく考えてみると、ビットコインのブロックチェーンは、「取
引を改ざんできないように間違いなく記録する」という目的を持
つものであったのに対し、イーサリアムのそれは、さまざまな目
的を持つアプリをブロックチェーン上に開発できるようになった
という点が大きく違います。まさにスマホと同じと考えればわか
りやすいと思います。
これに関して覚えておくべきは、こうして開発されるアプリケ
ーションのことを「DApps/ダップス」ということです。 新しい
言葉続出で大変ですが、これについては改めて取り上げます。
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DApps/分散型アプリケーション
Decentralized Applications
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スマートコントラクト、ビットコイン、イーサリアム──これ
らの関係がまだ頭のなかで整理できない人も多いと思います。こ
れを整理することからはじめます。
スマートコントラクトの考え方は、米国の法学者にして暗号学
者であるニック・サボ(Nick Szabo)氏が1997年に論文で発
表しています。つまり、ビットコインやイーサリアムよりも前に
スマートコントラクトの考え方は存在したのです。
この論文において、スマートコントラクトは「プログラムでき
る契約」と説明されており、次の3つの段階を経ることで、プロ
グラムされた契約が自動的に実行されるのです。
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@契約の定義設定
A契約の自動実行
B実行結果の監査
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論文では、スマートコントラクトが導入された例として自動販
売機が上げられています。イーサリアムでは、このスマートコン
トラクト技術をブロックチェーン技術と組み合わせることによっ
て、ブロックチェーンに記載されている個人情報を参照して、一
切の仲介者なしに契約を自動的に実行するといった利用目的を可
能にしたのです。
契約というものは、人が絡むので、どうしても多くのコストが
かかります。そこでブロックチェーンのシステムのなかに、契約
のルールやレギュレーションを組み込んで、一定の条件が整った
ときに、自動的に契約が実行されることを目指します。それがで
きる契約はたくさんあると思います。
もし、そうした契約がプログラミングできれば、人がかかわら
なくても自動的に契約が実行されることをよしとするのが、スマ
ートコントラクトの考え方です。このことをニック・サボ氏は論
文に書いて発表したのです。
ところで10月31日には、総選挙が行われ、投票に行かれた
ことと思います。私は、投開票日は混むと考えて、1日前の10
月30日に期日前投票に行きましたが、会場はガラガラでした。
それでも10人ほどのスタッフが対応してくれました。期日前投
票が始まった日から毎日、投開票日まで全国の投票所では大勢の
スタッフが選挙の対応に当たるのです。その後開票作業があるの
で、さらに大勢の人が開票に関わります。まさに人海戦術そのも
のであるといえます。何とかこれをデジタル化したいとは、誰も
考えなかったのでしょうか。
それに、選挙には、次のように、改ざんのリスクが3つもある
のです。
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@投票前 ・・・ 票を水増しして改ざん
A開票前 ・・・ 投票箱自体のすりかえ
B開 票 ・・・ 管理システム不正使用
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この不便さを一変させる「ブーレー/Boule」 という投票シス
テム」があります。投票システムにブロックチェーンの技術を使
い、投票用紙をデジタル化し、電子投票を可能にしています。
日本の「マイナンバーカード」が大きく普及したという前提で
あれば、日本でも十分使えます。
まず、選挙投票アプリをスマホにダウンロードします。そして
投票者は「投票」をタップし、マイナンバー番号を含む本人情報
を選挙管理委員会に送信します。選挙管理委員会では、システム
が、自動的に本人の顔をカメラで撮影し、マイナンバーカードの
写真と照合します。生体認証です。
この生体認証がパスすると、スマホに候補者の情報が送られて
きます。顔写真や経歴なども書かれているので、タップして投票
します。正しく投票できていれば、選挙管理委員会から「投票終
了」のメッセージが送られてきます。これで終わりです。
投票所に足を運ぶこともなく、家からでも、どこからでも投票
を済ますことができます。これによって、投票率は飛躍的に上昇
するはずです。
もちろん国民全員がスマホで投票するのは無理と考えられるの
で、従来の投票方式が一部残ることになると思われますが、大幅
な人員削減になることは間違いないことです。そうすれば、開票
結果もほとんどがコンピュータの処理で終わることになり、スピ
ーディーに結果も出るし、ブロックチェーンが絡んでいるので、
投票の改ざんは不可能です。これがイーサリアム・ブロックチェ
ーンのスマートコントラクトを利用した選挙投票システム「ブー
レー」の概要です。 ─[デジタル社会論V/059]
≪画像および関連情報≫
●ブロックチェーンと選挙
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これまでに選挙の効率化や利便性の向上といった点から、
電子投票について議論がされてきました。電子投票は、テク
ノロジーに明るい若い人、投票所に足を運ぶのが困難な人な
ど、より多くの人の意見を国や組織の決定に反映させるとい
う点でも実現が期待されます。
投票では、定められた期間内に有権者が投票可能で、かつ
投票結果に改竄はあってはなりません。ここで注目を集める
のが、「分散型で障害に強い」「改竄が限りなく不可能に近
い」というブロックチェーンの特徴です。
電子投票、ブロックチェーンを使った投票については、ハ
ッキングに対する懸念や指摘もあり、投票システムがハッキ
ングされる可能性はゼロではありません。ただし、現状の投
票所に足を運んで票を投じる選挙システムにも、本人確認な
ど粗さが残り、さらに、世界を見渡すと不正選挙から抗議運
動が起こり暴動に発展した事例もあります。選挙に関するデ
ータが改竄不可能な形で記録され、選挙が正しく行われたこ
とが数学的に証明されたらどうでしょう。ここからは、国内
外でのブロックチェーンと選挙に関する事例を、見ていきま
しょう。 https://bit.ly/2Zwn41P
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ブーレーによる選挙投票システム