本があります。ブロックチェーンを技術というよりも思想ととら
えているのです。この本の冒頭には次の記述があります。
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ブロックチェーンの本質は、技術にはありません。その思想に
あります。今まで多くの方がブロックチェーンの技術を語ってき
ました。システム会社が最新のテクノロジーだと宣伝し、新しも
の好きの人々はバズワードとしてのブロックチェーンを追いかけ
ました。仮想通貨を入口に、金融システムの技術として注目する
人が増え、一時はマスコミも競うように技術名ばかりを伝えまし
た。でも、なかなか本質的な議論は聞こえてきません。この技術
が結果的にもたらす、社会思想についての議論です。
結論を申し上げます。ブロックチェーンは人類に、管理者のい
ない社会をもたらします。それは、私たちがまだ見たことのない
世界です。これまでのような、特定のボスを中心とした中央集権
型の組織が崩れ、個々の人間は自律した存在となります。
このうねりはブロックチェーンの登場と同時に始まりました。
もう止まることはありません。 ──坪井大輔著
『WHY BLOCK CHAIN/なぜ、ブロックチェーンなのか』
翔泳社/SE刊
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ブロックチェーンについて書かれた本のほとんどは、野口悠紀
雄教授の本も含めて、ブロックチェーンの技術について解説し、
それは多くのことに応用できると説いています。しかし、具体的
な応用事例はビットコインだけです。
それでもその実用化に向けて、金融機関をはじめとする実証実
験が行われているという反論がありますが、それは「PоC」に
過ぎないという意見があります。「PоC」とは何かについては
次の説明があります。
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PоCとは、「Proof of Concept」の略語であり、日本語では
「概念実証」「コンセプト実証」と訳されるのが一般的です。ま
たより広く「実証実験」と呼ばれることもあります。その役割は
新たなアイディアや企画、構想(コンセプト)に対し、それが実
現可能なのか、目的とする効果や効能が得られるのか、市場に受
け入れられそうなのか、といったことを、本格的にプロジェクト
を開始する前に検証することです。
ここで重要なのは、単に「机上で検討を重ねる」のではなく、
検証のための「ものを作り上げ」「実際に使ってもらう」という
実験的なアプローチを行う点にあります。
https://bit.ly/3aPJLQV
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この説明では、いまいちはっきりしませんが、本来「PоC」
は、医薬品業界における新薬の開発において使われる言葉です。
新薬の開発は、まず基礎研究を行って新たな候補物質を見つけ出
し、その有効性や安全性を動物実験で確認した後、人に対する有
効性と安全性を確認する臨床試験を行います。この臨床試験の一
部が「PоC」と呼ばれており、有効性や安全性を確認できたこ
とを「PоCを取得した」というのです。
つまり、ブロックチェーンの実証実験というのは、そのレベル
なのです。つまり、使えるかどうかわからないが、実験して試し
てみようというレベルだと坪井大輔氏はいうのです。
医薬品業界以外のケースを上げると、映画業界のケースが上げ
られます。たとえば、長編映画を製作する場合、同様のコンセプ
トの短編映画を作る場合があります。この短編映画を関係者に見
せることで、映画化権の取得や出資者へのアピール、役者の説得
などを行うのです。いわばテストマーケティング的なことを「P
оC」といいます。
テストマーケティングといえば、ターゲットとなる顧客層に試
用品を配布し、そのフィードバックをもらうことで、技術面や使
用上の問題点を明らかにしつつ、その後の販売戦略の立案などに
活かすことも一種の「PоC」です。
しかし、坪井大輔氏がブロックチェーンの応用として掲げてい
るケースは、きわめて具体的であり、なるほどと納得できるもの
が多いので、この坪井流ブロックチェーン論についてご紹介して
行きたいと思います。
坪井大輔氏は、ブロックチェーンについて、重要な発言をして
います。
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ブロックチェーンはビジネスになっていない
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「PоC」の段階では、まだ本格的なビジネスになっていない
のです。確かに仕事は増えており、エンジニアも集まってきてい
ますが、テストマーケティングをしている段階では、ビジネスと
して定着していないのです。
つまり、注目を集めながらも、みんながわっと飛びつく段階に
はいたっていないといえます。こうしたブロックチェーンの現況
について、坪井大輔氏は次のように述べています。
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一体どうしてでしょう。ブロックチェーンはどうして、本格的
なじ晋及のステージに進んでいないのか。私は日々、IT業界だ
けでなくいろいろな産業の方々とお話をさせてもらっていますが
その中で、ブロックチェーンに関してみなさんが感じている壁が
あるように思います。それは、「なぜ今ブロックチェーンを導入
する必要があるのか」「なぜ既存技術ではダメでブロックチェー
ンならいいのか」という疑問です。すなわち、「Whyブロック
チェーン?」という問いにうまく答えられていない、ということ
です。 ──坪井大輔著/翔泳社の前掲書より
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──[デジタル社会論V/050]
≪画像および関連情報≫
●ブロックチェーンの市場規模
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ブロックチェーンは、「AI」「IоT」と並んで、DX
(デジタルトランスフォーメーション)分野で期待される有
望技術の一つです。
DXとは、「情報テクノロジーの力を用いて既存産業の仕
組みや構造を変革すること、あるいはその手段」のことで、
大きくは産業全体のバリューチェーンやサプライチェーンに
おけるイノベーション、小さくは開発企業におけるエンジニ
アの就労環境改善や社内コミュニケーションツールの変更と
いった自社の変革など、仕事だけでなく、私たちの生活全体
を大きく変える可能性として期待されています。
その中でも特に、ブロックチェーンは、既存技術では解決
できなかった課題を乗り越える新しい手段として、ビジネス
のみならず、官公庁の取り組みにおいても広く注目を集めて
います。
その背景として、もともとは Fintech(フィンテック、金
融領域におけるDX)の一分野である仮想通貨(または暗号
通貨)の実現を可能にした一要素技術、つまりビットコイン
を支えるだけの存在に過ぎなかったブロックチェーンが、近
年、金融領域にとどまらず、あらゆる既存産業・ビジネスで
応用できる可能性を秘めた技術であることが明らかになって
きました。 https://bit.ly/3FZj5vt
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坪井大輔氏