2021年10月05日

●「XMSが使われる/X-Road」(第5585号)

 「X-Road」の正体を追って行くと、技術的にはかなり難解であ
り、データーベースの専門知識も必要なので、あまり深入りはし
ないことにします。しかし、理解が必要な部分は、デジタル庁に
よる日本のシステムの開発のこともあるので、重要なポイントに
ついては、多少難解でもわかるよう説明します。
 エストニアでは、システム開発に当たっては、次の2つのこと
が、ルールとして共有されています。
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          1.重複を避ける
          2.ノーレガシー
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 第1のルールは「重複を避ける」です。
 日本の場合、縦割り組織の弊害として、各省庁で似たような目
的のシステムをバラバラに構築し、結局、使われなくて、無駄に
なっています。エストニアの電子政府システムでは、重複開発を
避けることを目的として、データベースの複製を許さず、多数の
システムをどうしたら連携させることができるかに知恵を絞り、
「X-Road」を開発したのです。つまり、「重複を避ける」ことを
システムアーキテクチャに落とし込んでいるわけです。
 第2のルールは「ノーレガシー」です。
 エストニアでは、13年以上古いシステムは使わないことが、
ルールになっています。なぜかというと、新旧のシステムが混在
してしまうと、新しい情報システムの構築や改修の難易度を高め
てしまうからです。
 日本の場合、みずほ銀行のシステムトラブルの惨状がまさにレ
ガシーシステムこだわった結果といえます。システムの開発者が
企業を去っており、何度も改訂を施しているので、現状がどうい
うシステムになっているのか誰もわからなくなっているのです。
 昨日のEJの添付ファイルにつけた「X-Road」の概念図を見る
と、公共セクターや民間セクターなどのそれぞれの自律的なシス
テムの共通基盤として「X-Road」が機能するというかたちになっ
ています。この「X-Road」に関して、日経BP社で2006年ま
で科学記者を務めたITジャーナリストの星暁雄氏は、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 エストニア電子政府では徹底して分散型のシステムによるリア
ルタイムな情報連携を重視しているのです。同国のウェブサイト
によれば、この「X-Road」は2000種以上のサービスが利用し
ており、900以上の組織が日常的に使っていて、2013年の
1年間で2億8700万クエリを処理したそうです。
 各種政府機関はそれぞれ「独立に最適な技術を利用」しつつ、
他のシステムと連携できます。「X-Road」のプロトコル仕様書に
よれば、内部的には「SOAP1.1」、「WSDL1.1」など、XMLウェ
ブサービスの技術を用いています。汎用性の高いXMLベースの
プロトコルを使い、政府機関が抱える多数のデータベースを連携
しているのです。
 「X-Road」は、2001年に導入されたということですが、S
OAP、WSDLは当時登場したばかりの技術でした。新技術の
取り入れについても、エストニア政府はチャレンジャーと言える
でしょう。     ──星暁雄氏  https://bit.ly/3Fbc36A
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 技術的な内容ですが、注目されることは「X-Road」にはXML
ベースのプロトコルが使われていることです。これは重要なこと
です。ところで、「XML」とは何でしょうか。
 XMLは、SGMLという言語から派生したマークアップ言語
のひとつです。マークアップ言語とは、文章を構造化するための
言語です。文章を構造化するとは、「ここはタイトル部分です」
「ここから本文が始まります」「ここは非常に重要な部分です」
など、人間であれば直感的に理解できる事柄を、タグや記号で表
示し、コンピューターに認識させることをいうのです。
 SGMLは、異種のコンピュータ間で文書の互換を行うための
もので、文書のもつ「章見出し」「節見出し」「本文」などの論
理構造を「タグ」と呼ばれるもので記述することができます。つ
まり、文書の構造を重視している言語です。
 HTMLという言語があります。これもマークアップ言語で、
HTMLもSGMLからの派生言語のひとつです。ウェブサイト
を構築する言語として知られていますが、現在では、ウェブサイ
トの構築には、XMLが使われることが多いのです。なぜかとい
うと、かつては、ウェブサイトを見るのは、PCに決まっていま
したが、現在ではPCだけではなく、スマホやタブレットなどの
デバイスでも見るからです。
 それでは、HTMLとXMLはどう違うのでしょうか。
 簡単にいうと、HTMLは指定されたタグを使うことになって
おり、タグによって表示されるデザインが決まっているので、H
TMLには一部デザイン情報を含んでいます。そのため、人間に
とっては見た目はきれいでもマシン側ではわかりにくいのです。
 しかし、XMLは、タグは自分で作ることができ、あくまでデ
ータを記述する言語なので、文書中のデータをわかりやすくした
り、データを交換したりできます。マシンに情報をわかりやすく
効率よく伝えるための言語といってよいといえます。アプリから
みてもXMLは使いやすいのです。だから「X-Road」にはXML
が使われているのです。
 XMLは、インターネットを経由して複数のアプリケーション
間でデータをやり取りするのに適した構造を持っています。この
ため、膨大なコンテンツの中から一定のルールに基づいて情報を
抽出したり、複数のウェブサービスを組み合わせたアプリを制作
したりするさいには非常に便利であり、多くのデータベース間の
連携をとる必要のある「X-Road」には、XMLは、便利なマーク
アップ言語であるといえます。
             ──[デジタル社会論V/039]

≪画像および関連情報≫
 ●【初心者入門】XMLとは何?HTMLとの違いは?
  徹底解説!
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   XMLとHTMLは、同じマークアップ言語です。マーク
  アップ言語とはタグとデータ(値)という形式で作られ文章
  を構造化する言語のことを言い、XMLとHTMLで基本的
  な文章の作り方は変わりません。
   ただしHTMLはブラウザに向けて作られており、ブラウ
  ザが読み込むためのタグで構築する必要があります。一方X
  MLはタグをユーザーが独自に決定できるなど自由度が高く
  ブラウザで表示させるため以外の使い方もできる言語です。
   HTMLはブラウザに表示するための言語で、XMLは、
  データの構造がカスタマイズできるためさまざまなアプリケ
  ーションでも使われる言語という点が、大きく異なっていま
  す。先にも述べたように、XMLは自由にタグを設定できる
  言語です。自由にタグを設定でき、入れ子構造も可能なので
  カスタマイズ性の高いデータファイルを作成することができ
  ます。データを蓄えられるファイルとしてCSVもよく使わ
  れていますが、CSVはデータの関連付けをする機能がない
  ので何列目の情報はAであるといった情報を一緒にサーバサ
  イドなどに渡してあげる必要があります。文字コードの情報
  も同様で、どの文字コードで読み込むかといった情報がない
  場合は正しく読み取れない可能性もあるのがCSVファイル
  です。それに対してXMLであればデータはどのようなデー
  タかの関連付けもされていますし、冒頭のタグで文字コード
  を指定することも可能です。   https://bit.ly/3F5vVYy
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データ記述言語/XML.jpg
データ記述言語/XML
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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