担当政務委員)です。1981年生まれの40歳という若さ。大
臣に就任したのは5年前なので、35歳で大臣になったことにな
ります。IQ180以上の天才プログラマーとして知られ、米シ
リコンバレーでの起業経験もあるITの申し子です。若いけれど
も、ITのプロフェッショナルです。
これに対して、日本のIT担当相はどうでしょうか。
現在の担当は、平井卓也デジタル改革担当相ですが、初代は、
サイバーセキュリティ担当大臣として桜田義孝氏が70歳で初入
閣しています。国務大臣として「東京オリパラ競技大会担当」な
どとの兼務としてです。ITは全くの素人で、PCを使ったこと
がない人物です。
続いて竹本直一氏がIT政策担当相として就任しています。こ
の人は79歳で、ITはズブの素人。それにしても、日本政府は
どうして、ITに詳しくない、明らかにITに向いていない人ば
かりをIT担当大臣に任命するのでしょうか。
それは、IT担当相というポストは、長年議員をやっていても
大臣になれない議員に対して就任させるポストの1つだったから
です。つまり、それほど、IT担当相というポストが軽いポスト
だったことを意味しています。この経緯を見ても、日本にとって
ICTというものが、現在はともかくとして、いかに低い位置づ
けであったかがわかります。
これに比べると、現在のデジタル改革担当相の平井卓也氏は電
通出身ですが、ITの世界に通じている人物です。そのため、自
民党内ではITにもっとも詳しく、2009年には自民党広報戦
略局長・IT戦略特命委員長に就任しています。
2018年10月にIT担当相に就任しましたが、国の行政手
続きを原則電子化する「デジタルファースト法」と、この法律に
基づき、2024年中に9割を電子化する工程表「デジタル・ガ
バメント実行計画」が2019年5月に成立したとき、その前提
になるIT調達予算の一元化を主張した平井氏に対し、当時の菅
官房長官はその具体策の策定を命令した経緯があります。そして
菅内閣発足時に、平井卓也氏はデジタル改革改革相として入閣し
ています。デジタル庁の創設が前提の人事です。
しかし、いわゆる担当大臣というのは、大きな仕事をやるには
やりにくいポストであるといえます。平井氏のポストの正式名称
は「内閣府特命担当大臣」であり、その担当名が「情報通信技術
(IT)政策担当」なのです。厚労相や総務相のように直接的な
手足(組織)があるわけではなく、内閣官房IT総合戦略室(以
下、IT総合戦略室)という組織を使って仕事をすることになり
ます。直接の部下ではないものの、担当職務に関して、責任は大
臣にあります。
しかし、五輪アプリの発注が問題になったとき、平井デジタル
改革担当相は、その詳細を聞かされていなかったようです。この
ことについて、ネットの情報誌「デイリー新潮」は、次のように
書いています。
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平井さんは担当大臣なのに、実は質問されるまで発注の事実を
まったく知らなかったんです。首相補佐官の和泉洋人さんがIT
室の一部のメンバーと、業者選定や金額の割り振りまで決めてい
ました。しかも、観戦客を含めて海外から来る120万人が使用
するという触れ込みだったのに、海外からの観戦客はゼロになり
ましたから、アプリは無用の長物と化していたのです。
──「デイリー新潮」 https://bit.ly/3gr7jyH
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どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。官邸には新任
大臣なんかよりもはるかに力を持った役人が勝手なことをやって
いるのです。ましてIT担当相がITがよくわかっていない場合
は、事実上、IT総合戦略室がすべてをやらざるを得なくなるの
です。だが今回の五輪アプリの発注、入札のやり方などに疑惑が
出てきたのです。一体何があったのでしょうか。2021年6月
23日付の「デイリー新潮」の記事を参照にして要約します。
IT総合戦略室に室長代理を務める神成淳司慶應義塾大学教授
がいます。神成教授は、7年前にIT総合戦略室に入り、今では
幹部のなかでは、唯一の民間メンバーです。五輪アプリについて
は、全体を管理する担当者です。
2021年1月末のことです。五輪アプリについて、事業者選
定のプロセスについて、国会で、野党による追及が行われたので
す。事業自体が73億円と高額であることと、入札公示から提案
書提出期限まで実質10日ほどしかなかったことから、「出来レ
ースではないか」と突っ込まれたのです。
これを受けて、平井デジタル改革担当相サイドが内々に調査を
行ったところ、今回落札した事業体(NTTコミュニケーション
ズと数社で構成するコンソーシアム)に、神成教授と密接な関係
の業者が含まれていたことがわかったのです。
密接な関係の業者の1社はNECです。神成教授は、NECの
子会社であるNECソリューションイノベータ社と研究を共にし
共同で特許技術を開発する関係にあったのです。そして、もう1
社がアプリの連携基盤サービスを担当するJBS(日本ビジネス
システムズ株式会社)です。このJBSと神成教授との関係につ
いて「デイリー新潮」は次のように書いています。
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JBSは、実務を「ネクストスケープ」なる会社に委託。この
ネクスト社は神成教授が代表を務める別の事業におけるビジネス
パートナーに当たり、教授と同社の社長はメディアで対談まです
る仲なのだ。つまり、このプロジェクトの指揮を執った神成教授
と非常に親しい業者が複数、事業体に含まれていることになる。
https://bit.ly/3j8RBdw
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──[デジタル社会論V/013]
≪画像および関連情報≫
●海外客断念なのに73億円「五輪アプリ」の見直し迷走中
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東京五輪・パラリンピックの新型コロナウイルス対策とし
て、訪日観戦客の健康管理を行うアプリの開発が迷走してい
る。3月に海外からの観戦受け入れを断念した後、政府が利
用の仕方を決めかねているためだ。この「オリパラアプリ」
は、開発する民間企業への委託費約73億円に対して当初か
ら「高額だ」との批判が上がっていたが、政府は現時点で事
業の凍結に向かわず継続する方針だ。(坂田奈央)
3月20日に海外からの観戦受け入れ断念が正式決定した
のを受け、国民民主党の伊藤孝恵参院議員はオリパラアプリ
の今後の運用について質問主意書を提出した。これに対し政
府が今月2日に閣議決定した答弁書は「運用方針などの見直
しを検討中で、現時点でお答えすることは困難だ」と実質ゼ
ロ回答だった。
新たなアプリの利用方法が定まらないのに、政府は事業を
継続する方針を崩していない。平井卓也デジタル改革担当相
は「大枠については変更ない」と強調している。
当初想定していたアプリは、訪日観戦客の健康状態の管理
や記録のほか、感染が疑われる場合は警告するなどの機能が
備わっていた。利用者は海外からの観戦客約80万人、大会
関係者約40万人の計120万人を想定していたが、海外か
らの受け入れ断念で計画は頓挫している。
https://bit.ly/3kmIuoK
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オードリー・タン氏(台湾)