2021年08月18日

●「日本の世界政府/第14位の評価」(第5553号)

 「電子政府」という概念があります。国民にICTが利用でき
る環境を提供し、各省庁間の事務および対国民との各種手続にI
CTを用いることにより、費用および人員削減、効率化、国民の
利便性の向上および満足度を高めることを目ざすものです。
 「電子政府世界ランキング」というものがあります。国連の経
済社会局(UNDESA)が発表しているもので、その2018
年度と2020年度の順位を以下に示します。日本は、2018
年度は10位ですが、2020年は14位に転落しています。
─────────────────────────────
          ◎2018         ◎2020
  @デンマーク    0.9150 @デンマーク    0.9758
  Aオーストラリア  0.9053 A韓国       0.9560
  B韓国       0.9010 Bエストニア    0.9473
  C英国       0.8999 Cフィンランド   0.9452
  Dスウェーデン   0.8882 Dオーストラリア  0.9432
  Eフィンランド   0.8815 Eスウェーデン   0.9365
  Fシンガポール   0.8812 F英国       0.9358
  Gニュージーランド 0.8806 Gニュージーランド 0.9339
  Hフランス     0.8790 H米国       0.9297
  I日本       0.8783 Iオランダ     0.9228
  Jドイツ      0.8765 Jシンガポール   0.9150
  Kオランダ     0.8757 Kアイスランド   0.9101
  Lノルウェー    0.8557 Lノルウェー    0.9064
  Mスイス      0.8520 M日本       0.8989
                  https://bit.ly/3jUByiB
─────────────────────────────
 順位を決めている数値は、EGDIといいますが、2020年
の日本の数値は「0.8989」、この数値を2018年にあて
はめると、2018年なら第5位になります。デジタル化の競争
は厳しいのです。
 「EGDI」とは何でしょうか。簡単に説明できる数値ではあ
りませんが、何によってEGDIが決まっているかについて、少
し詳しく説明することにします。
 EGDIは「電子政府発展度指標」といい、国連の経済社会局
が各国のデジタル進捗効果をまとめたものです。なおEGDIは
次の言葉を省略したものです。
─────────────────────────────
    ◎「電子政府発展度指標」
    EGDI/e-government development index
─────────────────────────────
 EGDIは、OSI、HCI、TIIという3つの指標の平均
に基づいて算出されます。これらの3つの指標について、次にま
とめます。
─────────────────────────────
    ◎OSI:オンラインサービス指標
     Online Services Index
    ◎HCI:人材指標
     Human Capital Index
    ◎TII:通信基盤指標
     Telecommunications Infrastructure Index
─────────────────────────────
 第1の指標は「OSI/オンラインサービス指標」です。
 婚姻届、出生届といった、さまざまな申請や手続きのオンライ
ン化など、行政サービスのオンラインカバレージによって算出さ
れます。サービスだけでなく、ウェブによる国の情報公開や、情
報に対してのアクセスの容易性なども、評価の対象になっていま
す。データソースは、国連事務局の独自調査と、各国に対するオ
ンラインサーベイの回答です。
 第2の指標は「HCI/人材指標」です。
 成人(15歳以上)の識字率、初等・中等および中等教育に在
籍する就学率、一定の年齢に達した児童が、将来受けることが期
待できる学校教育の年数、その国の成人人口(25歳以上)が就
学した平均教育年数の4つから出される総合指標。UNESCO
(国際連合教育科学文化機関)がデータソースになっています。
 第3の指標は「TII/通信基盤指標」です。
 100人当たりのインターネットユーザー数、100人当たり
のモバイルユーザー数(電話のみを含む)、アクティブなモバイ
ルブロードバンドユーザー数、100人当たりの固定ブロードバ
ンドユーザー数という4指標の平均に基づく複合指標。WB(世
界銀行)とITU(国際電気通信連合)がデータソースです。
 指標の範囲は、0.0〜1.0で、2020年の世界全体の平
均値は0.60です。平均値は、2016年の0.49、201
8年の0.55から堅調に伸びています。
 このEGDI指標で、0.75を超えればトップグループとい
われますが、そのトップグループは、2016年は29か国、2
018年は40か国、2020年は57か国であり、着実に伸び
ています。
 この基準で2020年の日本のEGDI指標、0.8989は
決して悪い方ではありませんが、それでも世界14位。3つの指
標のそれぞれは次のようになっています。
─────────────────────────────
 ◎2020年世界14位/日本
  OSI:オンラインサービス指標/世界11位
  HCI:人材指標世界/世界14位
  TII:通信基盤指標/世界 6位
─────────────────────────────
 日本の世界14位に大きく貢献しているのは、通信インフラの
高度化にあります。インフラは優れているのに、その利用に関し
ては日本は世界に大きく後れをとっています。
             ──[デジタル社会論V/007]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の電子政府が「評価外」? “デジタル化先進国”デン
  マークや韓国、英国との違いとは
  ───────────────────────────
   ハンコ廃止やデジタル庁の発足を契機に、政府のデジタル
  化への取り組みが加速している。しかし、国連が発表してい
  る電子政府ランキングでは、デンマークや韓国、エストニア
  などの先進国に大きく水をあけられているのが実態だ。そも
  そも、日本政府がデジタル化に取り組んだのは、これが初め
  てではない。にもかかわらず、なぜこれほど差が付いたのは
  なぜか。先進国との違いを分析し、日本の課題と取り組むべ
  き対策を整理する。
   新型コロナウイルスの感染が拡大する中、河野行政改革相
  による押印廃止、デジタル庁の発足など、行政のデジタル化
  への取り組みに注目が集まっている。
   一方で、日本政府のデジタル化の取り組みに対する世界的
  な評価は低い。国連が2020年7月に発表したデジタル政
  府の開発状況を示したEGDIで、日本は14位と2018
  年の前回調査(10位)から順位を4つも落としている。
   20年以上も前から、日本はデジタル構想を打ち出してい
  るものの、その取り組みは一向に進まない。その原因を特定
  し、問題を解決しないまま菅政権が行政デジタル化を進めれ
  ば、その莫大な投資がムダになる可能性も否定できない。
                  https://bit.ly/37LmePF
  ───────────────────────────
電子政府への期待と課題.jpg
電子政府への期待と課題
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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