2021年08月13日

●「テレワークも満足にできぬ官公庁」(第5550号)

 今回のテーマの第1回で、中央官庁のテレビ会議が機能してい
ないことを述べましたが、それを裏づける日本経済新聞の記事を
見つけたので、次に示しておきます。
─────────────────────────────
◎ちぐはぐ通信網、テレビ会議さえできず
 役所のデジタル化の遅れは著しい。2020年4月に緊急事態
宣言が出ると綻びは隠せなくなった。ある官庁では企業からコロ
ナ禍の影響を聞くテレビ会議の途中で音声が切れた。コロナ対策
の打ち合わせなど重要な会議は結局、対面での開催が続いた。国
土交通省では、5月、テレワークの申請を断られる職員が相次い
だ。容量の制約で回線に限りがあり、早い者勝ちだった。
 政府は、2020年度補正予算で霞が関の計700課に米シス
コシステムズのテレビ会議システム「Webex」 のIDを配ってい
る。WiFiルーターも配り、急場しのぎで私用端末と外部回線
によるテレビ会議を開けるようにした。サイバー攻撃への対処な
ど、セキュリティーの不安は拭えない。
 そもそも今の中央省庁のLANは動画などの大容量データのや
りとりに向かない仕様になっている。隣の官庁との間でも安全基
準の違いなどからテレビ会議をつなげないことがある。2つの省
庁を兼務する官僚は双方のLANで業務をするため2台のパソコ
ンを使うケースもある。ちぐはぐなシステムが無駄を生む。
      ──2020年6月23日付、日本経済新聞電子版
               https://s.nikkei.com/37Aoitz
─────────────────────────────
 ここで述べられていることは、第1回の緊急事態宣言が発出さ
れた時期に起きています。このときは、新型コロナウイルスとい
う得体のしれないウイルスに対して、国民は強い警戒感を持って
いましたし、あのシブチン政府が全国民に10万円もの大金を配
るという非日常的なことも起きていたからこそ、国民は、外出自
粛も本気で守ったし、中央官庁においても通常では絶対にやらな
いことを許可しています。
 1つは、ZOOMなどと同様に、ごく一般的な米シスコシステ
ムズのテレビ会議システム 「Webex」を導入し、私用端末(スマ
ホ)の使用を認めています。つねに専用回線にこだわる官庁とし
ては珍しいことです。
 「BYOD(ビーワイオーディー)」という言葉があります。
これは、従業員が個人保有の携帯用機器を職場に持ち込み、それ
を業務に使用することをいいます。BYODは、次の言葉を省略
したものです。
─────────────────────────────
       BYOD/Bring Your Own Device
─────────────────────────────
 民間であまねく使われるテレビ会議システムを採用し、BYO
Dまで認めるというのは、官庁としては画期的なことですが、こ
れはあくまで緊急対応であり、次があるといいます。2020年
度予算の第2次補正予算に数億円を計上し、各省庁のLANを統
合する通信網を作り、各省庁の業務端末によるテレビ会議システ
ムを目下進めているというのです。
 確かに官庁の場合、セキュリティの問題がありますが、なぜ、
巨額のお金をかけて、屋上屋にシステムを積み重ねる愚を犯すの
か理解に苦しみます。警察や防衛関係などの特殊な部局は別とし
て、世間に一般に幅広く使われている会議システムを採用し、そ
の分セキュリティは厳重にすればよいと思います。
 なお、コロナ禍によって、テレワークの普及が強く求められて
いますが、日本の場合、否定的な意見が少なくないのです。「テ
レワークの最新動向と総務省の政策展開」によると、テレワーク
しない理由について、次のようになっています。
─────────────────────────────
 テレワークに適した仕事がない ・・・・・・・ 74・2%
 情報漏洩が心配なため ・・・・・・・・・・・ 22・6%
 導入するメリットがよくわからない ・・・・・ 18・4%
 社内のコミュニケーションに支障があるため ・ 11・3%
 社員の評価が難しいため ・・・・・・・・・・  8・8%
 ──「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」/2019
─────────────────────────────
 この調査で示されている回答は、テレワークをやってみて無理
であると判断したというよりも、やってみないでできないと決め
ている感じがします。確かに営業など、テレワークが困難な業務
は多くありますが、営業であっても、テレワークを利用してコン
タクトレス営業の展開を試みるなど、業務の内容を考え直すこと
によって、テレワークができる余地は大きいのです。
 なぜ、いまテレワークが必要なのかというと、労働生産性を高
める必要があるからです。なぜなら、日本の労働生産性は他国に
比べて低いのです。2018年のデータによると、日本は米国の
58・5%でしかなく、韓国、トルコ、スロヴェニアなどに抜か
れてしまっています。ちなみに世界トップはアイルランドですが
日本はそのわずか40%しかないのです。野口悠紀雄氏は、労働
生産性について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」は、テレワーク
を導入していない企業の労働生産性は599万円であり、テレワ
ークを導入している企業の労働生産性957万円の1・6分の1
でしかないことを指摘しています。
   テレワークを導入していない企業の生産性=
     (営業利益+人件費+減価償却費)÷従業員数
            ──野口悠紀雄著/日本経済新聞出版
            『良いデジタル化/悪いデジタル化/
         生産性を上げ、プライバシーを守る改革を』
─────────────────────────────
             ──[デジタル社会論V/004]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の「1人当たり労働生産性」は世界37位
  1位はどこ?
  ───────────────────────────
   世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されな
  いための「データと視点」人口問題、SDGs、資源戦争、
  貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫
  る!データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあ
  り方を理解する。
   著者は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮
  路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動してい
  る。『経済学は統計から学べ』を出版し(6月30日刊行)
  「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つ
  の視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台として
  の統計データ」をわかりやすく解説している。
   日本の労働生産性は低いと言われています。本当でしょう
  か。数字で詳しく見ていきましょう。
   「1人当たり労働生産性」という指標があります。これは
  実質GDP総額を総就業者数で割って算出した値で、ILO
  (国際労働機関)による統計です。「労働の成果」を「労働
  の量」で割ったものであり、労働者1人が生み出す労働の成
  果を指します。日本でも「働き方改革」と称して、長時間労
  働の是正、業務の効率化による労働生産性の向上などの意識
  が高まっています。実際に、「日本は労働生産性が低い」と
  いわれることが多く、解決は急務です。
                  https://bit.ly/3jK6BgX
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テレワーク.jpg
テレワーク
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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