の代表的な金融機関の変貌について調べてきましたが、日本の銀
行はどう対応しているのでしょうか。日本の銀行についても少し
調べてみることにします。
日本の銀行も頑張っています。まず、取り上げるべきは、20
15年からはじまったMUFG(三菱UFJフィナンシャル・グ
ループ)の次の取り組みです。
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MUFGデジタル・アクセラレータ・プログラム
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これは、邦銀初のスタートアップアクセラレータ・プログラム
のことです。
このプログラムは、決済、融資、資産運用などのフィンテック
領域や、AI、ブロックチェーン、IоTなどの先端技術を活用
した事業領域を主な対象として、MUFGが総力をあげて事業プ
ランのブラッシュアップ、プロトタイプの構築支援、事業プラン
の方向性に合わせたパートナー選定、アライアンスなど、事業化
に向けたステップを全面的に支援する約4ヶ月間のアクセラレー
タプログラムです。
MUFGでは、2016年までの10年間で、銀行窓口を訪れ
る顧客が約4割減少する一方で、ネットバンキンクの利用者は、
この5年間で約4割増えています。つまり、明らかなデジタルシ
フトが起きているのです。
そういうわけで、MUFGは、2023年までに窓口で店員が
接客する支店を半減させ、自動化の進んだ次世代店舗を増加させ
る計画をかなりのスピードで実行しています。私がよく行く池袋
の東口駅前には、三菱UFJ銀行が2店舗あったのですが、今年
から駅に近い店舗はATMだけになり、遠い方が窓口業務を行う
次世代店舗に変貌しつつあります。こういう銀行店舗改革が日本
の各地で起こりつつあります。
JPモルガンの「イン・レジデンス」やMUFGデジタル・ア
クセラレータ・プログラムのような試みは、本来自らをディスラ
プスト(破壊)しかねない新興フィンテック企業と組む戦略です
が、実は双方にメリットがある妙手なのです。この提携によって
新興フィンテック企業側と、既存金融機関側の双方が得られるメ
リットについて、田中道昭氏の本から引用します。
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◎フィンテック企業側のメリット
@既存金融機関の顧客にリーチできる
A知名度や消費者からの信用が増す
B複雑な金融規制やコンプライアンスへの理解が向上する
Cリスク管理ノウハウを獲得できる
D資金調達力がアップする
Eグローバル決済システムにアクセスできる
F独自に銀行免許を取得しなくてよい
◎既存金融機関が受けるメリット
@レガシーシステムの制約を受けることなく、新しいアイデア
を試すことができる。
Aビッグデータや人工知能など先端技術を活用したサービスを
顧客に提供できる
B融資などのサービスを、従来より低コストで素早く顧客に提
供できる
C今までは手が回らなかった、ややニッチな領域のサービスも
提供できるようになる
Dカスタマーエクスペリエンスを改善し、ミレニアル世代など
新規の顧客層の開拓が期待できる。 ──田中道昭著
『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
次世代金融シナリオ』/日経BP
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MUFGは、日本の銀行のなかでは、DX(デジタルトランス
フォーメーション)の取り組みでは一番進んでいるといえます。
MUFGは2017年9月に「デジタルトランスフォーメーショ
ン戦略」を発表していますが、そのなかで、「伝統的な銀行業務
からの脱却」を宣言しています。
その本気度は、CDTO(チーフデジタルトランスフォーメー
ション)という役職を設け、取締役専務執行役員の亀澤宏規氏を
就任させています。さらに「デジタル企画部」を設置し、外部の
知見も活用する体制を整えています。このCDTOという役職と
デジタル企画部という組織について、MUFGのCDO(チーフ
・デジタル・オフィサー)である安田裕司氏は、次のようにコメ
ントしています。
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銀行は今デジタル化の洗礼を受けて、ディスラプターの挑戦を
受ける立場にあります。これまでのビジネスモデルが変わってい
く中で、どうしていくのかは大きな課題です。金融機関が長年培
ってきた“信頼”や“品質”といったものに解を求めていくこと
になるのではないかと思います。
仮想通貨(暗号資産)による送金なども話題になっていますが
銀行は送金のインフラをすでに多大なコストをかけて作っていま
すし、マネーロンダリング対策には膨大な労力をかけています。
それを生かした新しいビジネスモデルなどは、スタートアップ
企業とうまく組み合わせることによって、いろいろと提供できる
のではないでしょうか。そのようなデジタルトランスフォーメー
ションに関しては、CDTOという役職とデジタル企画部という
部署が別にあります。われわれは、そういう動きの役に立つよう
に、正しいデータを使いやすいように提供することによって、デ
ジタルトランスフォーメーションに貢献するということです。縁
の下の力持ちのような存在ですね。 https://bit.ly/3ykJNKk
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──[デジタル社会論U/054]
≪画像および関連情報≫
●国内企業でも急増しはじめた「CDO」とは?
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「CDO」という役職をご存じだろうか。
CDOは、チーフ・デジタル・オフィサー(最高デジタル
責任者)、またはチーフ・データ・オフィサー(最高データ
責任者)の略だ。CEO(最高経営責任者)やCOO(最高
執行責任者)が組織の業務執行を統括するように、CDOは
組織のデジタル変革を経営の視点で推進する役割を担う。
欧米では、CDOという役職が4〜5年前から使われ始め
すでに多くの組織(企業だけでなく、行政や公共機関なども
含む)が、CDOを設置している。主にCDOを対象とした
コミュニティであるCDOクラブが把握している範囲でCD
Oという役割を担う人材はすでに6000人を超えている。
このことからも、世界的には一般化した役職であることがわ
かると思う。一方、国内ではこれまで実際に「CDO」とい
う肩書きを持つ人がほとんどいなかった。ところが2018
年に入り、まさに「CDO元年」と言えそうな動きが出てき
ている。筆者が所属しているCDOクラブジャパンの調べに
よると、2018年に入ってから、国内企業でCDOまたは
それに類する肩書きを任命された人が少なくとも40人に増
えたと見られる。
必ずしも肩書きが、その人のミッションを適切に表すもの
とは限らないが、国内でCDOという肩書きが増えていると
いうことは、それだけデジタル変革の必要性を痛感している
組織が多くなっている、ということを示している。
https://bit.ly/36c00W2
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三菱UFJ銀行本社ビル