葉が話題になっていました。
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Silicon Valley is coming./シリコンバレーがやってくる
──JPモルガン/ダイモンCEO
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これは米国の大手金融機関JPモルガン・チェースが、ジェー
ムズ・ダイモンCEO(最高経営責任者)名義で公開した「株主
への手紙」の中にある一節です。シリコンバレーのスタートアッ
プが、JPモルガン・チェースのような巨大金融機関の脅威にな
り始めていることを率直に表現したものです。
ここでJPモルガン・チェースとは、ニューヨーク州に本社を
置く銀行の持ち株会社のことであり、その傘下にJPモルガン・
チェース銀行や、投資銀行JPモルガンが子会社として配置され
ています。
実際にダイモンCEOは、フィンテックに1兆円を投資する方
針を打ち出しており、テクノロジー企業との連携も積極的に実施
しています。その一つに2016年からはじめた「イン・レジデ
ンス」プログラムというのがあります。
「イン・レジデンス」とは、「ある一定期間居住する」という
意味ですが、スタートアップ企業を選抜して、JPモルガンの居
住人として、ブロックチェーンやロボティクス、ビッグデータ分
析などのプロジェクトを実施させるプログラムです。
このレジデンツに選ばれると、そのスタートアップ企業は、J
Pモルガンのオフィスで、必要に応じて社内のリソースにアクセ
スでき、実践で働く金融マンたちと一緒に実用的なフィンテック
の開発を行うことができます。
2017年6月の時点で、475のスタートアップ企業が、イ
ン・レジデンス・プログラムに応募しています。そのうち60社
が最終選考に残り、わずか6社がレジデンツに選ばれています。
そのような過程で開発されたのが、モバイルバンギングアプリ
「Finn」です。
「Finn」とは、どのようなアプリでしょうか。
これは、実店舗を嫌い、オンラインを好むミレニアル世代を前
提にして、すべてのサービスがスマホでできるアプリです。口座
開設もオンラインで5分でできます。また、当座預金と普通預金
を結び付けておいて、ユーザーがいつ預金を当座口座から普通口
座に移すかルールを決めて置くというものです。
例えば、「Work Hard, Save Smarter (一生懸命働き、賢く節
約する)」を選択すると、給料日に決まった金額を分けておいて
くれるし、「The Limit Does Not Exist(限界なし)」 を選択
しておくと、一定の金額以上を使うたびに、あらかじめ決めてお
いた金額が自動的に貯蓄へ回されるのです。
このJPモルガン・チェースのFinnについて、田中道昭氏
は次のように述べています。
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これまで日本や米国では、中国のアリペイやウィーチャットペ
イのように、アプリを入り口として金融サービス全域の覇権を握
ろうとする既存金融機関側のプレイヤーはいませんでした。日米
のフィンテックはその周辺領域のみにとどまっています。
しかしここにきて、JPモルガンはAPIを通じてオープンプ
ラットフォームを構築しつつ、自社でも新たな金融商品の開発を
進めています。
既存金融機関にとって、顧客に合わせて魅力的な金融商品を創
造するのは、得意とするところです。JPモルガンはFinnを
起点に、いずれは株式や投資信託にも手を広げることになると予
想されます。アリパパは、アリペイユーザー向けに新しい投資商
品を開発しましたが、JPモルガンにも同じことができるはずで
す。 ──田中道昭著
『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
次世代金融シナリオ』/日経BP
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JPモルガン・チェースついては、もうひとつふれておくべき
ことがあります。それは、独自の仮想通貨「JPMコイン」の発
行計画です。計画発表は、2019年2月でしたが、2020年
10月に正式にスタートしたようです。
JPMコインについて、JPモルガンの子会社オニキスで、一
連のアプリケーションの責任者を務めるウマル・ファルーク氏は
次のように述べています。
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JPMコインは、今のところ、JPモルガンの企業顧客が、米
ドル預金口座をブロックチェーン上に持っているようなものであ
る。企業顧客間のお金の移動は24時間365日、いつでも可能
となる。最近では暗号資産の強気市場にかすんでいるが、JPM
コインは、400の銀行が参加する決済ネットワークである「リ
ンク」と連動し、JPモルガンの顧客ベース全体で(レポ取引に
おける)証券決済などを支えている。
これは始まりに過ぎない。ドルにペッグされたステーブルコイ
ン、ひいては暗号資産全般を真似て、それらと競い合うことは、
最初からJPMコインの狙いではなかった(ちなみにJPMコイ
ンは、個人投資家には利用できず、暗号資産取引所での取引もで
きない) https://bit.ly/3qQ0BX5
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このコメントからわかることは、ビットコインのデメリットで
あるボラティリティ(価格変動)の高さを米ドルとリンクさせる
ことで緩和させ、新しい決済手段として、確固たる地位を確保す
るのが、狙いであるということです。
「ブランド力・プラス・テクノロジー」──JPモルガン・
チェースの一大戦略であるといえます。
──[デジタル社会論U/052]
≪画像および関連情報≫
●JPモルガンのキーマンを直撃、成功する銀行・しない銀行
の「決定的な違い」
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オープンバンキングは、2つの次元から見ることが重要で
す。1つ目の次元は「信頼に関わるフレームワーク」です。
このフレームワークは規制を作る人々が現在注力しているも
のです。彼らは適切なビジネスの運用を目指しています。
2つ目の次元は、顧客にとっての「バリュープロポジショ
ン」、つまり「顧客に提供する価値」です。信頼に関わるフ
レームワークはムラがあります。よりアグレッシブに規制を
進めようとする国もあれば、そうではない国もあります。規
制のグローバルスタンダードが生まれるまでにまだ時間がか
かるでしょう。
アグレッシブな例は、ヨーロッパ、イギリス、カナダや一
部のアジアの国々です。こうした国々では、どのような規制
が適切かを探っている段階です。米国の状況は非常に複雑で
す。このように規制の進み方はムラがあります。オーストラ
リアも規制を探り探りで進めています。
バリュープロポジションの観点では、すでにいろんなとこ
ろでイノベーションが起きています。米国ではオープンバン
キングが始まって15年あるいは20年ぐらい経ちます。こ
の間に銀行口座を全体的に見渡すためのアプリも作られ、ピ
アツーピアの送金を実現するためのアプリもできました。ア
ジアではB2Cのイノベーションがたくさん起きています。
https://bit.ly/3ymlrQf
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ジェームズ・ダイモンCEO