テンセントについては知らない日本人は多いです。テンセントと
は、どのような企業なのでしょうか。
テンセントを一言でいうと、次のように表現することができる
のではないかと思います。
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任天堂のように、ゲームを提供しながら、LINEやフェイス
ブックに近いサービスを手がける中国企業であり、そのメインは
SNS「ウィーチャット/微信」である。
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テンセントの創業は、1998年、アリババ創業の1年前であ
り、創業者は、現会長・CEOであるポニー・マー氏です。こち
らもマー氏です。本社は深せん市に置き、従業員数は2017年
12月末で約4万4000人です。1998年といえばインター
ネットの利用が開始されたばかりの頃であり、1999年2月に
は、IM(インターネットメッセージング)サービス「QQ」を
リリースし、中国におけるIMサービスのスタンダードとなって
います。2004年に香港証券取引所に上場し、2019年3月
11日現在の時価総額は約4300億ドル(同時期のアリババの
時価総額は約4676億ドル)です。
テンセントは、コミュニケーションアプリがメインですが、こ
れには次の3つがあり、月間アクティブユーザー数はそれぞれ次
の通りです。
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@QQ 8億3000万人
AQゾーン 5億4800万人
Bウィーチャット 10億5700万人
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実際に使っていないので、詳細はわかりませんが、QQはIM
──インスタントメッセンジャーとして、1999年からサービ
スを開始しています。インスタントメッセンジャーとは、接続中
のユーザーを確認し、ユーザー間でリアルタイムに短いメッセー
ジ(インスタントメッセンジャー)をやりとりすることができる
SNSです。しかし、当時スマホはまだなく、主としてPCから
ユーザーは使っていたのです。
ウィーチャットは2011年からサービスを開始していますが
この年になると、スマホからインターネットにスムーズに接続す
ることができるようになっています。そのため、多くのQQのユ
ーザーはQQのアカウントを残したまま、ウィーチャットに移行
し、日常で使うようになっていったのです。
QQもウィーチャットも、メッセージの送受信、団体チャット
や音声通話、ビデオ通話などが可能です。普段の生活や仕事で、
メッセージや、伝言、電話の代わりに、インターネットがあれば
どこでも使えるので重宝がられています。また、学校での先生と
学生間の交流や、先生と保護者の間のやり取りやアンケート調査
などにも活用されています。そういう意味で、ウィーチャットと
LINEはとてもよく似たSNSといえます。
なお、ウィーチャットには「モーメンツ」という機能があり、
写真やテキスト、動画、気になるウェブサイト、音楽の共有など
が手軽に利用できます。中国人は毎日何度もモーメンツをチェッ
クします。
Qゾーンというのは、QQにある「QQ空間」というSNSの
ことです。そこでテキストや写真などの投稿や、ブログ、アルバ
ム作り、ゲームなどさまざまなことが、このQQ空間内でできる
のです。Qゾーンは中国のブログのようなものです。
もうひとつ、ツイッターに当たるものとして「新浪微博」──
シンラン・ウェイボー(単にウエイボーと称する)があります。
これは、テンセントではなく、新浪公司が運営しています。20
09年8月14日にサービスを開始しています。
それでは、テンセントは、そもそもどのような企業なのでしょ
うか。それは、テンセントの収益構造を見ればわかります。
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2017年売上高 構成比
VAS 22892 65%
オンライン広告 6012 17%
ペイメント、クラウド他 6443 18%
単位百万米ドル
──田中道昭著
『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
次世代金融シナリオ』/日経BP
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VASというのは何でしょうか。
コミュニケーションプラットフォームにおいて、もっとも重要
なものは、MAU(月間アクティブユーザー数)です。1ヵ月に
1度以上利用するユーザー数のことです。これは、そのプラット
フォームの「賑わい」をあらわしています。MAUが多ければ多
いほど賑わっており、これを利用してマネタイズ(課金)するの
です。テンセントではこれをVAS(Value Added Service) と
呼んでいます。
具体的には2004年リリースの自社での最初のカジュアルゲ
ーム「QQ堂」、2006年には「QQ音速」、2007年には
「QQ三国」と次々とリリースしたオンラインゲームのことを指
します。これらが全体の65%を占めています。続いて売上高の
17%を占めるのがオンライン広告収入、同じく18%を占める
ペイメント関連事業・その他からの収入です。
テンセントのミッションとしては、「インターネットの付加価
値サービスによって生活のクオリティを向上させる」ことであり
ビジョンとしては「最も尊敬されるインターネット企業であるこ
と」です。テンセントという企業のイメージが、少しは明らかに
なったでしょうか。 ──[デジタル社会論U/042]
≪画像および関連情報≫
●テンセント「微信」が就職の在り方に4つの
新常態をもたらす
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中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)は20
21年4月22日、中国信息通信研究院(中国信通院)と共
同で「数字化就業新職業新崗位報告(日本語直訳:デジタル
化就職新職業新役職リポート)」を発表した。テンセントが
運営するチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」が形成
するエコシステムは20年に前年比24・4%増となる36
84万の就職機会を創出。ウィーチャットなどのデジタル技
術が職場の働き方を変え、就職の在り方にも大きな変化をも
たらした。4つの興味深い新常態を観察することができる。
ウィーチャットなどのデジタル技術が就職の在り方にもた
らした4つの新常態の1つ目は、従来型の職業が、デジタル
技術を活用したい人々に広く就職機会を与えられるようにな
ったことだ。海外からの代理購入やライブコマースの運営、
商品を宣伝するショートムービーを作成して発信する、動画
チャネルの企画・運営など、デジタル技術を用いる新たな業
務が急速に生じている。それに伴い、ライブ販売員や少額融
資者、インターネットマーケター、デジタル化ツールの活用
法を教える講師など、新たな職種が生まれている。就職する
側から見れば門戸が広がった格好だ。ウィーチャットはそう
した新たな職種のニーズに応えるさまざまな機能も提供して
いる。 https://bit.ly/2Uj6T5t
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テンセント