るための手掛かりとなるのは、アマゾンと並ぶ「世界の3大メガ
テック」、中国のアリババとテンセントの戦略について知る必要
があります。
なかでもアリババは、ECサイトをルーツとしながら、物流事
業やリアルショップ、クラウド、宇宙、金融と、あらゆる事業に
進出するエブリシング・カンパニーへと変化し、独自の経済圏を
広げようとしています。アリババは、目標とする経済圏の大きさ
について、次の壮大な目標を掲げています。
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アリババは、米国、中国、欧州、日本に次ぐ世界第5位のア
リババ経済圏を構築する。
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しかし、この目標を掲げたアリババの創業者であるジャック・
マー氏は、アリババの急成長が中国の社会主義を脅かすとして、
国家から事業にブレーキをかけられ、現在苦境に陥っています。
逆にいうと、それだけアリババのやってきたことは、民主主義国
の企業にとって参考になるはずです。
アリババの創業は1999年です。杭州市に本社を置き、従業
員数は2018年3月末で約6万5千人、2014年にはニュー
ヨーク証券取引所に上場しています。2019年3月11日現在
の時価総額は4676億ドルと、世界トップ10に入っているの
です。約20年で、ここまでのレベルに達しているのは凄いこと
です。ちなみに、アマゾンの創業は、1994年7月のことであ
り、アリババの企業運営に関しては、一歩先を行くアマゾンのや
り方も参考になっていたと思われます。
アリババの事業は、次の7つの事業セグメントから、構成され
ています。
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1.コアコマース事業
2.ローカルサービス事業
3.デジタルメディア&エンターテインメント事業
4.クラウドコンピューティング事業
5.マーケティングサービス事業
6.ロジスティクス事業
7.決済&フィナンシャルサービス事業
──田中道昭著
『アマゾン銀行が誕生する日/2025年の
次世代金融シナリオ』/日経BP
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「1」のコアコマース事業については、アリババのルーツとい
えるECサイトの運営です。B2Cの「Tモール(天猫)」、C
2Cの「タオバオ」、そしてB2Bの「アリババドットコム」な
どの国内ホールセール、国際ECサービスの「Tモールグローバ
ル(天猫国際)」、「アリエクスプレス」、「ラザダ」が含まれ
ています。
「2」のローカルサービス事業については、生鮮食品スーパー
「フーマ」、飲食などの評価サービス「コウベイ」、食品デリバ
リーサービス「Ele.me」、位置情報サービス「amap」などです。
「3」のデジタルメディア&エンターテインメント事業として
は、動画配信プラットフォーム「ヨーク」や「トゥドゥ」、ゲー
ムの開発・配信の「アリババゲームズ」などがあります。
「4」のクラウドコンピューティング事業としては、中国最大
の「アリババ・クラウド」があります。これがアリペイをはじめ
アリババグループすべてのサービスコンテンツを支えています。
「5」のマーケティングサービス事業では、データマネジメン
トプラットフォーム「ユニマーケティング」「アリママ」によっ
て、Tモールなどに対して、ビッグデータの蓄積・解析機能が提
供されています。
「6」のロディスティクス事業では、中国国内全地区は24時
間以内、グローバルは72時間以内にデリバリーするという目標
を担っています。
「7」の決済&フィナンシャルサービス事業では、アリペイ決
済などを提供する「アントフィナンシャル」が担っています。
これらのアリババの7事業の収益構造はどうなっているかにつ
いては、次の通りです。
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◎アリババの収益構造/2018年度売上高内訳
コア・コマース ・・・・・・・・・・・・・・ 86%
34120百万米ドル
クラウドコンピューティング ・・・・・・・・・ 5%
2135百万米ドル
デジタルメディア&エンターテインメント ・・・ 8%
3119百万米ドル
イノベーション ・・・・・・・・・・・・・・・ 1%
524百万米ドル
──田中道昭著/日経BPの前掲書より
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収益構造を見ると、コア・コマース事業が86%であり、この
数字から見ると、アリババは現在でもECコマースの会社です。
しかし、デジタルメディア&エンターテインメント事業の伸び率
は、2015年から2018年の間に年平均200%ですし、ク
ラウドコンピューティング事業の売上高もこの同じ期間に伸び率
は年平均170%伸びているのです。クラウドコンピューティン
グの世界シェア順位は、アマゾン、マイクロソフト、IBM、グ
ーグルに続く第5位です。
大雑把にいうと、コアコアコマース事業、ローカルサービス事
業、デジタルメディア&エンターテインメント事業をフロントエ
ンドの事業とすると、その他はそれを支えるバックヤードという
ことになります。 ──[デジタル社会論U/038]
≪画像および関連情報≫
●中国政府がアリババの事業拡大を阻止しようとしている理由
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トランプ米大統領は5日、中国アリババ集団の傘下企業が
提供するスマホ決済アプリ「支付宝(アリペイ)」など中国
アプリに関わる取引を米国内で禁じる大統領令に署名した。
(6日付日経新聞)。
そのアリババだが、中国の規制当局は、アリババ傘下のア
ント・グループが築いた巨大なフィンテック(ITを活用し
た金融サービス)の帝国を事実上解体しようとしていると、
こちらはウォール・ストリート・ジャーナルが報じていた。
日経新聞もこれに関して、アリババ集団や騰訊控股(テン
セント)が金融業にも手を伸ばし、既存の金融システムを脅
かし出したため、事業拡大阻止に動き始めたと報じた。
アリババが2013年6月に販売を開始したオンライン金
融商品「余額宝(ウェイボー)」の顧客が、1億人に達し、
運用資産残高は900億ドル(約9兆1400億円)を超え
た。新たな金融商品の台頭が、国有銀行を揺るがしていると
される。
中国の銀行業界は、4大国有商業銀行による寡占状態にあ
る。アリババのマー会長は2013年に「銀行が変わらない
なら、我々が変えていく」とも述べていた。余額宝とはアリ
ペイで使い切れなかった資金を銀行に戻さずに投資に移され
いわゆるマネー・マーケット・ファンドと呼ばれるもので、
銀行預金より高い利回りで提供されているそうである。
https://bit.ly/2SuklTq
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アリババ創業者/ジャック・マー氏