わかりやすく説明します。先端技術であるAI(人工知能)がど
のように問題を処理するのか、そのメカニズムを知っておいても
損はないと思うからです。全体図を添付ファイルにしてあるので
参考にしてください。
アマゾンエコーに対して、ユーザーが、次のように、話しかけ
たとします。
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「アレクサ!今日の巨人戦の結果を教えて」
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「アレクサ!」と呼びかけることによって、コンピュータのス
イッチが入ります。ここからは、アレクサの仕事です。音声をテ
キストに変換し、文法チェック(形態素解析)を行います。テキ
ストに変換するには、「アマゾン・レックス」の「スピーチ・ツ
ウ・テキスト」(音声からテキスト)という機能を使って行って
います。アマゾン・レックスというのは、音声やテキストを使用
した会話型インターフェイスを構築するためのサービスです。
さて、アレクサは、テキストに変換されたデータを基にして、
ユーザーの意図(インテント)を判断し、スロットに割り当てま
す。スロットとは、ユーザーの要望を得るために必要なデータの
ことです。音声入力は「今日の巨人戦の結果を教えて」ですから
スロットは、「今日」、「巨人軍」、「試合結果」ということに
なります。
アレクサは、これらのスロットのデータを「AWSラムダ」に
渡します。AWSラムダは、クラウド上でプログラムを実行でき
るプログラム実行環境のことです。このAWSラムダで、スポー
ツ結果を集計しているデーターベースにAPIを介してアクセス
し、スロットの割り当てに応じたデータを取得します。その取得
したデータは、AWSラムダで文章に変換され、アレクサに返さ
れます。アレクサは、返されたデータは「テキスト・ツウ・スピ
ーチ」(テキストから音声)機能で音声化し、アマゾン・エコー
に渡すと、次のメッセージが流れます。
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「今日の巨人・阪神戦は、3対2で巨人の勝利です」
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ちなみに、天気や時間、アラーム機能などの簡単なインテント
は、アレクサに標準で用意されています。
ここで注目すべきは、「AWSラムダ」というAWSのテクノ
ロジーが使われていることです。どのようなテクノロジーである
かについて、以下にまとめておきます。
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AWSラムダとは、サーバーレスでプログラムを実行できる環
境を提供するAWSのサービスのことです。通常、プログラムを
開発・実行するためには、サーバーOSやアプリケーションサー
バーソフトウェアを準備し、実行するためにサーバーやインスタ
ンスを起動し続ける必要があります。こうした環境がすべてあら
かじめ準備されているのが、AWSラムダです。
https://bit.ly/3g4uw8Z
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音声認識サービスは、「アマゾン・アレクサ」だけではなく、
マイクロソフトの「コルテナ」やアップルの「シリ」、グーグル
の「グーグル・アシスタント」があります。アレクサは、それら
と、どう違うのでしょうか。
アレクサが、他の音声認識サービスと大きく異なる点は、その
プラットフォームが公開されていることです。昨日のEJで述べ
たように、アレクサには、「スキル」(アプリのようなもの)を
「スキルストア」から追加することができます。そのスキルは、
アマゾンだけでなく、サードパーティーも新しいスキルを開発し
アレクサの機能を強化・拡大できます。
その結果、生まれたのが、韓国LGとサムスン電子の「スマー
ト冷蔵庫」です。どのような冷蔵庫なのでしょうか。
アレクサを通してのレシピの検索、音楽の再生、アマゾンへの
商品の注文などができます。冷蔵庫内の品物を事前に登録してお
けば、賞味期限の管理や、品物がなくなる前に自動的に注文もで
きます。その他、ウーバーなどへの配車サービスのリクエストや
キッチンタイマーのセットなど、6000以上用意されていると
いわれるスキルを使って、キッチンにおける家事やタスクの管理
が可能になるといわれています。
このように、キャッシュレス4・0では、顔認証決済、音声認
識決済ができることを指摘しましたが、IоT決済とは、具体的
に何を意味しているのでしょうか。
モノインターネットといわれるIоTの普及とインターネット
に接続されているデバイスの進化に伴い、デバイス同士が相互に
つながるM2M(マシン・ツウ・マシン)決済を実現するのがI
оT決済です。多くのデバイスをインターネットに接続すること
で、消費者は新しい買い物体験を実感することができます。
IоTの普及により、インターネットに接続されたテレビや冷
蔵庫など家電製品のほか、ウェアラブル機器などさまざまなデバ
イスで、IоT決済が可能になっています。まだまだあります。
街中にある駐車場のパーキングメーターや、種々の自動販売機も
インターネットとつながり、IоT決済が拡大しています。
顔認証決済、音声認証決済、そしてIоT決済、それらの技術
を集約したものが無人レジコンビニ「アマゾンゴー」です。駅の
自動改札機を通過するように入店し、陳列棚から必要な商品を買
い物袋に入れ、店を出るだけです。店を出ると自動的に決済され
レシートがスマホに届く仕組みになっています。
本人コードと顔認証で店内に入り、カメラやセンサーによって
店内の様子は逐一観察され、それらのデータは商品陳列の改善策
などにも活用されます。これが、キャッシュレス4・0の世界で
す。 ──[デジタル社会論U/031]
≪画像および関連情報≫
●「アマゾンゴー」はショッピングの革命となるか
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アマゾンはしばしば、米国で大きなトレンドを起こすニュ
ースを発表する。2016年12月5日に同社が明らかにし
た「アマゾンゴー」は、テクノロジー系に限らず、米国の主
要メディアがこぞって取り上げて話題となった。ちなみに、
2013年12月に発表して話題をさらったのは、ドローン
で30分以内に商品を届ける「プライム・エア」だった。
ユーチューブのオフィシャルビデオが説明するアマゾン・
ゴーでのでの新しいショッピング体験はこうだ。顧客はスマ
ートフォンに2次元コードを表示させて、ゲートに読み込ま
せて入店する。あとは、好みの商品を選んで、手に取ったり
カバンに入れる。必要なものを選び終わったら、そのまま店
を出る。以上だ。
ビデオを見るかぎり、商品を手に取った段階で「カートに
入った状態」と認識される。もし商品を戻したら、きちんと
カートから取り出される。そして店を出ればチェックアウト
と見なされ、アマゾンアカウントで決済される。
筆者は米国カリフォルニア州に住んでいる。米国で暮らし
ていると、スーパーマーケットやドラッグストアでの行列は
つきものだ。商品のスキャンと支払いを自分で行うセルフレ
ジもあるが、セルフレジのラインこそ、行列が長かったりす
る。そうしたストレスの共通体験を取り払ってくれる可能性
を見せてくれただけで、話題性が高いのだ。
https://bit.ly/3fLm9jF
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●図表の出典:https://bit.ly/3wRyoRn
アマゾン・アレクサのシステム