2021年05月31日

●「アマゾンMGM買収での利害得失」(第5499号)

 アマゾンのCEO、ジェフ・ペゾス氏の退任日が、7月5日に
決定しました。5月27日付、日本経済新聞/夕刊はこのニュー
スを次のように伝えています。
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◎アマゾンCEO/ペゾス氏退任7月5日
 【シリコンバレー=白石武志】米アマゾン・ドットコムは26
日、創業者であるジェフ・ベソス最高経営責任者(CEO)の退
任日を、同社の設立記念日にあたる7月5日にすると明らかにし
た。2月に、次期CEOに指名されたクラウド部門トップのアン
ディ・ジャシー氏が同日付でCEOに昇格する。
      ──2021年5月27日付、日本経済新聞/夕刊
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 その次の日のことです。2021年5月28日、アマゾンが米
老舗映画会社メトロ・ゴールデン・メイヤー(MGM)を買収し
たという発表があったのです。その買収額は、債務を含む84億
5000万ドル(約9200億円)という巨額です。
 MGMは、「12人の怒れる男」「ロッキー」「ロボコップ」
「クリード」「羊たちの沈黙」など、4000本以上の映画作品
(カタログ)を所有しているほか、「ハウス・オブ・グッチ」「ノ
ータイム・トゥ・ダイ」「リスペクト」「アダムス・ファミリー
2」、ポール・トーマス・アンダーソン監督のタイトル未定作品
などの作品を予定しています。MGMのカタログには、ファーゴ
など、17000本以上のテレビ番組も含まれます。
 なぜ、アマゾンは、MGMを買収したのかというと、この買収
によって、MGMの映画やドラマなどの配信コンテンツを拡充し
アマゾンの有料会員サービス「プライム」の基盤を固めるのが目
的であることは明らかです。
 ネット動画配信サービスの市場は、コロナ禍による巣ごもりの
影響があって、米国だけでも2020年に34%に伸びており、
210億ドルを上回る規模に拡大しています。しかし、消費者が
動画配信サービスに支払う限度額は、月に50ドル程度といわれ
ているので、そこには限られたパイを奪い合う激しい競争が起き
ているのです。そのカギを担うのは、会員数です。
 その動画配信の主力4社の会員数の概要を比較すると、次のよ
うになります。主力4社は次の通り。アマゾンはMGMの会員を
含んだ数字であり、ワーナーメディアは、この5月、ディスカバ
リーと経営統合しています。
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    ◎会員数比較
     A ・・・・ 2億0000万人
     B ・・・・ 2億0764万人
     C ・・・・ 1億0360万人
     D ・・・・   5900万人
             アマゾン+MGM ・・・・ A
             ネットフリックス ・・・・ B
           ウォルト・ディズニー ・・・・ C
     ワーナーメディア+ディスカバリー ・・・・ D
         ──2021年5月28日付、日本経済新聞
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 2020年という年は、コロナ禍がはじまった年であり、緊急
事態宣言が発出され、ステイホームが増加し、映像ソフト業界は
大きな影響を受けたのです。日本映像ソフト協会(JVA)は、
2020年5月11日に「映像ソフト市場規模及びユーザー動向
調査」の結果を発表しています。
 この調査の結果によると、市場全体としては、6874億円、
前年比121・9%と前年を大きく上回ったのです。しかし、そ
の内容を見ると、そこに大きな変化がみられます。それは、レン
タル市場が大きく減少し、定額見放題(SVOD)が大幅増加し
ているのです。
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    セル市場 ・・・ 1860億円(前年比 94%)
  レンタル市場 ・・・ 1041億円(前年比 83%)
 定額見放題市場 ・・・ 3973億円(前年比165%)
                  https://bit.ly/3i36LR9
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 その躍進している定額見放題市場を調べてみると、次のように
なっています。
─────────────────────────────
   ◎定額見放題
    アマゾン・プライム ・・・ 58・8%
     ネットフリックス ・・・ 21・8%
         フールー ・・・ 13・9%
   ◎デジタルレンタル
    アマゾン・プライム ・・・ 49・9%
     ネットフリックス ・・・ 10・8%
         フールー ・・・ 10・1%
   ◎セル(購入)
    アマゾン・プライム ・・・ 51・4%
     ネットフリックス ・・・ 13・4%
         フールー ・・・  7・9%
                  https://bit.ly/3i36LR9
─────────────────────────────
 ここに見るように、どの分野においても、アマゾン・プライム
が圧倒的です。これは日本の傾向ですが、世界でも同様の傾向が
みられるものと考えられます。2021年は、アマゾンは、MG
Mを買収し、MGMの持つ質の高い膨大なコンテンツを入手して
いるので、その地位は盤石なものとなりつつあります。ジェフ・
ペゾスCEOは「MGMのスタジオが持つ知的財産を21世紀ら
しく再考・発展させる」と抱負を述べています。
             ──[デジタル社会論U/027]

≪画像および関連情報≫
 ●MGM買収のアマゾン、プライムのコンテンツ費用は
  年間1兆2000億円
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   アマゾンは5月26日、映画スタジオのMGMを84億5
  000万ドル(約9200億円)で買収することに合意した
  と発表した。ストリーミング業界で、ネットフリックスや、
  ディズニー、ワーナーメディアやディスカバリーらと競合す
  るアマゾンは、ハリウッドの映画業界に最大の進出を果たし
  た。今回の買収により、アマゾンは、MGMが保有するハリ
  ウッド映画の膨大なカタログにアクセス可能になり、そこに
  は「風と共に去りぬ」や「オズの魔法使い」「雨に唄えば」
  「ロッキー」「羊たちの沈黙」「ピンクパンサー」などが含
  まれている。
   MGMはまた、ジェームズ・ボンドの「007シリーズ」
  の映画化権を、イオン・プロダクションズと共有している。
  しかし、イオン社は、今後も007シリーズの俳優のキャス
  ティング権など、様々なクリエイティブ・コントロールを維
  持し続けるとされている。
   テレビ業界でMGMは、人気ドラマ「ハンドメイズ・テイ
  ル/侍女の物語」や「FAR/ファーゴ」などを制作したス
  タジオと、プレミアムケーブルチャンネルのエピックスを運
  営している。今回の買収は、規制当局の承認を経て完了する
  とされている。         https://bit.ly/2SDtpVI
  ───────────────────────────
MGM.jpg
MGM
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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