2021年05月11日

●「インダストリー4・0とその目的」(第5485号)

 昨日のEJで、せっかく2012年にフェイスブックの傘下に
入ったインスタグラムの2人のトップ、ケヴィン・シストロム氏
とマイク・クリーガー氏が、2018年9月にフェイスブックを
去っていることについて書きましたが、フェイスブックの個人情
報の取り扱いについて意見が合わなかったといわれています。
 私がSNSをはじめたのは早いですが、ある理由から、フェイ
スブックとLINEは利用せず、ブログと情報の発信は、ツイッ
ター、相互連絡はSMSを利用することにしています。
 トッププラットフォーマーといわれるGAFAの信頼度を調査
したデータがあります。調査企業トルーナによれば、多くの消費
者から「最も信用の置けない企業」とみなされているのは、フェ
イスブックです。それにしても40%とは驚きです。2018年
のデータです。
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      フェイスブック ・・・・・ 40%
        ツイッター ・・・・・  8%
         アマゾン ・・・・・  8%
         ウーバー ・・・・・  7%
         グーグル ・・・・・  6%
          リフト ・・・・・  6%
         スナップ ・・・・・  4%
         アップル ・・・・・  4%
      マイクロソフト ・・・・・  2%
     ネットフリックス ・・・・・  1%
          テスラ ・・・・・  1%
                  https://bit.ly/3f4BhY0
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 所有する情報の扱いという点でGAFAにはそれぞれ問題があ
りますが、いずれもインターネットのスケールフリー性を高めて
それを活用し、企業の巨大化に成功した企業です。
 ドイツは、インターネットの登場から現在までの歴史を俯瞰的
に分析し、「われわれはインターネットで敗北した」と認め、イ
ンターネットで起きたことを産業の世界で起こすことを目標とし
て「インダストリー4・0」というものを現在推進しています。
ところで、「インダストリー4・0」とは何でしょうか。
 「インダストリー4・0」とは、現在ドイツの政府や産業界が
主導して推進している製造業の国家戦略プロジェクトのことで、
第4次産業革命といわれています。製造業におけるコンピュータ
活用に重点が置かれており、AIやIоTといったICT技術を
フルに活用し、製造業を改革することを目指しています。
 このようにいうと、工場にはCAD(コンピュータ支援設計)
や製造ロボットなど、既に十分ICT技術が取り入れられている
ではないか、それとどこが違うのかという疑問を持つ人がいるか
もしれません。
 これまで行われてきたことは、コンピュータ導入による部分的
な効率化ですが、インダストリー4・0では、製造プロセスなど
においてデジタル技術がフルに活用され、従来の製造プロセスの
仕組みそのものを再構成し、新しい製造プロセスを生み出すこと
をいうのです。具体的にいうと、別々のシステムで構成されてい
た各プロセスをプラットフォームで連携させることで、製品設計
から設備設計、製造に至るまで、シームレスに行なうことが可能
になるのです。
 それでは、モノインターネットといわれるIоTとはどう違う
のかというと、インダストリー4・0でも、モノとモノとがイン
ターネットで接続されますが、業務プロセス同士も連携し、情報
の交換が可能になります。インダストリー4・0では、このよう
な複合的な連携により、生産の効率化を目指すのです。
 これについて、尾原和啓/島田太郎両氏は、インダストリー4
・0について、次のように解説しています。
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 インダストリー3・0の時代、つまり従来の製造業の世界は、
ピラミッド型の階層構造になっていました。工場内にはワークセ
ンター、作業ステーション、制御装置、そしてフィールド機器と
いった階層があり、情報のやり取りは階層間で行われます。これ
の何が問題かというと、階層を飛び越えてデータを直接見ること
ができない点です。すべての機器が上の階層の端末にぶら下がる
樹形図型のネットワークでした。
 これがインダストリー4・0の世界になると、生産システムの
あらゆるコンポーネントが階層の垣根を超えてつながるようにな
ります。必要なときに必要な機械やセンサーの情報を自由に取れ
るようになるのです。また、一つの工場内だけでなく、他社の生
産設備とも、インターネットを介してつながれるようになるので
す。──島田太郎/尾原和啓著『スケールフリーネットワーク/
        ものづくり日本だからできるDX』/日経BP
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 日本の製造業の場合、構造的問題があります。製造業は、最終
製品を作る大企業と、その下請けの中堅中小企業から成り立って
います。この場合、大企業には、スマートファクトリーのような
技術や高度なノウハウを持っていますが、それらの技術が下請け
の中小企業に還元されているとはいえない状況です。
 この場合、製造プロセス自体を効率化して高度化し、さらにレ
ベルアップするには、中小企業が実施している下請けの作業と大
企業のそれを一体化する必要があります。それに加えて、インダ
ストリー4・0が求めている付加価値の高い製品を大量生産する
には、熟練労働者が保有している技術やノウハウを数値化しなけ
ればなりません。昔はそのようなことは不可能でしたが、現在で
は、AIでそれを実現することが可能なのです。
 そして、このインダストリー4・0でもスケールフリーネット
ワークがそこに深く介在することになるのです。
             ──[デジタル社会論U/013]

≪画像および関連情報≫
 ●世界の“なぜ”を読み解くスケールフリーネットワーク
  ───────────────────────────
   私たちを取り巻く社会にはさまざまな“ネットワーク”が
  存在する。インターネットはもちろん、人間関係や企業の提
  携関係、俳優の相関図、航空機の路線、電力線などが挙げら
  れる。さらに、生物の本質もネットワークだといえる。脳は
  軸索によって接続された神経細胞のネットワークであり、神
  経細胞自体も、生化学反応でつながった分子のネットワーク
  だ。SARSのような感染症、噂や流行も人間関係のネット
  ワークに沿って広がる。複雑に込み入った食物連鎖や生態系
  は種のネットワークといえるだろう。
   こうした複雑なシステムは多種多様でばらばらに見えるが
  実は重要な特性を共有している。それは多数のサイトとつな
  がった比較的少数の「ノード」に支配されていることだ。
   「ハブ」と呼ばれる一部のノードは膨大な数のリンクを持
  つ一方で、ほとんどはごくわずかなノードとしかつながって
  いない。ハブの中には,数百,数千,中には数百万ものリン
  クを持つものもある。こうした点でスケール(縮尺)が存在
  しない(フリー)ように見える。
   スケールフリーネットワークは重要な性質をいくつか持っ
  ている。その1つとして,偶発的な障害に対しては非常に強
  いことが挙げられる。高速道路網のようなランダムネットワ
  ークはノードがいくつか破壊されると、システムは通信不能
  な孤島に寸断されてしまうが、スケールフリーネットワーク
  ではいくつかの経路が残り続ける。https://bit.ly/3uHKWdm
  ───────────────────────────
 ●図の出典/島田太郎/尾原和啓著の前掲書より
インダストリー3・0/インダストリー4・o.jpg
インダストリー3・0/インダストリー4・o
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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