アプリの開発でよく行われる「アジャイル開発」という開発手法
があります。
「アジャイル開発」とは、ごく簡単にいうと、「あらかじめ全
工程にわたる計画を立て、それに基づいて開発を進める」方法で
はなく、開発中に発生する様々な状況の変化に対応しながら開発
を進めていく手法のことをいいます。この場合、あらかじめ全工
程にわたる計画を立て開発を進める開発手法を「ウォーターフォ
ール開発」といいます。
あるゲーム会社の幹部は、アジャイル開発について次のように
述べています。
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不具合対応だけでなく、機能改善のためにも最低でも2週に1
度はアプリをアップデートできる体制を整えている。もし、それ
をやらないと、利用者の不満がビジネス面での損失に直結するか
らである。 ──2021年4月17日付、日本経済新聞
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COCOAは、このようなアジャイル開発ができる業者に発注
すべきであったのですが、厚労省は、元受会社として、パーソル
プロセス&テクノロジー社に発注したのです。この会社は、人材
大手のパーソルホールディグスの子会社であり、同社は、そのよ
うな開発業務に対応できていなかったと考えられます。
厚労省は、「HER−SYS」(ハーシス)というシステムを
開発し、2020年5月から実証実験を重ねていますが、このシ
ステムをパーソルプロセス&テクノロジー社が発注し、開発、保
守・管理を行わせています。
「HER−SYS」とは、どういうシステムでしょうか。
新型コロナウイルス感染症について、医療機関から保健所への
報告、各保健所から自治体への報告はすべてFAXで行われてい
ます。このやり方では、データの再入力が生ずるなど、「報告に
時間がかかり、新規感染者数の迅速な公表ができないこと、集計
ミスのリスクが高いことなどがさんざん指摘されてきたのですが
このシステムによって、新型コロナウイルス感染者などについて
情報把握・管理を一元化できることになります。
もともとCOCOAは、「HER−SYS」の一部として追加
で契約され、COCOAで接触通知のあった人々を「HER−S
YS」に登録し、感染対策に役立てることを最初は想定していた
のです。しかし、政府の検討会で感染者の特定につながるとして
COCOAは、HER−SYSとは切り離して開発されるように
なったのです。
添付ファイルに、2020年5月20日以降の発注プロセスの
図をつけていますが、開発の中心にいるのは、日本マイクロソフ
トです。日経クロステックは、その間の事情について、次のよう
に書いています。
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注意が必要なのは、日本マイクロソフトは接触アプリを公正に
選べる立場になかった点だ。「COVID-19 Radar」には同社社員も
おり、その接触確認アプリは、サーバーの稼働環境に「アジュー
ル」を使い、グーグルのアンドロイドとアップルのiOSで共通
に稼働するコードを開発するツールには、同社の「ザマリン」を
使っているなど関係が深かった。厚労省は当時、こうしたITベ
ンダー側の事情も知る立場にあったとみられる。事前に日本マイ
クロソフトなどと調達方針について話し合いや調整があった可能
性もある。 https://s.nikkei.com/2QjyMZt
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上記記述の「アジュール」とは、ウインドウズなどの開発・販
売を行っているマイクロソフト社が提供するクラウド・サービス
のことです。
しかし、日本マイクロソフトは、厚労省とのメインの契約主体
ではないのです。それでは、図にある、パーソルP&Tやフィク
サー、エムティーアイとマイクロソフトは、どういう関係にある
のでしょうか。それにCOCOAの原型として採用されたエンジ
ニア集団(COVID-19 Radar Japan)はどうなったのでしょうか。
これについて、日経クロステックは次のように書いています。
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パーソルP&Tやフィクサー、エムティーアイは、いずれも日
本マイクロソフトのクラウドサービス「アジュール」の有力な開
発パートナーでもある。各社は厚労省の選考に勝ち残った「日本
マイクロソフトの呼びかけでプロジェクトに参加した」(パーソ
ルP&TのDXソリューション総括部の責任者)
さらに、現状では調達方法が最善だったかを外部から検証する
ことが難しくなっている。厚労省が20年6月19日に、COC
OAの最初のバージョンをリリースした後、COVID-19 Radarの中
心メンバーは接触確認アプリの開発から離れることを表明し、6
月末には、当時の調達に関わった厚労省の担当者も異動したから
である。 https://s.nikkei.com/3mZ59bO
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EJとしては、あちこちからCOCOA開発について情報を集
めて検証しようとしたものの、あいまいのまま、終わらざるを得
ない状況です。4億円近くの予算を投じ、人口の6割近くに普及
すれば、ロックダウンを避けることが可能になる効果を期待でき
るとして、鳴り物入りで登場したCOCOAであるが、その信頼
は失われ、普及率はいまだ人口の2割にとどまったままです。
いかに日本がデジタル技術に弱いとはいえ、なぜ、この程度の
ことを成功させられないのでしょうか。厚労省は、今後内閣官房
IT総合戦略室と協力しながら、COCOAの運用を担っていく
としていますが、一度大きく失った信用を取り込むのは、容易で
はないと思います。ちなみにこの件で責任をとったのは、厚労省
の事務次官と健康局長の2人です。4億円、あまりにも、もった
いない投資です。 ──[デジタル社会論U/003]
≪画像および関連情報≫
●COCOAの不具合検証、「正常に作動するようお手伝いし
たい」/平井デジタル相
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平井大臣は厚労省担当の政府CIO補佐官から不具合に関
するヒアリングを受けたことを明らかにした上で、「COC
OAが正常に作動するようなお手伝いをしたい。厚労省から
検証作業に関する詳細をあまり聞いていないが、検証には、
(IT室の)政府CIO補佐官が協力することになるのでは
ないか」との見解を示した。
COCOAを巡っては2月3日、新型コロナウイルス陽性
者と接触したユーザーへの通知が送られない不具合がアンド
ロイド版アプリで見つかった。2020年9月28日付で行
われたアプリのアップデートが原因という。
こうしたことを受け、厚生労働省は2月中旬までにアプリ
を再リリースできるよう省内で検証に当たっている。現在、
原因究明や今後、必要な対応などを検証しているといい、同
省は「不具合の解消に向けて全力を挙げる」としている。
ただ、アプリ改修にはデジタル分野の専門知識を持った職
員が必要なことから「IT室と協力する必要がある」とも話
している。会見では、報道陣からiOS版にも不具合がある
のではないかとの質問が飛んだ。平井大臣は「(障害の)可
能性は十分あり得るだろう」との認識を示し、「そうした可
能性も含めて見ていく」とコメントした。
https://bit.ly/32tBDBx
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COCOAの発注体制


