2021年04月14日

●「3年後に米国から中国企業が消滅」(第5470号)

 2021年4月11日付の日本経済新聞に中国の配車アプリの
最大手「滴滴出行(ディディ)」が米国に上場する手続きに入っ
たとのニュースが出ています。「滴滴出行」にはアップルなどの
米企業が出資しています。
 米金融界には、高成長が期待できる中国企業への投資意欲が強
いのです。それを受けて、中国のスタートアップ企業の米国上場
の勢いは激しさを増しています。上記の日本経済新聞は次のよう
に書いています。
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 中国企業の米国上場の勢いは続いている。中国のメディアによ
ると、2020年は、中国のスタートアップ34社が、米国で上
場、21年1〜3月には20社が上場した。さらに20社近くが
SEC(米証券取引委員会)と米国の上場の準備を始めている。
30社以上が米国上場を検討しているもようだ。中国の金融機関
幹部は「米国の投資家が高成長を期待できる中国のスタートアッ
プに多く出資しており、米国市場で資金回収を狙っている」と指
摘する。     ──2021年4月11日付の日本経済新聞
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 しかし、トランプ前政権は、大統領選に敗れることがわかって
いながら、2020年12月18日、トランプ大統領は「外国企
業説明責任法案」に署名しています。この法案は、2020年5
月に上院で可決、12月2日に下院で可決しています。
 この法案について、経済評論家の渡辺哲也氏は、次のように述
べています。
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 「外国企業説明責任法」では、外国企業は3年間連続でアメリ
カの監査を受け、外国政府の支配下にないことを証明しなければ
上場廃止になることが定められている。もちろんアメリカ政府が
指定した軍の支配下にあると認定された企業は、この監査に対応
できない。つまり3年間の猶予期間を経て中国共産党系、中国軍
系の企業にアメリカの株式市場での上場廃止処置がとられると考
える。これらの企業は外貨を市場から入手できなくなるというこ
とだ。3年間の猶予期間を許さない状況も生まれている。日経平
均株価やダウ平均などは「指数」と呼ばれ、株式には平均以外の
さまざまな指数(インデックス)がある。2020年12月4日
には、ロンドン証券取引所で金融商品指数を算出しているFTS
Eラッセルが、中国監視カメラ大手のハイクビジョンなど、アメ
リカから中国軍の支配化企業と認定された8社を除外した。
                      ──渡辺哲也著
        『2030年「シン・世界」大全』/徳間書店
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 なぜ、中国のスタートアップ企業は米国に続々と上場しようと
するのでしょうか。
 それは、何といっても米国の中核技術は最先端であり、優れて
いるからです。そのため、技術の輸入や共同開発を組む相手とし
ては、米国がベストなのです。中国は独自技術をもっているわけ
ではなく、第3国から借りてきた技術を応用して、最先端に焼き
直しているだけです。したがって、その土台の部分の技術や部材
の供給を停止されると、それ以上大きく発展させることができな
くなるのです。それに米国で上場すれば、何といっても、ドルの
調達が容易になります。したがって、中国としては、少しでも多
くの企業を米国で上場させたいのです。
 しかし、「外国企業説明責任法」が厳格に適用されると、中国
企業は、3年も経てば米国からすべて消えてしまうことになりま
す。すでにそういう企業が続々と出てきています。
 このように米国から追い出された中国企業は、香港や中国市場
で重複上場することになりますが、中国国内では人民元しか調達
できず、外貨、とくにドルの獲得は不可能になります。
 中国がここまで米国への上場を果たそうとするまで力を得たの
は、何といっても、オバマ政権時代の中国に対する緩い対応にあ
ります。このことについて、経済評論家の渡辺哲也氏は次のよう
に述べています。
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 中国はオバマ政権の8年間、アメリカによる融和策を一方的に
利用し続けた。軍事利用をしないと明言しながら時間稼ぎをして
結果的に軍事基地を完成させた南シナ海の人工島問題がその典型
だ。十分な信用があり、額面価額どおりの価値を広く認められ、
国際市場で他国の通貨と容易に交換が可能な通貨は「ハードカレ
ンシー」と呼ばれる。IMFの特別引出権SDRに入ることは、
ハードカレンシーの証明だ。しかし中国はオバマ政権時代の20
16年10月に、人民元をSDR入りさせた。その代わりに為替
と資本移動の自由化を確約したのだが、これもいまだに守ってい
ない。この現実によって、トランプ政権はチャイナデカップリン
グを選択し、議会もそれを後押ししてきたのだ。そしてワシント
ンの官僚も議会のブレインたちも中国の欺瞞を知悉している。そ
のことはバイデン政権になっても変わらない。
                ──渡辺哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
 このように米中が激突しているときに、米中双方にとって重要
な存在になりうるのは日本です。日本には半導体をはじめ、多く
の原産のテクノロジーを持つアジアの民主主義国です。もともと
通信やハイテクは日本の得意とする分野です。しかも、米国とは
同盟国であり、世界第3位の経済大国でもあります。
 中国にしても米国がダメとなったら、そういう面で頼れるのは
日本です。これまでも、米中の対立がひどくなったら、中国は日
本に対してよい関係を保とうとします。しかし、それでいて、日
本が一番嫌がる尖閣諸島への圧力をやめないのは、中国は日本の
ことがよくわかっていないのです。日本は、そういう絶好のポジ
ションにいることを十分自覚するべきです。
              ──[デジタル社会論/070]

≪画像および関連情報≫
 ●米上場「中国企業」の監督を強化する法律が成立
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   アメリカのドナルド・トランプ大統領は12月18日、ア
  メリカの証券市場に上場する外国企業の監督強化を目的にし
  た「外国企業説明責任法」の法案に署名した。これにより、
  主に中国企業を標的にする同法が最初の法案提出から20カ
  月を経てついに成立した。
   外国企業説明責任法は、アメリカに上場する外国企業にア
  メリカの会計監査基準の厳守を求めている。具体的には、そ
  の企業が外国政府に所有ないし支配されていないことを証明
  できない場合や、その企業の監査法人が公開会社会計監査委
  員会(PCAOB、アメリカの上場企業の監査法人を監督す
  る機関)の検査を3年連続で受け入れなかった場合、株式の
  取引が禁止されて上場廃止となる。
   同法は共和党のジョン・ケネディ上院議員と民主党のクリ
  ス・バン・ホーレン上院議員を中心とする超党派の議員団に
  より起草され、2020年5月20日に上院が全会一致で可
  決。12月2日には下院でも全会一致で可決された後、トラ
  ンプ大統領に提出されていた。目下、ニューヨーク証券取引
  所やナスダックには230社を超える中国企業がADR(ア
  メリカ預託証券)を上場している。その時価総額は1兆ドル
  (約103兆円)を上回り、アメリカ株式市場の時価総額全
  体の約3%を占める。      https://bit.ly/326icyA
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posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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