します。
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◎第1のシナリオ ・・・ 9%
中国の積極的関与VS米国積極的関与
◎第2のシナリオ ・・・ 21%
中国の積極的関与VS米国の消極的関与/米国の傍観
◎第3のシナリオ ・・・ 21%
中国の消極的関与VS米国の積極的関与
→ ◎第4のシナリオ ・・・ 42%
中国の消極的関与VS米国の消極的関与
→ ◎第5のシナリオ ・・・ 7%
中国の消極的関与VS米国の傍観
──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編
『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』/実業之日本社
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第1のシナリオから第3のシナリオまでの説明は、既に終わっ
ています。第4のシナリオから始めます。
第4のシナリオは「中国の消極的関与VS米国の消極的関与」
のシナリオです。
結論からいうと、このシナリオは実現の可能性が一番高いとい
えます。その発生確率は42%であり、それを示しています。も
ともと米国は通貨のデジタル化には消極的であるので、このシナ
リオでは、中国が積極姿勢から、何らかの事情で、消極姿勢に転
じたということになります。その理由は何でしょうか。
それは、やはり、資本の自由化が困難であるということになり
ます。通貨覇権を握るためには、資本の自由化が不可欠ですが、
その実現には、政治体制の転換が必要になるからです。
なぜ、中国は資本の自由化ができないのでしょうか。
トランプ前米大統領は、中国を「為替操作国」に指定しました
が、高橋洋一嘉悦大学教授は、これに関連して、中国の資本の自
由化について、次のように述べています。
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中国で自由な資本移動を許すことは、国内の土地を外国資本が
買うことを容認することになり、土地の私有化を許すことにもつ
ながる。中国共産党にとっては許容できないことであり、そうし
た背景があるので、中国は必然的に、@自由な資本移動を否定し
A固定相場制と、B独立した金融政策になる。
米国はこうした中国を「為替操作国」というレッテルを貼り、
事実上、固定相場制を放棄せよと求めるわけだ。これは中国に自
由主義経済体制の旧西側諸国と同じ先進国タイプになれと言うの
に等しい。中国が「為替操作国」の認定から逃れたければ、為替
の自由化、資本取引の自由化を進めよというわけだが、為替の自
由化と資本移動の自由化は、中国共産党による一党独裁体制の崩
壊を迫ることと同義だ。今回の措置は、ファーウェイ制裁のよう
に、米国市場から中国企業を締め出すための措置だと見る向きも
あるが、筆者にはそれにとどまらない深謀遠慮があるように思わ
れる。 https://bit.ly/2R8LIBm
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高橋教授の解説で明らかであるように、中国が政治体制を大幅
変更することは、不可能なことです。そうであれば、世界第2位
の経済大国に甘んずるしかないことになります。
第5のシナリオは「中国の消極的関与VS米国の傍観」のシナ
リオです。
このシナリオの想定は、世界中が新型コロナウイルス対策のヘ
リコプターマネーによって、法定通貨の価値の凋落が起こり、非
中央集権的なデジタル資産がその主軸を占めるというものです。
法定通貨が価値を落とし、金が価値を生むというように、デジタ
ル通貨を位置づけるというものです。
中国問題グローバル研究所の白井一成理事は、初期のビットコ
イン信奉者を例にひき、次のように述べています。
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初期のビットコイン信奉者は、法定通貨の膨張に危機感を募ら
せ、ビットコインをデジタルゴールドと位置づけることで、イン
フレのない貨幣世界の建設を夢見てきた。まさに彼らが想定した
未来の到来である。しかし、その想定された世界よりも、実際に
は、さらにデジタル化が加速し、非中央集権のサービスや資産も
拡大しよう。インフレが進行し、ビットコインや美術品などの希
少な資産の価格も上昇するだろう。デジタル化と法定通貨の相対
的な地位低下によって、国家の衰退も顕著となろう。
──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編前掲書
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白井一成氏によるシナリオプランニングにおいて書かれている
「中国の積極化」とは、中国の政治体制の変化があるか、規制が
解放されることを前提にしています。しかし、現在の中国の状況
を考えると、そのようなことが最も実現しにくい可能性であると
いうことができます。
シナリオプランニングは、その最も起こりえないと思われる可
能性をも含めて考えるプランニングです。そういう起きる可能性
が小さいことが、もし、起きたこと場合への対処も、隣国である
日本としては考えておく必要があります。
もし、中国にそのような体制変化が起きたとすると、そこに巨
大な市場を持つ比較的民主主義な国が出現することになります。
これが日本に与える影響は計り知れないものがあります。この場
合、日本の東アジアでの民主主義国というポジションが相対的に
低下し、日本が埋没してしまうことになります。そのとき、日本
はどう対処すべきでしょうか。
このように、白井氏による5つのシナリオをベースとして、日
本の立ち位置、戦略について、改めて検討する必要があると思い
ます。 ──[デジタル社会論/067]
≪画像および関連情報≫
●中国、米中経済戦争で遠のく資本自由化
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中国は、できるだけ早期に資本自由化をしようと望んでい
る。中国が今後、さらなる発展を遂げていくためには、資本
自由化によって海外から多くの資金を集めることが不可欠だ
からだ。ところが、少しでも窓を開けようとすると、海外の
投機資金が入り込んできて経済を不安定にさせてしまう。こ
れまでは貿易収支の大幅黒字が続いたのでなんとか持ちこた
えてきたが、米中経済戦争の激化によってそれも難しくなっ
てきた。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)
李克強首相は2013年に、主宰する国務院(内閣)常務
会議で、各分野の改革を積極的に進めていくようにとの指示
を出している。中でも注目されたのは、かねて懸案となって
いた資本自由化について具体的な実施案の検討を指示したこ
とだった。これを受けて、資本自由化に向けての準備的な措
置がいくつか打ち出されたりした。
ところが、15年の人民元切り下げをきっかけに、海外へ
の資金流出が激化した。外貨準備はその後の2年間で2割以
上も減ってしまった。資金流出を防ぐために、外貨リスク準
備金の導入、一方向の為替変動を抑制するシステムの導入、
資金流出規制の強化など、資本自由化に逆行する規制策を導
入せざるを得なかった。 https://bit.ly/31TmSrd
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米中対決