2021年04月08日

●「デジタルドル発行の実現の可能性」(第5466号)

 中国問題グローバル研究所理事、白井一成氏のシナリオプラン
ニングによる「米中対決の5つのシナリオ」について検討するこ
とにします。5つのシナリオとは次の通りです。
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   ◎第1のシナリオ ・・・  9%
    中国の積極的関与VS米国積極的関与
   ◎第2のシナリオ ・・・ 21%
    中国の積極的関与VS米国の消極的関与/米国の傍観
   ◎第3のシナリオ ・・・ 21%
    中国の消極的関与VS米国の積極的関与
   ◎第4のシナリオ ・・・ 42%
    中国の消極的関与VS米国の消極的関与
   ◎第5のシナリオ ・・・  7%
    中国の消極的関与VS米国の傍観
     ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編
 『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』/実業之日本社
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 第1のシナリオは、「中国の積極的関与VS米国積極的関与」
のシナリオです。
 米国と中国がデジタル覇権を目指してガチンコで戦うシナリオ
ですが、実際にそれが起きる可能性は低い(9%)という考え方
です。もし、ガチンコでやれば、ドル覇権国(ドル基軸通貨国)
の米国が勝つと思われます。それに、ガチンコでやるには、中国
は資本開放をする必要があります。これについて、白井一成氏は
次のように述べています。
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 中国が資本移動を自由化するためには、政治体制の変更を伴う
可能性が高い。平時における体制変更は容易でない。また体制変
更が資本解放に直結するわけでもない。資本解放のためには世界
銀行が求めたような市場経済化を達成し、中国が潜在成長率(資
本、労働力、生産性という3つの生産要素を最大限に活用できた
場合のGDP成長率)を高めることが必要となろうが、米中冷戦
を継続しながら、それを実現することはなかなか困難な道であろ
う。一時期にせよ、大規模な資本逃避は避けられなさそうだ。
   ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編より
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 第2のシナリオは、「中国の積極的関与VS米国の消極的関与
/米国の傍観」のシナリオです。
 このシナリオも、シナリオ1と同様に中国は資本開放をするこ
とが前提となっています。これは、中国にとって最大の難問であ
ります。これは、もし実施すると、大規模な資本逃避が起きる可
能性があり、政治体制の転換すら伴うからです。
 もし、中国がこの難問をクリアし、米国がその動きに関し、消
極的対応や傍観するならば、これまで米国に集中していた資本が
中国に向かうことになり、中国はデジタル覇権を確立する可能性
があります。その可能性は21%です。
 折しも世界はデジタル化に急速に進んでおり、これに関して白
井一成氏は、次のように述べています。
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 裏付け資産なしのオープン型デジタル人民元が発行され、世界
中で広範に使用される。「中国のウォレット全面解放」という西
側諸国にとっての脅威シナリオが実現することになる。デジタル
資産の規模が「ウォレット(人口)×取引数」に連動すると見る
と、巨大な人口を抱える中国の潜在力は大きいと考えるのが自然
であろう。体制変更により、その大きい潜在力をフルに発揮する
ことになる。中国に富が集中し、エネルギー調達も可能になる中
で、中国による監視社会化が実現しよう。一帯一路への風当たり
も強かったが、一帯一路経済圏も完成し、「中国の夢」も成就す
る。 ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編より
─────────────────────────────
 しかし、中国は、米国を中心に世界的にその覇権主義が嫌われ
てきており、中国によるデジタル覇権奪取の動きに関して、ヨー
ロッパを含む民主主義国全体に、中国に対して強い警戒心が生ま
れてきています。それによって米国が、積極的関与に転換する可
能性は十分残されています。
 第3のシナリオは「中国の消極的関与VS米国の積極的関与」
のシナリオです。
 このシナリオは、米国の強気の政策に関して、中国が怯むとい
うか、弱気になるケースです。米国がコトの重大さに気が付き、
デジタルドルを発行し、デジタル人民元を凌駕する姿勢を見せる
と、同盟国の日本をはじめ米国に同調する国は増加し、中国は突
き放されてしまうことになります。米国は既存のドルは失うが、
デジタルドルの発行自体には障害はないはずです。
 その可能性は21%。これに関して、白井一成氏は、次のよう
に述べています。
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 中国にとっては、せっかくアメリカの背中が見え、もう少しで
覇権取りが見えたところだったかもしれないが、これで決定的に
アメリカに突き放されてしまうことになる。消極的であったデジ
タル覇権にすらアメリカが積極的であるのであれば、他の分野で
もアメリカの攻勢は当然強いものであるだろう。
 中国の劣勢は鮮明になっていき、「中国の夢」は潰えてしまう
ことになる。ロシア、日本に続く形で、中国もアメリカの前に屈
してしまうことになる。覇権取りという野心を捨てざるを得なく
なった中国は、これまでの無理もたたってしまい、さまざまな問
題点が噴出するだろう。「中所得国の罠」を体現することになっ
てしまう。
   ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編より
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              ──[デジタル社会論/066]

≪画像および関連情報≫
 ●デジタルドルの可能性/金融アナリスト・久保田博幸氏
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   米国のイエレン財務長官は2月22日のニューヨーク・タ
  イムズ主催のバーチャル会議で、ソブリンデジタル通貨の発
  行を「中央銀行が検討するのは理にかなっている」と発言し
  た。さらにデジタルドルは、米国におけるファイナンシャル
  ・インクルージョン(金融包摂)面の困難に低所得世帯が対
  応するのを支援する可能性があるとの認識を示した(23日
  付ブルームバーグ)。
   カンボジアの中央銀行は昨年10月に、中央銀行デジタル
  通貨システム「バコン」の運用を開始した。このデジタル通
  貨は日本企業の技術を採用したものである。中央銀行デジタ
  ル通貨は、カリブ海の島国バハマでも、本格的な運用が始ま
  った。そして中国も昨年10月に、ハイテク都市の深センを
  皮切りにデジタル人民元の大規模な実証実験をスタートさせ
  た。イエレン氏は今年1月の議会公聴会で、暗号資産(仮想
  通貨)に関わるマネーロンダリングやテロリストの利用等、
  犯罪に利用される点が課題だと指摘していた。
   これに対して中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、それ
  自体が法定通貨となるものである。ECBのラガルド総裁も
  昨年11月にECBが数年以内にデジタル通貨を創設する可
  能性を示唆していた。日銀は現時点で中央銀行デジタル通貨
  を発行する計画はないとしているが、決済システム全体の安
  定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に
  的確に対応できるよう、しっかり準備しておくとしている。
                  https://bit.ly/3fNYi3a
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バイデン大統領とイエレン財務長官.jpg
バイデン大統領とイエレン財務長官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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