2021年04月07日

●「中国の『アジア元』構想とは何か」(第5465号)

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 周知のように、現在の世界通貨体系は、ドルが覇権を握ってい
る。近年では、世界の中央銀行が保有する外貨準備におけるドル
のシェアが減少し続けているが、依然として62%のシェアを占
めており、独占している。(一部略)
 世界諸国における中央銀行が保有する外貨準備の人民元の割合
は2%しかない。人民元という小さなさなぎはデジタル化によっ
て蝶になる。そして、世界諸国はこれを機に独自のデジタル通貨
を導入し、そのか細い翅を羽ばたかせれば、それがもたらす「バ
タフライ効果」は必ず世界の通貨システムにハリケーンのような
衝撃的影響を与えることになるだろう。
     ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編
 『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』/実業之日本社
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 これは、中国問題グローバル研究所の中国代表である北京郵電
大学経済管理学院の孫啓明教授の一文です。中国がデジタル人民
元で何を狙っているかがよくわかる一文です。藤誉・白井一成共
著のなかで紹介されているものです。中国という国は、1%の可
能性さえあれば、100%の努力を惜しまない国です。そして一
度立てた目標は何100年かかろうとも実現させようとします。
 孫啓明教授が述べているように、世界の中央銀行が保有する外
貨準備のドルの割合は62%、人民元は2%です。中国はこの絶
望的な差をデジタル人民元で逆転しようとしています。これは凄
いことです。米国は、現在のところ、通貨のデジタル化には消極
的であり、中国の出方を慎重に窺っていまするこのような状況に
おいて、中国問題グローバル研究所の白井一成氏は、日本の取る
べき戦略について、次のように述べています。
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 日本にとっての最適戦略は、中国が積極的になる前に、日本が
アメリカの積極策を引き出し、ドルのデジタル化と普及に最大限
貢献することだ。しかし、アメリカは現在のドルによる利益を享
受しているので、アメリカにデジタル化のインセンティブがある
かどうか不明である。日本がアメリカの同意を得ず、デジタル化
を進めれば有らぬ誤解を生むかもしれない。
 ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編の前掲書
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 中国問題グローバル研究所の所長で、中国分析の第一人者とさ
れる遠藤誉氏は、中国は米国の無関心さに乗じて、その逆のこと
を積極的にやろうとし、現在、着々と手を打っていると述べてい
ます。そのカギを握るのは、ブロックチェーンです。2019年
現在の、全世界のブロックチェーン企業の特許申請数は次のよう
に、圧倒的に中国がリードしています。
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 ◎全世界のブロックチェーン企業の特許申請数ランキング
         中国 ・・・・・ 60%
       アメリカ ・・・・・ 22%
         日本 ・・・・・  6%
         韓国 ・・・・・  5%
        ドイツ ・・・・・  3%
        その他 ・・・・・  4%
 ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編の前掲書
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 孫啓明教授が考える中国の考えはこうです。現在、世界の中央
銀行が保有する外貨準備においては、ドル(62%)と、ユーロ
(20%)が盤石の地位を占めています。それならば、ドルとユ
ーロ以外の国際決済通貨が連携すれば、「三つ鼎」の世界通貨体
制ができる──そのとき、その成否のカギを握るのは5%のシェ
アを持つ日本であると。
 中国は、ASEAN、アフリカをはじめ、一帯一路を形成する
すべての国にデジタル人民元を拡大し、そのうえで、「中日韓自
由貿易協定」を結び、人民元、日本円、韓国ウォン、香港ドルに
より構成されるバスケットに裏づけられる、価格の安定している
スティーブルコインを民間主導で開発し、まず、クロスボーダー
取引で実験してみるべきであるといっています。
 そして、最終段階として、人民元、日本円、韓国ウォンを「ア
ジア元」として、ドル、ユーロ、アジア元の「三鼎体制」を確立
するというのです。それに伴い、対外投資を担当する「一帯一路
デジタル中央銀行」を設立すると宣言。もちろん、日本や韓国が
それに乗るかどうかは別として、中国としては、そういう構想を
持っているということです。そして、孫啓明教授は最後に次のよ
うにいっています。
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 (日本や韓国と)取引するに当たって、現在交渉が加速してい
る中日韓自由貿易協定(FTA)を利用する。スティーブルコイ
ンによる便利なクロスボーダー決済サービスは、中日韓の経済貿
易協力を促進するだろう。香港はこの地域の主要な貿易・金融セ
ンターとして、本土(中国大陸)に支えられ、アジアに拠点を置
き、世界にサービスできるという利点を生かして、クロスボーダ
ー貿易の新しい研究と応用に積極的に参加する。FTAとステー
ブルコインがあればSWIFTを経由しなくても、すぐに取引で
きる。
 ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編の前掲書
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 このように、中国は戦略的に一歩一歩計画を進めています。既
に韓国は、中国によって、日中韓から引き剥されつつあります。
菅総理とバイデン米大統領との日米首脳会談が延期されたのは、
米国の準備の事情のようです。米国にとっても戦略的に日本を取
り込まないと、大変なことになるということは十分わかっている
はずです。問題は、首脳会談で日本は何を要求されるかです。
              ──[デジタル社会論/065]

≪画像および関連情報≫
 ●日中韓、日中韓、FTA交渉を加速 協力深化には課題
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  【成都=杉原淳一】安倍晋三首相と中国の李克強首相、韓国
  の文在寅大統領は2019年12月24日、中国・成都で首
  脳会談を開いた。会談終了後に公表した成果文書には、「日
  中韓自由貿易協定(FTA)の交渉を加速する」と盛り込ん
  だ。ただ、日韓では輸出管理、日中では次世代通信規格「5
  G」で、さや当てを続けており、協力深化に向けた課題は多
  い。安倍首相は首脳会談後の共同記者発表で「十分な付加価
  値を有する日中韓FTAを追求することを確認した」と述べ
  た。日本にとって中国は1位、韓国は3位の有力な貿易相手
  国だが、日中と日韓の間にはFTAが結ばれていない。関税
  の引き下げや電子商取引のルールなどを整備することで、3
  カ国経済の潜在力を引き出したい考えだ。
   中国は日本が参加し、米国が参加していない枠組みのFT
  Aにはいずれも前向きだ。米中摩擦をにらみ、米国以外の国
  との仲間づくりを進めたい意向がある。米国に対抗する狙い
  から、中国は、独自の経済圏構想「一帯一路」を推進してい
  る。中国は米国に偏っていた輸出先を分散させる方針を掲げ
  ており、とくに日本向け輸出を伸ばしたい考えとみられる。
  日本は日中韓に東南アジア諸国連合(ASEAN)などを加
  えた16カ国で交渉する東アジア地域包括的経済連携(RC
  EP)を実現させた後で、高いレベルの経済連携として日中
  韓FTAを成立させたい考えだ。
               https://s.nikkei.com/3wpLiXC
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遠藤誉氏.jpg
遠藤誉氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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