2021年04月05日

●「デジタル人民元に米国はどう出る」(第5463号)

 米国の3つの可能性とその主観的確率を再現します。
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      @米国の積極的関与 ・・・ 30%
      A米国の消極的関与 ・・・ 60%
      B   米国の傍観 ・・・ 10%
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 @の「米国の積極的関与」については、既に述べていますが、
さらにコメントを付け加えます。米国は、現在のところデジタル
通貨には消極的ですが、GAFAによって代表される米国のテッ
ク企業の動きによっては、積極化する可能性があります。これに
ついて、中国問題グローバル研究所の白井一成氏は、次のように
述べています。
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 アメリカの主要テック企業がデジタルドルの使用を推奨し、ウ
ォレットが共通になり、利用料の支払いやポイントの交換、友人
への送金や、出店企業やオークションで出品した売上の入金も、
すべて共通デジタル通貨になるイメージをしてみよう。
 海外に行っても、すべてデジタルドルで消費できれば、わざわ
ざ高い両替手数料を払って紙幣を持つ必要もなければ、カード払
いの為替手数料もいらない。また、アプリ内の余剰資金で、優れ
た運用商品が買えるようになるかもしれない。
 アメリカの資産のほとんどがブロックチェーン上でトークン化
され、世界中からマイクロインベストメント(少額での投資)が
可能になれば、かなりの人気を博すだろう。こうなれば、企業で
も、売掛金や買掛金、運用や借入もデジタルドルでという動きに
なってくるだろう。
     ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編
 『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』/実業之日本社
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 Aの「米国の消極的関与」について考えてみます。これに関連
するのは、フェイスブックのリブラ(ディエム)に対する米国の
対応です。フェイスブックはリブラの名称を変更するとアナウン
スして以来、動きが報道されませんが、それは米国国内のデジタ
ル通貨に対する批判が強いことを意味しています。
 リブラに関しては、その発行が銀行制度や銀行の経営に大きな
悪影響を与えて、中央銀行の金融政策の有効性を低下させる可能
性があることや、マネーロンダリング(資金洗浄)の温床になり
かねないと強い批判があります。これに対する主観的確率が60
%であることはそれを意味しています。
 リブラ(ディエム)をどうするかに関して木内登英氏は、次の
ように「捻り潰すべきではない」と主張しています。
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 民間企業が生み出す様々なイノベーションを積極的に金融業に
取り入れていくことで実現する、利便性の高い新しいサービスの
提供を後押しすることは、金融当局の重要な務めでもある。
 こうした点に照らせば、世界各国の金融当局はリブラ構想を捻
り潰すべきではないし、また、実際にそうはしないだろう。リブ
ラを捻り潰したとしても、第2のリブラは必ず出てくるし、フェ
イスブックが暗に指摘しているように、将来的には、中国のアリ
ペイ、ウィーチャットペイ、あるいは、中国の中銀デジタル通貸
が、世界を席巻する可能性も考えられるからだ。
 金融当局は、知見を集めてリブラがもたらす様々な問題点を洗
い出し、適切な規制のありかたを十分に議論し、規制の体制を整
えた上で、リブラを受け入れるべきだろう。今後、リブラに続く
グローバルなデジタル通貨の発行が続くことも予想される中、こ
の機会を使って、十分に時間を掛けて規制体系を作り上げておく
ことが求められる。     ──木内登英著/東洋経済新報社
    『決定版リブラ/世界を震撼させるデジタル通貨革命』
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 Aの対応は、中国のデジタル人民元の動きを見て対応するとい
う米国の消極的関与です。フェイスブックのリブラ(ディエム)
で対抗する手もあるかもしれません。
 Bの「米国の傍観」について考えます。これもデジタル人民元
の動きを見ながらの「傍観」です。しかし、現在の米バイデン政
権は、中国の出方に敏感であり、いずれにせよ、米国が傍観的態
度をとることはあり得ないことです。したがって、その主観的確
率は10%になっています。
 ここで添付ファイルを見てください。これは、中国問題グロー
バル研究所の遠藤誉氏と白井一成氏の本に出ていたものですが、
表の「アメリカ」のところに一か所誤植があります。「消極的関
与(30%)」とあるのは、「積極的関与(30%)」の誤りで
す。このマトリックスから、5つのシナリオが考えられます。白
井一成氏は次のように説明しています。
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 中国、アメリカの姿勢によって、6(2×3)通りのシナリオ
が考えられるが、中国が積極的に関与する場合、アメリカが消極
的に関与するケースと傍観するケースとでは、シナリオに実質的
な差が生じないため、ここでは5通りのシナリオに分けている。
 現状は「今にもデジタル人民元を始めようとする中国に対して
アメリカは様子見状態」という状況である。デジタル人民元発行
間近の中国は最初に行動をとる可能性がある。ドル覇権に不満を
抱えているのは中国なので、行動をとる動機もある。先行者利益
を得たいという思惑もあるだろう。中国が先行すれば、それだけ
アメリカの覇権崩しに寄与するだろう。
 ──遠藤誉・白井一成/中国問題グローバル研究所編の前掲書
─────────────────────────────
 この中国問題グローバル研究所による「米中デジタル覇権の5
つのシナリオ」から経済・金融・通貨の未来について、明日から
検討をはじめることにしたいと思います。
              ──[デジタル社会論/063]

≪画像および関連情報≫
 ●「デジタル人民元」実用化を急ぐ中国の本気度
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   中国人民銀行は2014年からデジタル通貨に関する研究
  をスタートし、2017年に、デジタル通貨研究所を設立し
  た。2019年までに、デジタル通貨研究所と中国人民銀行
  系列の印刷科学技術研究所、中鈔クレジットカード産業発展
  会社の3者が97項目の特許出願を申請するなど、デジタル
  通貨の発行方法やシステム、ブロックチェーン技術、デジタ
  ル通貨ICカード、デジタルウォレットなど、広範囲でデジ
  タル通貨に関する研究は進んでいる。現在で明らかになって
  いるデジタル人民元構想からは、大きく3つの特徴を見て取
  ることができる。
  【特徴@】通貨供給スキームが現在と同じ二重構造
   1つ目は、現在の通貨供給スキームと同じで、中国人民銀
  行が発行し商業銀行が流通させる2層構造であることだ。中
  国では、中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設
  銀行の国有銀行4行を総称して商業銀行と呼ぶ。2層構造と
  はすなわち、中国人民銀行が商業銀行の準備金と引き換えに
  デジタル人民元を発行し、商業銀行がそれぞれの顧客の希望
  に応じて顧客の人民元建ての預金をデジタル人民元と交換す
  ることで、デジタル人民元を流通させる仕組みだ。
                  https://bit.ly/3wn4LrE
  ───────────────────────────
5つのシナリオの確率.jpg
5つのシナリオの確率
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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