ボジア国立銀行と名乗る人物からの次のメールです。
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おはようございます、皆さん。私はカンボジア国立銀行のXX
Xです。われわれは中央銀行デジタル通貨を発行したいと考えて
います。あなた方の開発しているブロックチェーン「ハイパーレ
ッジャーいろは」プラットフォームでテストしたいと思います。
あなたがたのサポートを是非とも期待しています。
──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デジ
タル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
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「ハイパーレッジャーいろは」とは何でしょうか。
読みにくいので、かたかなで記述しましたが、正式名称は、次
の通りです。
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Hyperledger IROHA
主導開発元:ソラミツ株式会社
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「Hyperledger」とは何でしょうか。
ハイパーレッジャーは、ブロックチェーン技術を仮想通貨に限
定せず、最大限に利用することを目的として、誕生したブロック
チェーン技術の推進コミュニティーのことです。
プロジェクトの立ち上げにあたって、リナックスOSの普及を
サポートする非営利の共同事業体であるリナックス・ファウンデ
ーションが中心になり、オープンソースの理念から世界中のIT
企業が協力して、ブロックチェーン技術の確立を目指しているの
です。リナックス・ファウンデーションは、2000年に設立さ
れた非営利の技術コンソーシアムのことです。
このコミュニティーのなかには、複数のプロジェクトが存在し
グローバルレベルで、共同検証が進められていたのですが、20
17年当時、活動が続けられていたブロックチェーンのプラット
フォーム開発プロジェクトは、3つあり、その1つがソラミツ株
式会社というわけです。参考までに、ソラミツ株式会社以外の2
社についても記述しておきます。
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Hyperledger fabric
主導開発元:米IBM
Hyperledger Sawtooth Lake
主導開発元:米インテル・コーポレーション
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米IBMや米インテルと肩を並べるソラミツという企業は只者
ではありません。ソラミツとカンボジア中央銀行との契約が成立
した2017年当時、カンボジア国内での銀行口座開設率はわず
か22%であり、78%の国民は銀行口座を保有していないアン
バンクトであったのです。
しかし、その一方で、スマホの普及率は150%であり、2台
保有している人が多かったのです。1台はプライベート用で、家
族や知人との通信用であり、もう1台はビジネス用です。贅沢の
ようですが、スマホを持っていないと仕事も探せないし、仕事の
声もかからないので、スマホはカンボジア国民にとって、必須ア
イテムになっていたのです。
当時カンボジア国内では、スマホを利用して、「ウイング」と
いう送金サービスが流行していたのです。ウイングを営む事業者
は、農村部を含めてカンボジア全土に4000店舗も展開されて
いるのです。どのようにして送金するのかというと、都市部で働
く人が、農村部の自分の家族に送金する方法を解説します。
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@都市部のウイング店舗で現金を預け、パスワードを発行し
てもらう。
AそのパスワードをSNSを使って、農村部の自分の家族に
送信する。
B家族は近くのウイングの店舗に行き、送付されたパスワー
を見せる。
Cウイングの業者は、そのパスワードを確認照合のうえ現金
を支払う。
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送金手数料としては、1米ドル程度はかかりますが、現金のま
ま輸送するよりもはるかに安全であるし、スピードも速いので゛
幅広く利用されているのです。
このカンボジアの「ウイング」と似たような送金システムは他
の国でも見られます。ケニアの「エムぺサ」は、仕組みが「ウイ
ング」とそっくりです。この「エムペサ」について、野口悠紀雄
氏は自著で、次のように紹介しています。
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このサービスは、ケニアの携帯電話会社サファリコムに出資し
た英携帯電話大手のボーダフォンが、07年に開始した。エムぺ
サの代理店(取次店)で現金を預けて自分のエムぺサロ座に入金
してもらってから、送金相手にSNSを送る。メッセージを受け
取った人は、取次店でSNSと身分証明書を提示すると、現金を
受け取れる。「エコノミスト」の記事によると、ケニアの成人人
口の3分の2以上に当たる1700万人が、エムぺサを利用して
いる。エムぺサを通じて行なわれる資金移動は、ケニアのGDP
(国内総生産)の約25%に相当する。
──野口悠紀雄著/ダイヤモンド社
『仮想通貨革命/ビットコインは始まりにすぎない』
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カンボジアの国立銀行は、このような「ウイング」の流行に眉
をひそめたのです。何とかしなければならない。カンボジア国立
銀行は、実態を調査し、問題点の抽出を行ったのです。
──[デジタル社会論/044]
≪画像および関連情報≫
●個人間送金サービスはアプリで対応!銀行口座を使わない
仕組みを解説
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個人間送金とは、個人から個人へお金を送ること。金融機
関を通したお振込みや、郵便局の現金書留なども個人間送金
となりますが、近年、注目を集めているのは、スマートフォ
ンなどのアプリを使って、お金をやり取りする個人間送金で
す。個人間送金は「P2P金融サービス」ともいわれていま
す。P2Pとは、Peer to Peer の略で ネットワークに接続
されたコンピュータ端末同士が直接通信する方式のこと。つ
まり、パソコンやスマートフォンを介して、365日24時
間、送金を行うことができるサービスです。
個人間送金は、キャッシュアウト(現金の引き出し)する
際に手数料がかかりますが、送金時の手数料が発生しないた
め大きな魅力となっています。銀行からの送金は、利用者が
手数料を負担しないといけない上に、国外にお金を送金する
際はさらなる手数料がかかります。そのため、個人間送金と
呼ばれる送金方法が注目を集めているのです。
日本ではまだ十分に浸透しているとは言い難いですが、海
外に目を向けると個人間送金が日常の風景となっている国が
あります。例えば、アメリカのペイパルの子会社が運営して
いる「Venmo (ベンモ)」というサービスは、手数料無料で
ソーシャル機能を含めた使い勝手の良さがウケて、若い世代
を中心に人気を博しています。割り勘や建て替えをする際に
「Venmo me 10$」といった具合に、Venmo が動詞として浸
透するほど日常化しています。 https://bit.ly/2Oy4iS1
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カンボジア国立銀行