2021年03月09日

●「カンボジアはどんな状況だったか」(第5443号)

 ソラミツがカンボジア国立銀行の案件に応札できたのは、カン
ボジア国立銀行と名乗る人物からの次のメールです。
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 おはようございます、皆さん。私はカンボジア国立銀行のXX
Xです。われわれは中央銀行デジタル通貨を発行したいと考えて
います。あなた方の開発しているブロックチェーン「ハイパーレ
ッジャーいろは」プラットフォームでテストしたいと思います。
あなたがたのサポートを是非とも期待しています。
        ──宮沢和正著『ソラミツ/世界初の中銀デジ
  タル通貨「バコン」を実現したスタートアップ』/日経BP
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 「ハイパーレッジャーいろは」とは何でしょうか。
 読みにくいので、かたかなで記述しましたが、正式名称は、次
の通りです。
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             Hyperledger IROHA
       主導開発元:ソラミツ株式会社
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 「Hyperledger」とは何でしょうか。
 ハイパーレッジャーは、ブロックチェーン技術を仮想通貨に限
定せず、最大限に利用することを目的として、誕生したブロック
チェーン技術の推進コミュニティーのことです。
 プロジェクトの立ち上げにあたって、リナックスOSの普及を
サポートする非営利の共同事業体であるリナックス・ファウンデ
ーションが中心になり、オープンソースの理念から世界中のIT
企業が協力して、ブロックチェーン技術の確立を目指しているの
です。リナックス・ファウンデーションは、2000年に設立さ
れた非営利の技術コンソーシアムのことです。
 このコミュニティーのなかには、複数のプロジェクトが存在し
グローバルレベルで、共同検証が進められていたのですが、20
17年当時、活動が続けられていたブロックチェーンのプラット
フォーム開発プロジェクトは、3つあり、その1つがソラミツ株
式会社というわけです。参考までに、ソラミツ株式会社以外の2
社についても記述しておきます。
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    Hyperledger fabric
    主導開発元:米IBM
    Hyperledger Sawtooth Lake
    主導開発元:米インテル・コーポレーション
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 米IBMや米インテルと肩を並べるソラミツという企業は只者
ではありません。ソラミツとカンボジア中央銀行との契約が成立
した2017年当時、カンボジア国内での銀行口座開設率はわず
か22%であり、78%の国民は銀行口座を保有していないアン
バンクトであったのです。
 しかし、その一方で、スマホの普及率は150%であり、2台
保有している人が多かったのです。1台はプライベート用で、家
族や知人との通信用であり、もう1台はビジネス用です。贅沢の
ようですが、スマホを持っていないと仕事も探せないし、仕事の
声もかからないので、スマホはカンボジア国民にとって、必須ア
イテムになっていたのです。
 当時カンボジア国内では、スマホを利用して、「ウイング」と
いう送金サービスが流行していたのです。ウイングを営む事業者
は、農村部を含めてカンボジア全土に4000店舗も展開されて
いるのです。どのようにして送金するのかというと、都市部で働
く人が、農村部の自分の家族に送金する方法を解説します。
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 @都市部のウイング店舗で現金を預け、パスワードを発行し
  てもらう。
 AそのパスワードをSNSを使って、農村部の自分の家族に
  送信する。
 B家族は近くのウイングの店舗に行き、送付されたパスワー
  を見せる。
 Cウイングの業者は、そのパスワードを確認照合のうえ現金
  を支払う。
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 送金手数料としては、1米ドル程度はかかりますが、現金のま
ま輸送するよりもはるかに安全であるし、スピードも速いので゛
幅広く利用されているのです。
 このカンボジアの「ウイング」と似たような送金システムは他
の国でも見られます。ケニアの「エムぺサ」は、仕組みが「ウイ
ング」とそっくりです。この「エムペサ」について、野口悠紀雄
氏は自著で、次のように紹介しています。
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 このサービスは、ケニアの携帯電話会社サファリコムに出資し
た英携帯電話大手のボーダフォンが、07年に開始した。エムぺ
サの代理店(取次店)で現金を預けて自分のエムぺサロ座に入金
してもらってから、送金相手にSNSを送る。メッセージを受け
取った人は、取次店でSNSと身分証明書を提示すると、現金を
受け取れる。「エコノミスト」の記事によると、ケニアの成人人
口の3分の2以上に当たる1700万人が、エムぺサを利用して
いる。エムぺサを通じて行なわれる資金移動は、ケニアのGDP
(国内総生産)の約25%に相当する。
             ──野口悠紀雄著/ダイヤモンド社
     『仮想通貨革命/ビットコインは始まりにすぎない』
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 カンボジアの国立銀行は、このような「ウイング」の流行に眉
をひそめたのです。何とかしなければならない。カンボジア国立
銀行は、実態を調査し、問題点の抽出を行ったのです。
              ──[デジタル社会論/044]

≪画像および関連情報≫
 ●個人間送金サービスはアプリで対応!銀行口座を使わない
  仕組みを解説
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   個人間送金とは、個人から個人へお金を送ること。金融機
  関を通したお振込みや、郵便局の現金書留なども個人間送金
  となりますが、近年、注目を集めているのは、スマートフォ
  ンなどのアプリを使って、お金をやり取りする個人間送金で
  す。個人間送金は「P2P金融サービス」ともいわれていま
  す。P2Pとは、Peer to Peer の略で ネットワークに接続
  されたコンピュータ端末同士が直接通信する方式のこと。つ
  まり、パソコンやスマートフォンを介して、365日24時
  間、送金を行うことができるサービスです。
   個人間送金は、キャッシュアウト(現金の引き出し)する
  際に手数料がかかりますが、送金時の手数料が発生しないた
  め大きな魅力となっています。銀行からの送金は、利用者が
  手数料を負担しないといけない上に、国外にお金を送金する
  際はさらなる手数料がかかります。そのため、個人間送金と
  呼ばれる送金方法が注目を集めているのです。
   日本ではまだ十分に浸透しているとは言い難いですが、海
  外に目を向けると個人間送金が日常の風景となっている国が
  あります。例えば、アメリカのペイパルの子会社が運営して
  いる「Venmo (ベンモ)」というサービスは、手数料無料で
  ソーシャル機能を含めた使い勝手の良さがウケて、若い世代
  を中心に人気を博しています。割り勘や建て替えをする際に
  「Venmo me 10$」といった具合に、Venmo が動詞として浸
  透するほど日常化しています。   https://bit.ly/2Oy4iS1
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カンボジア国立銀行.jpg
カンボジア国立銀行
posted by 平野 浩 at 08:08| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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