2021年03月01日

●「プラットフォーマーと銀行の将来」(第5437号)

 プラットフォーマーが続々と金融業に進出してきています。今
のところ、決済と小額資金の貸し出し程度ですが、やがて、融資
や資産運用、保険などに進出してくるはずです。なかには、フェ
イスブックのようにデジタル通貨の発行までするようになること
は時間の問題です。こうなると、普通の銀行だけではなく、中央
銀行にまで影響が及ぶことになります。
 このようなプラットフォーマーによる金融進出によって銀行が
どうなるかについて、IMF(国際通貨基金)は、次の3つのシ
ナリオを示しています。
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  ◎第1のシナリオ
   デジタル通貨発行企業と銀行が共存するようになる
  ◎第2のシナリオ
   デジタル通貨発行企業と銀行が相互補完関係になる
  ◎第3のシナリオ
   デジタル通貨発行企業が銀行にとって代わる可能性
              ──木内登英著/東洋経済新報社
    『決定版リブラ/世界を震撼させるデジタル通貨革命』
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 第1のシナリオは「デジタル通貨発行企業と銀行が共存するよ
うになる」ことです。
 これは、最も可能性のあるシナリオといえます。プラットフォ
ーマーが発行するデジタル通貨を使うには、個人の銀行預金を取
り崩してデジタル通貨を購入する必要があります。そうすると、
デジタル通貨は個人の銀行預金を代替することになり、その分、
銀行預金が減ることになります。
 しかし、そのデジタル通貨の代金のほとんどは、そのデジタル
通貨の発行元である企業、仮にリブラ協会(ディエム協会という
のかもしれないが)のような企業や団体の銀行預金として保有す
ることになります。したがって、銀行の小口銀行預金は減っても
預金の総額としては大きくは変化しないのです。そのため、銀行
預金・貸出機能は顕著には変化しないことになります。このよう
に一応デジタル通貨と銀行は共存できるわけです。
 しかし、ぜんぜん変化がないわけではないのです。まず、個人
の小口預金が企業の大口預金に代替することによって、預金金利
が高くなることが上げられます。それに、銀行は個人顧客との関
係が失われ、顧客の取引履歴データの多くをプラットフォーマー
に吸い上げられることになります。また、デジタル通貨を発行す
る企業の預金は、特定の大手銀行に集中し易くなり、中小銀行の
預金残高は減少し、貸出業務に支障をきたすことになります。
 第2のシナリオは「デジタル通貨発行企業と銀行が相互補完関
係になる」ことです。
 これは、デジタル通貨を発行する企業と銀行がウインウインの
関係になることです。デジタル通貨の発行企業、すなわち、プラ
ットフォーマーは、その提供する数々のサービスを利用するユー
ザーを分析し、銀行に見込顧客を紹介することが可能です。それ
に加えて、顧客の信用力を判断し、それを情報として銀行に販売
することによって、銀行の貸出業務を助けることができます。ま
さに相互補完の関係といえます。
 第3のシナリオは「デジタル通貨発行企業が銀行にとって代わ
る可能性」です。
 このシナリオは、近い将来を前提とするならば、最も可能性の
低いシナリオということになります。なぜなら、資金力では、プ
ラットフォーマーは、銀行に圧倒的な差をつけられているからで
す。プラットフォーマーは、銀行のように、個人の預金を集める
ことで大量の資金を調達することは出来ないからです。
 しかし、時が経つにつれて、デジタル通貨を発行するプラット
フォーマーの資金量が増えてくると、銀行は少しずつ力を失って
いくことが考えられます。これについて、木内英登氏は次のよう
に予測しています。
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 個人が持つ銀行預金は、現金と同様に決済目的で保有している
部分と、運用目的で保有している部分とに分かれる。このシナリ
オでは、前者は、デジタル通貨にほぼとって代わられてしまうこ
とになる。そして、決済目的で利用されなくなった銀行預金から
も、個人は、投資信託などより運用利回りが高い商品へと資金を
移していくだろう。
 そして、預金という資金調達手段を失った銀行は、市場での資
金調達を強いられるだろう。ただし、貸出業務もデジタル通貨発
行企業に奪われていくため、銀行のバランスシートは、現在と比
べて大幅に縮小し、銀行のプレゼンスも大きく低下することが避
けられない。デジタル通貨を発行するプラットフォーマーが銀行
にとって代わる状況が定常状態に至れば、預金と貸出を大幅に失
った銀行が取り付け騒ぎ(バンク・ラン)に見舞われるリスクは
次第に低下する。この際には、銀行システムの安定性は以前より
も高まると言えるかもしれない。また個人は銀行預金から投資信
託などリスク性商品へと資産を移すことになるため、「貯蓄から
投資」への流れが加速することが、経済的にはプラスの効果をも
たらす可能性も考えられるところだ。
        ──木内登英著/東洋経済新報社の前掲書より
─────────────────────────────
 しかし、銀行がデジタル通貨を発行するプラットフォーマーに
とって代わられる事態が生ずると、個人の金融資産が大きなリス
クにさらされるマイナス面も出てくるはずです。現行の銀行預金
は、預金保険制度によって一部保証されるなどの措置がとられて
います。さらに、銀行が長年培ってきたどのような企業に貸出を
増加させ、企業の技術力、成長力を支えるかの目利きの判断など
のいわゆる信用創造機能が弱体化し、経済の活力を削いでしまう
ことも大きく懸念されることです。第3のシナリオはあってはな
らないのです。       ──[デジタル社会論/038]

≪画像および関連情報≫
 ●銀行とデジタル・プラットフォーマーのビジネスの類似性
      ──大和総研グループ/金融調査部/内野逸勢氏
  ───────────────────────────
   メディアで最近よく目にするプラットフォーマーのビジネ
  スモデルを改めて定義してみよう。まずプラットフォーマー
  とは“デジタル・プラットフォーマー”という言葉で置き換
  えられる。次にそのビジネスモデルは「つながりに着目した
  ビジネスモデル」と「データに着目したビジネスモデル」の
  2つに分類される。
   前者は、あらゆる場所からオンライン上でアクセスする消
  費者の多種多様なニーズと、様々な財・サービスの供給者と
  の「つながりに着目したビジネスモデル」であると言える。
  組織の内部の特定機能を代替するために外部の機能をつなぐ
  「APIエコノミー」、複数の金融機関の個人口座の情報を
  つなぐ「アリゲーションサービス」などのビジネスが台頭し
  ている。さらにヒト・モノ・カネの多種多様かつ膨大な情報
  をあらゆるニーズに“つなぐ”(仲介)「マッチングエコノ
  ミー」「シェアリングエコノミー」などが当てはまろう。
   「つながりに着目したビジネスモデル」は必然的に契約と
  課金が伴う。契約形態は、サービスと利用者を“つなぐ”効
  率性が劇的に改善することで、購入契約よりもレンタル、サ
  ブスクリプション型のサービス利用契約を選択する消費者が
  多くなる。このため契約・課金は少額化・短期化し、決済は
  銀行口座を経由した決済よりも、利便性の高いモバイル決済
  が主流となる。これにより決済の多様化が進む。当然、顧客
  の取引情報が付随してくる。これが後者の「データに着目し
  たビジネスモデル」ということになろう。
                  https://bit.ly/3dPqhyH
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木内登英氏.jpg
木内登英氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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