ることにします。プラットフォーマーとは、ネット上に「場」を
提供し、そこを通してモノの売買とか、その決済とか、検索とか
チャットとか、モノの交換などを行う事業体のことです。
このような観点で考えると、日本にもプラットフォーマーは、
たくさんあります。楽天とか、ヤフー!ジャパンとか、メルカリ
とか、LINEなどがあります。問題は、その規模がGAFAに
到底及ばないことです。
そのなかで、最近注目すべきなのはLINEです。LINEは
電子メールよりも簡単に、しかも無料で対話できるということで
日本を中心に利用者が急増し、日本には、約8400万人のユー
ザーがいます。SNSでは日本一です。
このLINEについて、最近気になることがあります。それは
LINEについて紹介するとき、「無料通信アプリLINE」と
必ず断ることです。なぜ、気になるのでしょうか。それは、LI
NEは、基本的には無料ではないからです。
技術的なことには踏み込みませんが、LINEはVoIPとい
う技術を使う、パケット通信なのです。VoIPというのは、次
の言葉の省略形です。
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VoIP/Voice over Internet Protocol
IPを利用して通信をする技術
─────────────────────────────
簡単にいうと、VoIPとは音声もパケットデータとして発信
するのです。このパケット料金は、携帯電話を契約しているキャ
リアとの契約によって支払われています。ほとんどの場合、定額
料金のなかで消化されているので、無料と感じているだけです。
もし、LINEを使い過ぎると、キャリアとの契約によっては、
料金がかかる場合もあります。したがって、通信は無料ではない
のです。
そのことはさておき、LINEは2018年にスマホを使った
決済サービス「LINEペイ」の利用拡大に乗り出しています。
これに対しては、後で述べるLINEの重要な決断が行なわれて
います。
LINEのユーザー数は、2020年3月末日現在、8400
万人を超えています。これは、アプリのダウンロード数ではなく
「月間アクティブユーザー数」であり、LINEがいかによく使
われているかを示しています。月間アクティブユーザー数とは、
1ヶ月の間に1回以上LINEを使ったユーザーの数であり、ス
リーピング・ユーザー数を含んでいないのです。
2020年3月末日時点での日本の人口は、1億2595万人
であり、人口の66・7%がLINEのアクティブユーザー数と
いうことになります。
2020年1月、LINEによる日本のスマホユーザーに対し
て実施した調査によると、いつもスマホで見るのは「LINEの
み」というユーザーが40・6%もおり、他のサービスと比べて
突出しています。この調査では、LINEは82・5%、ツイッ
ターは36・4%、フェイスブックは24・6%だったのです。
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LINEオンリー ・・・・・・・・・・・・ 40・6%
LINE+ツイッター ・・・・・・・・・・ 18・8%
LINE+ツイッター+フェイスブック ・・ 14・6%
LINE+フェイスブック ・・・・・・・・ 8・5%
ツイッターオンリー ・・・・・・・・・・・ 2・4%
フェイスブックオンリー ・・・・・・・・・ 0・9%
https://bit.ly/2NuBdqF
─────────────────────────────
LINEペイの利用拡大に対して、LINEは重大な決断をし
ていると上述しましたが、これはなかなかの思い切った決断であ
るといえます。これについて、既出の木内登英氏は次のように述
べています。
─────────────────────────────
LINEペイの利用を飛躍的に拡大させるには、まずはそれを
使える場所を格段に増やす必要がある。そこで始めたのが、手数
料無料化という戦略だ。LINEはスマートフォンにインストー
ルするだけで決済端末となる専用アプリを店舗に無料配信してい
るが、このアプリを使って決済した場合には、店舗(中小業者)
の手数料が3年間無料になる。
販売額に応じて課される決済手数料は日本では現在3〜4%が
主流だ。米国では2・5%、中国では0・5〜0・6%がスタン
ダードとされている。LINEの場合、とりあえずは3年間とい
う限定ではあるものの、無料というのはかなり衝撃的だ。これを
きっかけに、今や、手数料無料化が日本のスマートフォン決済の
業界標準(スタンダード)となってきた感がある。さらに、LI
NEは、利用者には決済金額の3〜5%をポイント還元して、店
舗側と利用者側の双方からLINEペイの利用を促す戦略をとっ
たのである。 ──木内登英著/東洋経済新報社
『決定版リブラ/世界を震撼させるデジタル通貨革命』
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3年間の限定とはいえ、手数料無料は販売店から見れば大歓迎
です。販売店としては、LINEペイ利用のお客に対しては相当
のサービスをしても、割りに合うのです。ましてお客に関しても
決済金額の3〜5%をポイントとして還元しているのです。問題
は、LINEはどうしてそんなことができるのかです。
それは、LINEの場合、そのビジネスモデルは、手数料で儲
けるのではなく、本業のネットサービスで儲けるようになってい
るからです。これは、プラットフォーマーの最大の強みであり、
とても手数料で稼ごうとする銀行などの金融業が、まとも戦って
勝てる相手ではないということを意味しています。
──[デジタル社会論/035]
≪画像および関連情報≫
●銀行はいずれなくなる?グローバル・プラットフォーマーの
戦略とは?
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ITとAIの進化に伴って最も劇的な変革が起きる代表的
な業界は金融業界でしょう。昔ながらの銀行は大きく業態を
変えるか、もしくは無くなることになるかもしれませんね。
<先端技術進歩で銀行業務3分の1奪われる?>
(2018年年4月12日付 日本経済新聞)
「シティグループが3月にまとめた銀行の未来に関するリポ
ートは、最大で3分の1の銀行業務が、大手ハイテク企業や
新興のフィンテックによって置き換えられる可能性を指摘し
た。北米では2025年までに支払いや資産運用、融資など
の分野で34%の売り上げを失うと予想している。
リポートは「銀行員が将来について心配することといえば
フィンテックより、ビッグテック(大手ハイテク企業)だろ
う」として、有力な競合相手として、米アマゾン・ドット・
コムやフェイスブック、中国のテンセントやアリババを挙げ
た」
今、世界中でフィンテック企業が続々と誕生し、すごいス
ピードで成長しています。また、グーグル、アマゾン、フェ
イスブック、アリババなど「ビッグテック」がそういうフィ
ンテック企業を買収したり、提携したりして自社のエコシス
テム(生態系)に取り込んで業務領域を拡大しています。い
わゆる「プラットフォーム戦略」ですね。
https://bit.ly/3breZhc
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