2021年02月19日

●「アリハバのビジネスは問題がある」(第5432号)

 アリババの話を続けます。アリババが、ここまで巨大な存在に
なったのには、そのウラで、相当あくどいこともやってきていま
す。アリババ傘下のアリペイを担当するアントフィナンシャルは
ローン事業として、利用者に融資を行い、その債権をまとめて証
券化して、「資産担保証券/ABS」として投資家に売却してい
るのです。そして、そこで得た金額をさらに利用者に融資し、そ
れによって得た債権を再び証券化することを繰り返しています。
これは、2008年のリーマンショックで行なわれた手法──信
用力の低い人向けの債権を証券化するのと同じです。
 アントフィナンシャルは、この手法で元手の30億元(約48
0億円)を100倍の3千億元(約4・8兆円)まで膨らませて
います。つまり、アントフィナンシャルは、融資で高い利息を得
つつ、債権が焦げ付くリスクは、証券化した金融商品を購入した
投資家が負う、ムシの良いビジネスです。
 さらにそれに加えて、プラットフォーマーとして得た膨大な決
済情報を利用して信用スコアを構築し、それに基づく情報を銀行
に売り、銀行と一緒に融資を行ったのです。この場合、利息は銀
行が稼ぎ、アントフィナンシャルは、銀行への情報提供料で稼ぐ
というウインウインの関係を築いています。しかし、そのほとん
どは、銀行が貸しているのです。
 これらの小額ローンの融資残高は、2020年6月時点におい
て2・1兆元(約34兆円)になっていますが、このうち、アン
トフィナンシャルは、わずか2%しか負担していないのです。非
常に巧妙な商売をしているわけです。
 この中国の小額ローン制度には大きな問題点があります。もと
もと少ない元手を証券化で膨らませるアントフィナンシャルの手
法は、それらの債権が不良債権化するリスクをはらんでいます。
そのさいには、自己資本が足りず、金融リスクを引き起こす恐れ
があります。
 実際問題として、このアントフィナンシャルの小額ローン事業
は、2017年末で、返済が3ヶ月以上遅れたケースは消費者向
けでは0・68%、中小企業向けでは1・1%ですが、コロナ発
生後は、消費者向けと中小企業向けの両方で2%を超えるように
なってきています。
 また、アントフィナンシャルは、「独身の日」の売上高をさら
に高めるため、次のようなことをやっているとして、朝日新聞の
「けいざい+」は、次のように書いています。
─────────────────────────────
 アリババの通販サイトで開かれる、年に一度のセール「独身の
日」。その直前の昨年10月、北京市内のインターネット企業で
働く、女性(27)のスマホには、借金の限度額を一時的に5千
元引き上げるという通知が届いた。女性の月収1万元の2倍以上
約2万5千元まで使えるとあって、女性は普段は買わない化粧品
を買おうかと迷った。だが、寸前にやめたという。「カモにされ
る」だけで、お金持ちになったわけじゃない。
 中国では、いま、カモにするという意味の「割韮菜(ニラを刈
る)」という意味が広がっている。その代表例がアントだ。スマ
ホで簡単に借りられる便利な方法で、金融の知識の乏しい若者が
アリペイで借金するよう仕向ける。ネット上ではアントやマーを
批判、揶揄する投稿が相次いでいる。
    ──2021年2月11日付、朝日新聞「けいざい+」
─────────────────────────────
 現在、アリババグループの前途には、暗雲が広がっています。
2020年11月の「独身の日」、これについては既に述べたよ
うに、数々の記録を打ち立てたにもかかわらず、アリババの11
日の株価は、実に前日比9・5%安(香港市場終値)と急落し、
香港版のナスダック指数と呼ばれるハンセンテック指数のなかで
下落率トップを記録したのです。
 これについて、東洋経済の秦卓弥記者は、その理由について次
のように書いています。
─────────────────────────────
 ダブルイレブン商戦が最も盛り上がる最終日直前の11月10
日。中国の規制・監督当局である国家市場監督管理総局がネット
企業の独占行為を監督強化する新たな指針(「プラットフォーム
企業の経済領域での独占禁止ガイドライン」)を公開したのだ。
アリババをはじめ市場シェアを急速に高めているネット企業によ
る取引先への不当な圧力や消費者データの乱用などを防ぐ枠組み
を設けるもので、11月末まで意見を公募する。(中略)
 こうしたデジタル企業のサービスは、今や中国の生活の隅々ま
で根を張る一方、熾烈な競争環境下で取引先にサービスの二者択
一を迫ったり、国民のビッグデータを企業が占有したりするなど
その弊害も見え始めている。これまで政府がグレーゾーンとして
見逃していたデジタル企業の支配力を弱めようという動きだ。
                  https://bit.ly/3pt2TJh
─────────────────────────────
 もちろん、アリババに対しては、既に述べているように、20
20年10月24日の上海金融サミットでのアリババの創業者、
ジャック・マー氏の「中国の問題は金融のシステミック・リスク
ではなく、金融エコシステムの欠如というリスクである」の発言
があります。
 これは、マー氏の前に講演をした王岐山国家副主席の「近年、
新しい金融技術が普及し、効率性や利便性が高まった一方で、金
融リスクも拡大している」という警鐘の反論としてとらえられた
ものと思われます。ジャック・マー氏は、習近平国家主席の怒り
を買ったのです。
 このように、これまで一世を風靡してきた中国のプラットフォ
ーマーのビジネススタイルには逆風が吹いているのです。これは
アリババだけでなく、中国のグーグルといわれるテンセントに対
しても規制の網がかけられようとしています。
              ──[デジタル社会論/033]

≪画像および関連情報≫
 ●一気に加速する中国プラットフォーマーへの統制強化
  ───────────────────────────
   スマートフォン決済のアリペイを提供するアリババ(阿里
  巴巴集団)傘下の金融会社アント・グループは、2020年
  11月に香港と上海に上場し、4兆円規模の資金調達を実施
  する予定だった。しかし、その直前に当局によって上場延期
  に追い込まれる、というまさに異例の事態となった。
   これは、金融分野などへもビジネスを急拡大させてきた中
  国プラットフォーマーに対して、当局が統制を強化させ始め
  た象徴的な事件だ。実際、これを契機に、規制強化の動きが
  一気に加速したのである。
   上場延期の決定から僅か数日後には、巨大ネット企業の独
  占的な行為を規制する新たな指針の草案が公表された。巨大
  ネット企業が競争を大きく阻害する市場支配力を手にし、ま
  た消費者データを悪用して消費者の権利を侵害しているとの
  懸念を理由に、当局は監視・規制の強化に乗り出したのであ
  る。EC(電子商取引)市場で圧倒的なシェアを握るアリバ
  バは、その市場支配力で中小・零細企業を破綻に追い込み、
  また優越的な立場を利用して、取引先に対して不当な圧力を
  かける行為が長年問題視されており、この新たな指針は、主
  にアリババが念頭に置いたものと考えられる。
   また中国政府は、スマートフォンのアプリを通じた個人情
  報の収集を規制する方針を打ち出している。情報収集の際に
  は必ず利用者の同意を得たうえで、決められた項目以外は集
  めてはならないとしている。   https://bit.ly/3s8jVyn
  ───────────────────────────
王岐山国家副主席.jpg
王岐山国家副主席
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
【国家安康の言霊】「家康(すこ)やかにして国安らぐ」
【仏教聖典第237版 ほとけ 勝(すぐ)れた徳】
hougakumasahiko.muragon.com/entry/146.html
首相官邸ホワイトハウスインターネットメディアへメール送信
「 国家安康の言霊」
 原初生命は海を母胎として父なる太陽の光が降り注ぐ地表の浅い海で生じました。
 人は誰もが父親と母親の間に児として生まれ元服成人して人の親となります。
親思う心にまさる親心(吉田松陰)
味噌汁は命育む母の手よ焙じ茶番茶は父の楯也(私作)
 戦国の覇者信長秀吉家康は海山が広がる中部地方の生まれですが、
天寿を全うし国を安らげたのは東海の家康です。
東海は海の幸の塩と山の幸のお茶が鎌倉時代から栽培されていました。
塩は身体を温めて動物が元気に動く活力の源です。
お茶の葉のカテキンはあらゆるウイルスを身体の内外で消毒不活化します。
 三人のうち幼児期天然痘に罹って死にかけたのは家康ですが、
乳母が己を捨てた親心で懸命に看護したお蔭で無事快復し元服成人できた家康は、
死ぬまで乳母が施してくれた親心の深く高い恩を忘れず、
報恩感謝の心で15代250年戦を止め日本国の天下万民を安んじた徳川幕府の祖となりました。
 子孫の我々も神君家康権現ご先祖様に学び習って、
塩とお茶の山海鍋を囲む和やかな団欒で一家全員康(すこ)やかに、
日光をたっぷり浴びて屋外で元気に働く勤勉な晴耕雨読で銘々が互いに親切し合い感謝し合って、
天下無双島国日本から地球国家を安んじましょう。
家康やかにして国安らぐ。

hougakumasahiko.muragon.com/entry/127.html
___
竹千代時代天然痘に罹った話
youtube.com/watch?v=UpNn3rThfE8
【伝説】徳川家康 影武者説の真実『徳川の歴史から消された異母兄弟・穎新』、少年時代の竹千代を難病から命懸けで救った『侍女・於松の悲話』「早わかり歴史授業36 徳川家康シリーズ4」日本史 - YouTube

家康は天下を仏法仏道で治めるために幕府を開いた話
youtube.com/watch?v=V1kF1Z2rlJc
信長との桶狭間の戦いの敗戦から岡崎城主へ 徳川家康の人質生活から自立「早わかり歴史授業38 天下人 徳川家康シリーズ6」日本史 - YouTube
Posted by 豊岳正彦 at 2021年02月21日 23:13
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