2021年02月17日

●「プラットフォマーによる金融進出」(第5430号)

 BIS(国際決済銀行)の調査によると、プラットフォーマー
の業務範囲は、次のようになっています。
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  ◎プラットフォーマーの分野別収入構成
   コミュニケーションサービス ・・・ 14・8%
   消費財 ・・・・・・・・・・・・・ 21・6%
   IT技術およびコンサルティング ・ 46・2%
   金融 ・・・・・・・・・・・・・・ 11・3%
   その他 ・・・・・・・・・・・・・  6・1%
         ──2018年BIS経済年次レポートより
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 上記構成比のなかで最大は、「IT技術およびコンサルティン
グ」の46・2%ですが、「金融」も11・3%と、既にコア業
務の一角を担う規模になっています。プラットフォーマーは、今
後支払いや送金などの決済業務を皮切りに、続々と金融業に参入
してくるのは必至であり、それは、既存の金融機関や金融当局に
とって大きな脅威になりつつあります。
 ここで研究すべきは、中国のモバイル決済の2大プラットフォ
ーマーといわれる次のグループです。
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   1.     アリペイ ・・ アリババグループ
   2.ウィーチャットペイ ・・    テンセント
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 米国の「GAFA」に対して、中国では「BAT」といわれま
す。Bは「バイドウ」、Aは「アリババ」、Tは「テンセント」
を表しています。バイドウは検索エンジンを提供し、中国のグー
グルといわれています。アリババはネットショッピング(電子商
取引)、テンセントはSNSを提供しています。これに、ファー
ウェイを加えて「BATH」ともいいます。このうち、アリババ
とテンセントは、スマホで簡単に操作できる決済サービスから、
金融業に深く入り込んでいったのです。
 アリババグループは、アマゾンを念頭に置いて、決済サービス
から金融業に入っています。これについて、立教大学の田中道昭
ビジネススクール教授は、アマゾンとアリババ、それからSNS
のテンセントについて、次のようにコメントしています。田中教
授は、『アマゾン銀行が誕生する日』(日経BP)の著者です。
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◎アマゾンに対して
 アマゾンは、銀行業の免許を取得しなくてもすでに金融サービ
スを展開しています。アマゾンに出店している法人向け融資「ア
マゾンレンディング」や、銀行口座を持たない人のネット通販を
可能とする「アマゾンキャッシュ」や「アマゾンギフト」などで
決済・融資・預金と、主要な金融業務を網羅しています。
◎アリババに対して
 アリババも、アマゾンと同じようにEC事業から物流、実店舗
クラウドへと展開しました。しかし当初から金融決済に力点を置
き、決済アプリ「アリペイ」を全ての商取引の入り口にした点が
独創的でした。ビッグデータを活用した生活サービスを提供して
アリババ経済圏を拡大しており、銀行、証券、保険、投資信託な
どを合計した金融資産額は日本のメガバンク並みです。
◎テンセントに対して
 2019年6月時点で最先端のフィンテック大国は、米国では
なくAI技術などの社会実装が進む中国でしょう。IT巨大企業
のアリババが先行し、交流サイト(SNS)のテンセントが追う
構図で、テンセントは、小売部門が手薄なものの、顧客接点の多
いSNSを使えるのが強みです。   https://bit.ly/3daGGxn
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 そして、田中道昭教授は、アマゾン、アリババ、テンセント、
これら3社は、間違いなく次世代の国際金融界におけるメーンプ
レーヤーであるというのです。
 このような動きに対して、日本は何をしているのでしょうか。
田中教授は、楽天、LINE、ソフトバンク、SBIの4社に注
目しているといいます。なかでも最大の注目ポイントは、ソフト
バンクであるといい、次のように述べています。
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 孫正義会長兼社長は、米国ではアマゾン創業者のジェフ・ベゾ
ス氏やフェイスブックマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者す
らしのぐとの評価もあります。ペイペイへの増資はEC事業や金
融サービスを中核にした新たなビジネスモデルを構築する第一歩
とみます。ペイペイを重要な入り口としてライドシェアや通信・
エネルギーまでを結びつけ、さまざまなサービスに顧客を誘導す
るシステムを構築するのでしょう。金融事業においては正直これ
までソフトバンクに出遅れ感がありましたが、経営の決定スピー
ドは早いです。一見アリババの経営手法に似ています。孫会長は
同社の筆頭株主として取締役会メンバーでもあります。
                  https://bit.ly/3deWLlq
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 日本において、先行しているように見えるのは、傘下に銀行、
証券、損保を持つ楽天です。しかし、楽天はその経営戦略におい
て、いくつか問題点があります。とはいってもプラットフォマー
が金融業務に力を入れると、楽天のように、その高い知名度や顧
客への浸透力を生かして、投資信託や生損保商品なども、そのプ
ラットフォームで提供するようになるはずです。
 そのような事態になると、プラットフォーマーは、既存の銀行
や証券会社、保険会社などの金融機関のサービスでは実現できな
い、高い利便性を顧客にもたらすことになるのは必至です。これ
に対して、銀行、証券、損保、生保などの既存の金融機関はどの
ように対処すればよいでしょうか。つまり、既存の金融機関は、
これまで戦ったことのない相手と熾烈な戦いをしなければならな
くなります。        ──[デジタル社会論/031]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の金融は、自らが次代のプラットフォーマーとなれ」
  20年越し、JSOL江田氏の執念
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   特徴かつ長所の一つだと思いますが、日本の金融機関は、
  内部に大量かつノイズの少ないデータを保管しています。た
  とえば、銀行が保管しているお客さまの入出金明細もその一
  つです。
   ところが、この財産は長い間眠った状態で、利用は限定的
  でした。現在、劇的にAI(人工知能)などの数理技術が進
  歩し、計算コストが下がったことで、過去から蓄積されたデ
  ータが、莫大な価値に転換しうる時代に入っています。他国
  の金融機関や他の産業、とりわけGAFAのようなプラット
  フォーマーにとっては、垂ぜんのデータだと思います。
   ただし、金融機関にとって、この長所を活かせるモラトリ
  アムは長くありません。デジタルデータとその供給者は増加
  の一途で、アグリゲーターはそれらを吸引しながら重力を増
  してきています。SNSなどのデータは、今のところ単体で
  は質量は軽くて弱い吸引力しか持ちませんが、異種混合に重
  元素が合成されはじめると、2年程度内に、巨大なデータプ
  ラットフォーマーが出現するかもしれません。
   金融機関は、オイシイデータの供給者としてわずかなフィ
  ービジネスを志向するのか、自らが既存の資産を活かしてブ
  ラックホールとなるのか、そんな岐路に立っているように思
  います。もう一つ、日本の金融機関の長所は、大量に優秀な
  人財を抱えていることです。こちらの財には、短期間で他者
  がキャッチアップできない価値が具備されています。データ
  がインテリジェンスに転換された後、それを実現するのは、
  人間です。金融機関にプラットフォーマーのポジションを期
  待する理由がここにあります。  https://bit.ly/3ajdVMU
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アリババグループ創業者/ジャック・マー氏.jpg
アリババグループ創業者/ジャック・マー氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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