2021年02月09日

●「リブラは果して儲かるビジネスか」(第5425号)

 リブラ協会の話の続きです。リブラは、世界の主要通貨のバス
ケットに連動しています。この通貨バスケットというのは、通貨
の交換価値を決めるさいに、複数の通貨を入れた「バスケット」
を想定し、それを1つの通貨と見立てて交換レートを算出する方
式のことです。ドイツのニュース週刊誌「デア・シュピーゲル」
の報道によると、割合は次のようになっています。
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       米ドル ・・・・・・・ 50%
       ユーロ ・・・・・・・ 18%
       円   ・・・・・・・ 14%
       ポンド ・・・・・・・ 11%
       シンガボールドル ・・  7%
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 このバスケットに中国の人民元が入っていないことに対して、
デビット・マーカス氏は、議会証言として「入らない」と明言し
ています。中国は米国に次ぐ世界第2位の経済規模を誇るにもか
かわらずです。おそらくフェイスブックとしては、フェイスブッ
クが中国で禁止され、リブラを普及させることへのハードルが高
いと判断したものと思われます。
 これについて、日本経済新聞の藤井彰夫氏と西村博之氏は、次
のように述べています。
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 中国に対する米議会の警戒感も背景にあるようだ。バージニア
州選出のマーク・ワーナー上院議員はフェイスブック宛ての書簡
で、中国が人民元を外貨準備に加えるよう各国に圧力をかけてい
ると指摘し、リブラを裏付ける通貨に人民元が含まれないことを
確約するよう求めている。米中摩擦が激しくなるなか、人民元を
バスケットに含めることで、ただでさえリブラに批判的な世論を
刺激するのはフェイスブックにとって得策でない。ただ、フェイ
スブックはワーナ−議員の書簡に応える形で議会に宛てた書簡で
こうも記している。「新たな通貨をリブラの準備基金に加えるか
どうかは、そのときの事実や状況によっで決めることになる」。
人民元を含める可能性を完全に排除したわけではない。
      ──藤井彰夫/西村博之著/日経プレミアシリーズ
            『リブラの野望/破壊者か変革者か』
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 リブラの通貨バスケットにシンガポールが入っていることは注
目すべきことです。シンガポールは、金融市場や法的インフラが
発達しており、安定的に通貨や国債を取引できることに加えて、
いわゆるフィンテックを国策として強化していることがバスケッ
トに加えられた理由と考えられます。
 リブラのもうひとつの大事な特色は、リブラには資産の裏付け
があることです。具体的にいうと、預金や国債を保有し、それに
よってリブラの価値を裏打ちする仕組みになっています。これを
「リブラ・リザーブ」と呼んでいます。
 ビットコインには、裏付け資産がないのです。この場合、市場
の価格は需要で決まり、それを買いたい人が多ければ値上がりし
逆に売りたい人が多ければ値下がりします。現在、ビットコイン
は高騰していて、本稿執筆時の2月7日現在、ビットコインは、
「1ビットコイン=414万0576円」にまで上昇しているの
です。こうなってしまうと、ビットコインは投機商品であっても
通貨としては機能しなくなります。リブラの設計者は、こうした
ビットコインの通貨としての欠陥を踏まえて、その価値を資産で
裏打ちする仕組みを考えたのです。
 これは、2月5日のEJ第5423号でも書いていますが、リ
ブラは現金に代替されやすく、普及し易いのです。何しろフェイ
スブックの利用者は27億人であり、これは世界の人口73億人
の37%を占め、3人に1人は使っている計算になります。もし
フェイスブックの利用者が、一斉にリブラを使い始めると、かな
りのスピードで、世界中に流通している現金は減少してしまうこ
とになります。
 仮に世界の現金発行額の37%(フェイスブック利用者)をリ
ブラが代替すると、現金は11・5兆ドル(約1240兆円)減
少してしまい、それによる中央銀行の利子所得は減少し、その代
り、リブラ協会は大儲けできることになります。
 リブラ協会は、リブラの発行と引き換えに受け取る代金を主要
法定通貨で構成される銀行預金や短期国債などのかたちで、リブ
ラリザーブとして保有しますが、これが莫大な運用収益を生む可
能性が高いのです。
 もし、リブラが世界中の現金11・5兆ドルを代替したとする
と、どうなるかについて、既出の木内登英氏が予測しています。
 この場合、11・5兆ドルのリザーブをリブラ協会が保有する
ことになります。この11・5兆ドルをすべて米国短期国債で保
有すると、現在でも年率2%程度の利子所得が発生することにな
り、その規模は2300億ドル(25兆円)に及ぶのです。
 この金額は、リブラシステムの運営費に使われますが、リブラ
教会のメンバー(出資者)に配分されるのです。リブラ協会のメ
ンバーは、現在は21組織ですが、これを100組織まで増やす
ことが計画されています。
 メンバーになるには、1000万ドル以上を出資することが条
件とされていますが、仮に100の組織が、それぞれ1000万
ドルを出資して、リブラ協会に加入したとすると、その場合、リ
ブラ協会を構成するそれぞれの組織は、2300億ドルの100
分の1である約23億ドルを毎年手にすることになるのです。こ
れは、出資額1000万ドルの実に230倍の利益を上げること
になります。もっとも全てのことがうまくいった場合の予測に過
ぎませんが、リブラは相当儲かるビジネスになる可能性はありま
す。これに対して、中央銀行を含む世界の銀行は当然反対するこ
とは明らかです。銀行は、リブラ協会に入ることはできないから
です。           ──[デジタル社会論/026]

≪画像および関連情報≫
 ●FBの仮想通貨「リブラ」でクレジットカードは20世紀の
  遺物になる/2020年2月/大前研一氏
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   2019年10月、米下院金融委員会の公聴会に世界最大
  のSNSであるフェイスブック(FB)社のマーク・ザッカ
  ーバーグCEOが出席した。ザッカーバーグ氏といえば、F
  Bの個人情報が不正流出した問題で18年4月にも米上院の
  公聴会に出席して陳謝、問題への対処とプライバシー保護の
  取り組みについて説明している。そのザッカーバーグCEO
  が再び公聴会に出席した理由、それはFB社が発行を予定し
  ている仮想通貨「リブラ」の安全性について証言をするため
  である。
   19年6月、FB社は、かねて計画を進めてきた独自の仮
  想通貨リブラを20年にスタートすると発表した。仮想通貨
  というと価値が乱高下して投機の対象になった「ビットコイ
  ン」などを思い起こす向きもあるだろうが、リブラは従来の
  仮想通貨とは異なる。これまでの仮想通貨は発行・運営母体
  が不在で価値の裏付けもなかった。
   しかし、リブラの場合、リブラの普及や運用を専門に行う
  FBの子会社「カリブラ」をはじめ、クレジット大手のビザ
  やマスターカード、ネット決済大手のペイパル、配車サービ
  ス大手のウーバー・テクノロジーズ、音楽配信大手スポティ
  ファイなど28の民間企業・団体で創立した「リブラ協会」
  が主導してリブラの運営、監督を行う予定になっている。
                  https://bit.ly/3jof0WT
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リブラ協会.jpg
リブラ協会
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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