2021年02月03日

●「アップルVSフェイスブック対立」(第5421号)

 2021年2月1日付、朝日新聞朝刊3面に次の記事が出てい
ます。見出しとリード文を示します。
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 ◎アップル vs FB 鮮明/個人情報保護めぐり対立
   個人情報保護をめぐり、米アップルと米フェイスブック
  (FB)の対立が鮮明になっている。アップルが1月、プ
  ライバシー保護策強化のため、iPhone 上などでアプリに
  よる追跡を許すかどうか今春から利用者に通知すると発表
  したのが発端だ。FBは、アップルに対し、独占禁止法違
  反の提訴も検討していると報じられ、巨大IT同士の異例
  な対立に発展している。
       ──2021年2月1日付、朝日新聞朝刊より
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 アップルからすると、「GAFA」とひとくくりにされて、そ
こで取得される個人情報の扱いまで同列に見られることに強い違
和感を感じています。とくに、フェイスブック(F)とグーグル
(G)VSアップル(A)では、そのビジネスモデルが違うから
です。現在、とくに関係が先鋭化しているのは、FBとアップル
の関係です。
 アップルは、PCのメーカーであると同時にアイフォーンやア
イパットなどの機器を売り、アプリや有料の音楽、動画サービス
で儲けるビジネスであるのに対して、FB(グーグル)は、無料
のサービスを提供する提供する見返りに、広告収入を得るビジネ
スです。明らかにアップルとはビジネスモデルが違うのです。
 今回アップルが打ち出したのは、端末ごとに割り振られた「広
告主向け識別子」と呼ばれる情報をアプリ企業が取得するさい、
ユーザーに対して同意を求める仕組みです。この場合、ユーザー
が同意を拒否してもアプリは使えるのです。
 もう少し具体的にいうと、例えば、アイフォーン上で、あるア
プリを開いたときに、次のメッセージが出て、利用者の意思を問
うスタイルです。
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 このアプリが、あなたの利用履歴を他のアプリやウェブサイト
上でも追跡することを許しますか。     YES   NO
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 おそらくユーザーのほとんどはこのようなメッセージが出れば
「NO」を選ぶはずであり、アプリから得られる情報をターゲッ
トにして広告収入を得るフェイスブックのビジネスモデルにとっ
て大打撃になります。
 アップルのこの方針に対し、フェイスブックのCEOマーク・
ザッカーバーク氏は、異例の強い批判を口にし、近く独禁法む違
反で訴訟を起こす準備を進めているといいます。
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 アップルは、自分たちが支配的なプラットフォーム(iOS)
を持っているという立場を使い、われわれや他のアプリの邪魔を
するあらゆるインセンティブ(動機)を有している。
               ──マーク・ザッカーバーク氏
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 現在、アップルの機器は全世界で16億5千万台を超えて普及
しており、フェイスブックやグーグルは、その機器上で無料のサ
ービスを提供することで、いわゆるウインウインの「共存関係」
を築いてきたのです。しかし、昨今のプライバシー保護への関心
が高まるなか、アップルとしては、自社の機器上でフェイスブッ
クなどが情報収集を行うことへの透明性を高めることが必要であ
ると判断したのです。
 これは、フェイスブックにとっては、自らのビジネスの根幹に
関わることであるので猛然と反対し、アップルとの対立が鮮明に
なっているのです。それにアップルがこの対応を取ると、「アン
ドロイド」というスマホのOSを持つグーグルも、アップルと同
調せざるを得なくなります。
 GAFAに関しては、反トラスト法(日本の独占禁止法)によ
る取り締まりに向けた動きが既に始まっており、2019年6月
には、米司法省と米連邦取引委員会(FTC)が、その捜査の管
轄分担に次のようにすることで、合意しているのです。
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        グーグル/アップル ・・ 司法省
     フェイスブック/アマゾン ・・ FTC
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 GAFAへの反トラスト法適用に関して、既出の木内登英氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 米国でも、GAFAを反トラスト法で取り締まることは以前か
ら議論されてきたが、議論がなかなか進まなかった。その背景に
は、従来、反トラスト法は、独占状態下で不当に高い価格を消費
者に押し付け、不利益を生じさせている企業を取り締まることを
目的にしてきたことがある。GAFAの提供するサービスは、既
に見たように無料あるいは、低価格のものが多いことから、従来
の法解釈の下では、GAFAの独占を違法とすることは難しかっ
たのである。これに対して米司法省は、新たな解釈を用いて現行
の反トラスト法を適用してGAFAを取り締まる方向に舵を切っ
たのである。        ──木内登英著/東洋経済新報社
    『決定版リブラ/世界を震撼させるデジタル通貨革命』
─────────────────────────────
 考えてみると、米司法省と米連邦取引委員会(FTC)が捜査
分担で合意したのは2019年6月のことです。2019年6月
といえば、6月18日にフェイスブックが「リブラ」を発表して
いるのです。GAFAへの批判が高まりつつあるそのような時期
に、フェイスブックは、なぜ、新仮想通貨「リブラ」を公表した
のでしょうか。その狙いは、一体何でしょうか。
              ──[デジタル社会論/022]

≪画像および関連情報≫
 ●米GAFA、なぜ分割論?
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   GAFA分割論は、米議会下院司法委員会の反トラスト小
  委員会が、強大になったGAFAの支配力を抑え込むことを
  目的に、米国版独占禁止法である反トラスト法改革を提案し
  たことがきっかけだ。
   反トラスト小委員会は、大企業には厳しい態度で臨むこと
  が多い民主党が主導。提案に伴って、GAFAが反トラスト
  法に違反していることを1年4か月にわたって調査した報告
  書を公表。それによると、4社は協力の市場支配力を得てお
  り、競争環境を歪めており、小委員会では、その是正のため
  には反トラスト法の抜本改革や会社分割が必要と提言してい
  る。GAFAについては、それぞれの市場の「プラットフォ
  ーマー」だが、報告書での定義は「ゲートキーパー」。「門
  番」という意味だが、ここでは、「取捨選択する権限を持つ
  者」を表す。それぞれが支配する市場へのアクセスを条件に
  不当な契約を押し付けたり、買収を繰り返したりして独占状
  態を築いた。
   その結果、じつはイノベーション(技術革新)が滞り、消費
  者の選択の幅を狭め、引いては民主主義が制約を受けた――
  というのが反トラスト委員会の言い分だ。この反トラスト小
  委員会の報告書について、トランプ大統領を支持する共和党
  は賛同しておらず、議会で承認され、実現する公算が大きく
  はない。            https://bit.ly/3atA3TX
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GAFA.jpg
GAFA
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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