2021年01月28日

●「22年にデジタル人民元スタート」(第5417号)

 2021年1月25日付の朝日新聞の第2面に次の大きな記事
が掲載されています。
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 ◎デジタル人民元/10万人実験
  中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の開発や研
 究が、各国で加速している。先行する中国は2022年の発
 行を目指し、日本銀行も今春にも実証実験に着手している。
 今後の動向次第では、金融システムや国際的な通貨体制にも
 影響する可能性があり、各国のせめぎ合いも激しくなってい
 る。       ──2021年1月25日付、朝日新聞
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 デジタル人民元とは何でしょうか。
 デジタル人民元とは「中国のデジタル法定通貨」のことです。
現在流通している現金(人民元)のデジタル版ですが、既存のア
リペイ(支付宝)、ウィーチャット(微信)などのスマホ決済サ
ービスと、「国家が管理する法定通貨であるため、法律により強
制通用力が付与されることや、停電時やオフラインでも支払いが
できる」などの点で異なり、中央銀行がコントロールする通貨と
いうことで、絶対的な信用が担保されています。
 そもそも中国が、デジタル人民元の発行に本腰を入れるように
なった背景には、フェイスブックが発行しようとしている「リブ
ラ」の存在があります。かつて中国は、ビットコインを通じた資
本流出を経験しており、「リブラ」には相当警戒心を強めていま
す。フェイスブックは、現在、27億4000万人のユーザーが
おり、その影響は甚大なものになるからです。
 加えて、米国の大統領がトランプ氏からバイデン氏に交代した
とはいえ、一向に収束の兆しの見えない「米中対立」についても
中国政府がデジタル人民元の開発を急ぐ要因にもなっています。
中国としては、ドルからの脱却は、米国と対峙する有力な手段で
あると考えているからです。
 デジタル通貨導入の準備体制を判断する指標の一つとして、国
や地域の現金の流通額による差があります。
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              各国の現金の流通額
          中国       8・3%
      スウェーデン       1・3%
          日本      21・3%
        ユーロ圏      11・1%
          米国       8・3%
     GDPに対する割合。国際決済銀行(BIS)による
           ──2021年1月25日付、朝日新聞
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 現金の流通額のGDPに対する割合で見ると、日本は先進国で
はダントツの21・3%で、どこでも現金が得られる環境にあり
ます。そのため、日本銀行は実証実験は行うものの、「発行計画
はない」としており、導入には消極的です。
 先進国で最も準備が進んでいるのはスウェーデンで、GDPに
対する割合は1・3%と電子決済サービスが進んでいます。現在
民間業者と組んで、技術面の実験を行っていますが、それでも実
際の発行時期はまだ決まっていません。
 欧州連合(EU)は、個人情報保護に熱心であり、GAFAM
に代表される米IT大手企業が市場で独占的地位を悪用している
と批判を強めています。「リブラ」の公表を受けて、その対抗上
デジタル通貨についてタスクフォースを立ち上げ、検討を始めた
ところです。
 米国も中央銀行によるデジタル通貨については、金融政策の効
果の低下や、不正送金の増加など、金融システムへの懸念を強め
ています。FRBのパウエル議長は、デジタル通貨の評価作業を
行っているとして、次のように述べています。
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 この問題はまさにアメリカにとって、一番に行うことよりも正
しく行うことが重要と考えている。ドルが世界的に重要な役割を
担っていることを考えると、研究と政策開発の最前線に留まるこ
とは不可欠。ドルは世界の基軸通貨であり、ドルに対する世界的
な大きな需要は引き続き存在している。
 2020年11月21日/IMF会合──FRBパウエル議長
                  https://bit.ly/3ojngrM
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 結局、この問題で一番積極的で、実施時期も決まっているのが
中国だけということになります。中国は、2022年の発行を目
指し、冬季五輪までに実施するとして、一般市民による実証実験
もスタートさせています。
 こうした中国の動きに対し、甘利明衆議院議員は、中国とは名
指ししないものの、中国を念頭に次のように述べています。
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 米ドルの基軸通貨体制に代って、CBDCで覇権を握ろうとす
る国が出てくれば、混乱や争いが生ずる。    ──甘利明氏
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 デジタル通貨は、最初にそれを定着させた国がその後の競争で
優位に立つ「先行者利益」が大きいといわれます。経済覇権を争
う米国が「デジタルドル」に慎重な立場を崩さないなか、中国人
民銀行(中央銀行)は、「デジタル通貨の先駆者にならなければ
ならない」と強調し、早期の導入で競争の主導権を握る姿勢を鮮
明にしています。
 つまり、中国は、基軸通貨であるドルへの強い対抗意識を持っ
ていて、ドルをベースに国際的な資金決済を行う国際銀行間通信
協会(SWIFT)に対し、2015年には、元ベースの国際銀
行間決済システム(CIPS)を立ち上げるなど、米国主導の金
融秩序からの脱却を目指しています。デジタル元は2022年ス
タートを明言しています。  ──[デジタル社会論/018]

≪画像および関連情報≫
 ●「デジタル人民元」ついに登場?流通現金に代わるか
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   中国人民銀行(中央銀行)の関係責任者はこのほど公開の
  場で、「現在、デジタル通貨システムの開発を進めており、
  『デジタル人民元時代』がまもなく訪れる」と明かした。人
  民銀がデジタル通貨を打ち出すのはなぜか。人民銀のデジタ
  ル通貨はネット決済やいわゆる「仮想通貨」とどのような関
  連や相違があるのか。人民日報海外版が伝えた。
   人民銀がデジタル通貨の発行を研究するのは思いつきでは
  ない。2014年から現在まで、すでに5年にわたりデジタ
  ル通貨の研究を行い、17年には中国人民銀行デジタル通貨
  研究所も設立された。現在、同研究所が出願中のデジタル通
  貨技術関連の特許は74件に上る。
   ここ数年、インターネット科学技術、特にブロックチェー
  ン技術の発展にともなって、世界でさまざまな「仮想通貨」
  が誕生している。例えば最近よく話題になるビットコインや
  ライトコインなどがそうだ。それでは人民銀が今回発行する
  デジタル通貨は、こうした商業的な「仮想通貨」と何が違う
  のか。通貨の属性を考えると、ビットコインなどの「仮想通
  貨」は本質的には通貨ではない。「仮想通貨」は国が発行す
  る法定通貨が国の信用を後ろ盾にしているのとは異なり、そ
  の投機性が監督管理の厳格化や技術的問題といった要因の影
  響を受けるため、価格が大幅に上下動しがちであり、また自
  国や世界の通貨金融システムの正常な秩序を大きく揺るがす
  こともある。          https://bit.ly/3sVQIrx
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デジタル人民元/米国は経済覇権を守れるのか.jpg
デジタル人民元/米国は経済覇権を守れるのか
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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