2021年01月22日

●「COCOAは本当に役に立つのか」(第5413号)

 「データは新しい人権である」──そういう時代において、ス
マホの個人データが新型コロナウイルスの感染拡大防止に有効で
あると実証されつつあるのがコロナの「追跡アプリ」です。
 韓国のコロナ追跡アプリに「コロナ100M」というのがあり
ます。これは、ユーザーが新型コロナの患者から100メートル
の距離に来たら教えてくれるというアプリです。
 韓国疾病対策センターなど、政府系機関から情報を得て、感染
者の国籍や年齢、性別、移動履歴などを地図で示すというもので
す。同様に地図で感染者の移動履歴を示す「コロナ・マップ」と
いうアプリも人気になっているそうです。
 韓国では、氏名は伏せるものの、クレジットカードの利用履歴
やスマホの位置情報、防犯カメラの映像も分析して、感染者のお
おまかな住所のほか、行動をたどり、立ち寄った店などが分刻み
に公開されています。アプリのユーザーは、これを見ることによ
り、感染のリスクを避けることができるというものです。
 民主諸義国として、韓国は個人情報を相当大胆に使っている国
といえますが、中国は、位置情報のほか、病院の診察データも連
動させて、監視するアプリを開発しています。QRコードを色で
3分類しているのです。アプリを開発したのは、中国のネット2
強であるアリババとテンセントです。
 どのようなアプリであるかは、日本経済新聞記者の次のレポー
トをご覧ください。
─────────────────────────────
 「健康コード見せてください」。記者が取材先を訪れると、受
付で必ず声をかけられる。スマホをとりだし、アプリを起動して
QRコードを見せる。この色が感染状況を表す。
 赤色は「感染」、黄色は「濃厚接触の疑いまたは隔離が必要」
緑色は「問題なし」だ。当局が個人ごとに状況を判断して色を変
える。コード確認は空港や駅のほか、飲食店や商業施設でも求め
られる。記者の場合、週に一度通うスポーツジムも提示しないと
入れない。3月に日本に一時帰国した同僚は、中国に戻るとしば
らくコードは黄色になった。2週間の自宅隔離となったため実際
に入店を拒否されたことはないが、ルールを守らない人がいた場
合はコードが役に立つのだろう。アプリの利用は強制ではない。
だが、最近では一部で緩みもあるとはいえ日常的に多くの場所で
提示を求められるため、事実上は義務に近い。
               https://s.nikkei.com/2LRo2PD
─────────────────────────────
 問題は日本です。日本は、国家がテクノロジーを使って、デジ
タル監視することを最も嫌う国です。マイナンバーカードが普及
しないのは、日本人がICTが苦手であるだけでなく、カードが
様々な個人情報と紐づけられるのを嫌うからです。そういう国民
性を十分意識して、厚生労働省が構築したのが、コロナ接触確認
アプリ「COCOA」です。「COCOA」とは何でしょうか。
それは、次のことを意味しています。
─────────────────────────────
   ◎COCOA/新型コロナウイルス接触確認アプリ
       COVID-19 Contact-Confirming Application
─────────────────────────────
 COCOAは、「接触確認アプリ」という名称で、ITエンジ
ニアなどで作る複数のグループがボランティアで開発を始めたも
のです。その主導的な役割を担ったのは、コード・フォー・ジャ
パンという企業です。もっとも最終的に決まったアプリについて
は、民間の開発した複数のアプリのどれかを選ぶのではなく、厚
生労働省が一つのアプリとして提供することになったのです。そ
の基本的設計仕様は、コード・フォー・ジャパンの仕様と酷似し
ています。
 COCOAを含むこうした追跡アプリの仕様は、スマホに内蔵
されたブルートゥースという通信技術を使います。ちなみに日本
における濃厚接触の定義は「1メートル以内かつ15分以上の接
触」となっています。
 COCOAのアプリをダウンロードしたスマホ同士がすれ違う
と、ブルートゥースによって、お互いにデータを記録する仕組み
になっています。
 問題はCOCOAの仕組です。通常は次のように理解されてい
ます。このアプリのユーザーが、PCR検査を受けるなどした結
果、コロナに感染し、陽性になったとします。その場合、感染者
は自らその旨をアプリに登録します。当然それが正しいかどうか
のチェックが行なわれ、陽性の登録が行なわれます。この陽性の
登録が行なわれたスマホが、他のCOCOAがダウンロードされ
ているスマホとすれ違うと、そのスマホに陽性者との接近が記録
されるのです。
 しかし、このシステムの場合、陽性者がCOCOAを利用して
いなかったり、利用していても陽性登録をしない場合、まったく
役に立たないことになります。
 実はCOCOAも様々なバージョンアップが行なわれているよ
うです。例えば、「iOS13・7」からは、「設定」には「接
触通知」(赤色)ボタンが登場しています。そのボタンをタップ
し、「接触ログ記録の状況」を「→」します。そして「接触チェ
ックの記録」をタップすると、日ごと、時刻ごとに、厚生省から
提供されたキーのリストを見ることができます。なお、8日以前
のものは表示されません。
 要するに、COCOAのアプリがインストールされているスマ
ホ同士がすれ違うと、それぞれのキーが記録されます。医療機関
などで、感染が確認されたCOCOAユーザーは、過去14日間
に自分が送信したキーを任意で提出すると、厚労省はそれをまと
めて、毎日COCOAユーザーに配信します。これが一致するス
マホには、感染者との接触が通知される仕組みになっているので
す。これについて、来週のEJで、より詳しく解説します。
              ──[デジタル社会論/014]

≪画像および関連情報≫
 ●接触追跡アプリはなぜ役に立っていないのか?
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの接触追跡アプリは、多くの難問に突
  き当たっている。だが、サイエンス誌に掲載された新しい評
  論の執筆者によると、この構想自体をあきらめる必要はない
  という。その代わり、執筆者たちの主張によれば、接触追跡
  アプリの成功には、倫理的で信頼が置けること、地域に根ざ
  していること、新しい有効なデータに適応できる必要がある
  という。
   現代の公衆衛生は、感染症の突発的発生時に接触者を追跡
  することが前提となっており、接触追跡アプリは新型コロナ
  ウイルス感染症との戦いに大きく貢献するものとして期待さ
  れてきた。パンデミックの初期において、各国政府と企業は
  新型コロナウイルスの拡散防止策の一環として、接触追跡ア
  プリを立ち上げた。意外なことに、グーグルとアップルもこ
  の取り組みに参加している。だが、現在では、接触追跡アプ
  リによって新型コロナの拡散に歯止めをかけられるという前
  提には欠陥があることが明らかになってきている。アプリの
  ダウンロード率は低く、使用率はさらに低い。さらに運用の
  課題にも直面している。手作業にせよ自動にせよ、接触追跡
  という手法は必要とされる規模に達していないのだ。最近の
  ピュー研究所の調査によると、人々は公衆衛生当局を信頼し
  て自身のデータを提供することを躊躇しており、保健所など
  の知らない人からの電話に出ない、といった別の問題点も明
  らかになっている。       https://bit.ly/3o1XpV8
  ───────────────────────────
COCOAの画面.jpg
COCOAの画面
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]