2021年01月21日

●「監視資本主義とデジタル民主主義」(第5412号)

 「シュタージ2・0」の話の続きです。現在、シュタージ──
東ドイツ秘密警察・国家保安省の本部は、建物が博物館となって
おり、この博物館に行けば、シュタージのかつての活動を見るこ
とができます。シュタージは、対外諜報活動に加えて、当時の東
ドイツの国民のあらゆることを知ろうとし、盗聴器が家の壁やコ
ンセントの中、自動車のドアの内部などに仕掛けられ、電話が盗
聴されていたのです。完全な監視社会です。
 当局が少し問題があると判断した人物には、多くの監視員が市
中に紛れ込み、隠しカメラで写真を撮り、その行動を監視し、ど
こで、誰と会い、どんな表情をしていたかにいたるまで記録して
膨大なデーターベースを構築しています。郵便物はもちろん配達
前に開封され、中身が調べられ、気が付かないように封印されて
いたのです。このデーターベースは現在も保存されており、本人
が、自分のファイルに限り、閲覧することができます。
 ドイツ緑の党の国会議員で、デジタル分野に精通しているコン
スタンティン・フォン・ノッツ氏は、データの保護に関して、次
のように警告を発しています。
─────────────────────────────
 スパイ活動という観点では、当時のシュタージよりも、現在の
巨大IT企業の方がはるかにうまくいっているでしょう。大企業
や政府は必ずしも善良ではないという感覚を我々は心の深い部分
で抱えています。私たちが自分のデータの奴隷になりたくないな
ら、データを保護し、規制する必要があります。「データ保護」
という言葉は、単にデータを守るという意味だけではなく、人間
の尊厳とプライバシーを守る盾という意味があるのです。
               ──NHKスペシャル取材班編
    『やばいデジタル/現実(リアル)が飲み込まれる日』
                  講談社現代新書2594
─────────────────────────────
 現在ロシアの大統領であるウラジーミル・プーチン氏は、かつ
ては、このシュタージの工作員であり、それを裏付ける身分証が
ドイツ東部ドレスデンのシュタージ記録保管所で発見されていま
す。その写真をネット上で発見したので、添付ファイルにしてあ
ります。若いですね。
 シュタージに代表される苦い歴史を有するヨーロッパでは、現
代の巨大IT企業(GAFA)による個人データ独占には、高い
関心と警戒心を持ち、世界に先んじて議論を重ね、様々な対応策
を打ち出しています。そして、EUでは、世界でも最も厳しいと
いわれるデータ保護の法律「GDPR」を施行したのです。20
18年5月25日のことです。GDPRとは、次の言葉を省略し
たものです。
─────────────────────────────
      ◎GDPR:EU一般データ保護規則
      General Data Protection Regulation ───
──────────────────────────
 GDPRによって、企業が個人情報を取得するさいのルールは
きわめて厳格化され、事実上、企業が人物像のプロファイリング
をすることは禁止されています。違反したときの罰則は厳しく、
その制裁金は最大2000万ユーロ(約25億円)もしくは連結
決算の4%という巨額になっています。
 このように、ごく少数のプレーヤーの手に権力が集中し、イノ
ベーションや競争が妨げられることを「監視資本主義」といいま
す。監視資本主義とは、企業が個人情報を収集することで、消費
者の行動を個別に分析し、予測し、変容させ、利益を上げる仕組
みのことです。
 EUでは、このGDPRだけでなく、2017年からDECO
DEを立ち上げています。GDPRが、法律というトップダウン
型であるのに対して、DECODEは、個人データの主権を個人
に取り戻すための個人からのボトムアップを目指しています。D
ECODEとは、次のことを意味しています。
─────────────────────────────
 ◎DECODE/脱中心的市民所有データエコシステム
     DEcentralized Citizens Owned Data Ecosystem
─────────────────────────────
 DECODEの理念は、個人データの主権を個人に取り戻すこ
とにあり、そのための新技術を開発し、プライバシーを保護しな
がら、企業、行政、そして個人にもメリットのあるシステムを作
る社会実験です。DECODEには500万ユーロの資金が提供
され、ヨーロッパ中の研究者や政策立案者、プログラマを集積さ
せて、現在、14の個別プロジェクトが進行しています。
 これらのプロジェクトは、主としてスペインのバルセロナ市や
オランダのアムステルダム市ではじまっていますが、パルセロナ
市のDECODE担当者のポール・バルセス氏は、「データは新
しい人権」として次のように述べています。
─────────────────────────────
 データはいわば新しい人権だと考えるようになりました。もは
や市民が生み出すデータを行政サービスで使用することほ避けら
れません。しかし、それは人々に許可をもらったうえで利用する
形にしなければいけないのです。
 なぜデータを使用するのか、目的は何か、どういった条件、ど
ういった契約関係のもとで使用するのかといったことを説明する
透明性が必要であると考えています。透明性が基本原則として確
保されることは、長い目で見ると、行政や企業が行おうとしてい
ることを市民に理解してもらえるということなので、結果的に物
事がスムーズに流れ、生活もより便利になっていくでしょう。逆
に透明性がなければ、いずれ信頼が失われてしまい、社会は間違
った道を進んでいくことになるでしょう。
         ──NHKスペシャル取材班編の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[デジタル社会論/013]

≪画像および関連情報≫
 ●監視資本主義とはなにか/「スーパーシティ 」の内実を
  暴く/小笠原みどりの「データと監視と私」
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   監視資本主義とは、企業が個人情報を収集することで、消
  費者の行動を個別に分析し、予測し、変容させ、利益を上げ
  る仕組みを指す。個人情報の収集は現在、私たちがインター
  ネットにアクセスする度にほとんど自動的に生じている。
   ズボフ教授は、特に米IT大手企業グーグルに焦点を当て
  る。例えばグーグルで何を検索したか、グーグルの管理する
  Gメールで、誰に何回、どんなメッセージを送ったかなどの
  データから、私たちの興味や関心、人間関係がわかる。グー
  グルはこうして大量に抽出したデータを他の企業に売って、
  企業が私たち一人ひとりに狙いを定めたターゲット広告を打
  つことを可能にしてきた。だから個人情報によって収益を上
  げる仕組みは、IT企業だけでなく、他の小売業やサービス
  業を含む市場全体に及び、実際のところ、日本でも多くの企
  業が「21世紀の石油」とばかりに、個人情報集めに躍起に
  なっている。
   グーグルは便利だし、何を検索しているか、メールに何を
  書いているか見られても別に構わない、と感じる人もいるか
  もしれない。が、企業があなたの仕事や週末の行動パターン
  を探るだけでなく、秘密や弱みや悩みにつけ込み、不安を煽
  ってダイエット商品を買わせたり、興奮を誘ってゲーム中毒
  にさせたりしているとしたら、どうだろうか。
                  https://bit.ly/3oYbsMQ
  ───────────────────────────
シュタージ時代のプーチン氏.jpg
シュタージ時代のプーチン氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論T | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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