2001年07月12日

●3つの強者はデフレを愛する(EJ第657号)

 手違いがあって、途中で11回分(EJ657号〜EJ667
号)が脱落していることに気がつきました。そこで、本日からそ
の分を連載します。間違いのありましたことをお詫びします。
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 デフレになると、誰がトクをするか考えてみます。森永卓郎氏
によると、次の3つの強者がトクをするというのです。
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  1.第1の強者/日銀とそれに結託する富裕層
  2.第2の強者/経営者
  3.第3の強者/構造改革派エコノミスト
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 第1の強者は「日銀とそれに結託する富裕層」です。
 1万円札の原価は17円だそうです。それが1万円として流通
するのです。それは皆が1万円だと思っているからこそ、市場で
は1万円として流通しているわけです。
 デフレになると、何もしなくてもその1万円の価値が上昇する
のです。逆にインフレになると、1万円の価値は下がってしまい
ます。紙幣はいわば日銀の製品ですから、その紙幣の価値が上が
るのがいいのか、下がるのがいいのかといったら、上がるのがい
いに決まっていますね。
日銀が金融引締めをするのは紙幣の価値を下げないというより
上げたいと考えているからではないかと思われます。日銀のこう
した対応につけこんだのが現代の強者――能力の高い人、既得権
益に守られて所得を確保できた人なのです。そういう人たちは、
下がり続けるモノ、株式、不動産などを買い占めてますます強者
になっていきます。彼らにとって、デフレは大歓迎といえると思
います。
 第2の強者は「経営者」です。
デフレで失業率が高まれば、経営者はいろいろな面において強く
なります。賃金引下げ、労働強化、リストラなど、やりたい放題
何でもできますね。今まで解雇権の乱用を厳しく戒めてきた日本
の労働市場で「希望退職」という名の首切りを自由にできるよう
になっているのもデフレのおかげといえないでしょうか。
 第3の強者は「構造改革派のエコノミスト」です。
 構造改革派のエコノミストといってもピンとこない向きもある
と思うので、実名をひとり出しましょう。竹中平蔵経済財政担当
相はまさにその筆頭といえるでしょう。
 彼らはグローバルな競争に勝ち抜くためには経済の構造改革は
不可欠であり、その中で多少のデフレ圧力が起こるのはやむを得
ないという考え方に立ってデフレを正当化しています。経済がこ
ういう状況でなければ、竹中氏が大臣になることはまずなかった
と思われます。
 また、構造改革派のエコノミストたちの巧妙なことは、デフレ
で国民を不安な状況に陥れると同時にIT革命というバブルを作
り出して、それに乗るかたちで自己の資産を増やしていることで
す。そのこと自体は別に悪いことをしている訳ではありませんが
そういうことができるからこそ強者といえます。構造改革派のエ
コノミストたちはまさにこの世の春でしょう。
 さて、米国でも1990年代のはじめには日本と同様に大きな
金融システム上の困難、不良債権による銀行のバランスシート問
題をかかえていたのです。
その米国を救ったのは日本の日銀に当るFRBの議長であるグリ
ーンスパン氏のとった金融政策であるといってよいでしょう。グ
リーンスパン議長は、1992年〜93年にかけて大胆な金融緩
和政策を行い、銀行のバランスシートを回復させると同時に金利
低下やドル安による景気回復を実現させたのです。
 そのグリーンスパン氏も昨今の米国のバブル・マーケットの崩
壊によって、その評価は大幅にダウンしています。それは、19
97年〜2000年までの4年間、資産バブル(インフレといっ
てもよい)を放置してきたからです。
 ある情報によれば、グリーンスパン氏は、クリントン前大統領
とゴア前副大統領から、大統領選の行われる2000年まで何と
か高値の株式市場と低失業率をサポートしてくれと頼んでおり、
グリーンスパン氏はそれを受け入れたのではないかといわれてい
るのです。
 そして、グリーンスパン氏はこの4年間にわたるバブルの放置
を正当化するため「ニューエコノミー論」なる理論を持ち出して
説明してきたのです。その是非については、いずれEJで取り上
げますが、とにかくこのグリーンスパンなる人物、調べれば調べ
るほど凄い人であると思います。
 テレビによく映るグリーンスパン氏というと、道路を歩いてく
る映像やビルに小走りに駆け込む映像が多いですが、FRB本部
議長室でPCを操作するグリーンスパン氏の写真を添付ファイル
でご紹介しましょう。これは大変珍しい写真です。
 彼は30分ごとにPCで米国債、ダウ平均株価、外国為替、原
油、金など、金融市場の状態を示すデータのチェックをしている
ということです。わが速水日銀総裁はどうなのでしょう。速水総
裁はPCを使えるのでしょうか。
 基本的には、現在の日本の経済を回復させるためには、グリー
ンスパン氏が1992年〜93年にかけてとった金融緩和策をと
るしかないと思われます。要するに金融緩和策、具体的にいえば
円安誘導と日銀国債引き受けしかないといえます。
 しかし、それをやる前提として日銀がインフレを調整できると
いうことが必要になります。しかし、日銀はかねがねそれはでき
ないといっています。確かに物価を上げて、それを一定の水準で
止めるということはやさしいことではありません。しかし、それ
をやるのが中央銀行の役割のはずです。そんなことはできないと
する日銀は能力がないといっているのと同じです。
 構造改革派のエコノミストたちは、金融緩和は「モルヒネ」に
過ぎないといっていますが、量的緩和こそ構造改革を前進させる
のです。というのは、量的緩和が進むとデフレが止まりますが、
逆に金利が上昇します。そうすると、金利が払えない企業が淘汰
されます。デフレが止まれば担保が減額しないので、銀行は追い
貸しせず、担保を処分して資金を回収できるのです。
               −−[円の支配者日銀/13]

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posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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