2020年12月21日

●「GoToは感染拡大のエビデンス」(第5395号)

 2020年のEJは、今日を含めてあと5回です。テーマがコ
ロナですので、コロナの話題を中心に取り上げていきます。新年
からは新しいテーマです。
 GoToキャンペーンの継続拡大に意欲を燃やす菅首相が、繰
り返し次の発言をしています。
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 GoToキャンペーンが感染拡大の主要な原因であるという
 エビデンスはない。             ──菅首相
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 これは、11月20日に出した政府への提言の「参考資料」と
して添付されていたものです。常識的に考えれば、GoToキャ
ンペーンで大勢の人が移動すれば、そのなかには無症状の感染者
がいて、移動によって感染を拡大することが考えられます。しか
し、それを証明するエビテンスは今のところ存在しないといって
いるに過ぎないのです。ちなみに、その参考資料のタイトルは次
の通りです。
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 航空旅客数と感染者数の増加には、統計的な因果関係は確認
 できない。                ──参考資料
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 さらにそれに先立つ11月12日のことです。ウイルス学で世
界的な業績を持つ東大医科学研究所の河村義裕教授の次の論文が
公開され、官邸にも報告されているのです。
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 「現在流行中のSARS-Cov-2 d614G 変化株は、 高い増殖効率
 と感染伝播力を示す」──東大医科学研究所の河村義裕教授
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 しかし、菅首相は、河村義裕教授の論文には関心を示さず、参
考資料の方を重視しています。なぜなら、GoToキャンペーン
を何としてでも続けたい菅首相にとって、その推進を支える拠り
所がほしかったからです。
 それでは、参考資料とはどういう内容なのでしょうか。
 「週刊文春」/12月24日号によると、「新千歳空港(北海
道)、福岡空港(福岡県)、那覇空港(沖縄県)の3か所におけ
る航空旅客数と、自治体の感染者数が折れ線グラフで比較されて
いるもので、例えば、北海道の感染者数グラフは、10月中旬か
ら右肩上がりでカーブを描く一方において、旅客数はこのタイミ
ングで山なりに下降傾向にあり、確かに2つの数字は関連性がな
いように見える」とあります。
 この資料について、緊急事態宣言で“8割おじさん”として有
名な西浦博京都大学大学院教授は、次のように批判しています。
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 非常に杜撰なデータです。航空旅客数と感染者数の因果関係を
調べるなら、コロナの潜伏期間も考慮すべきなのに、単純な人数
比較しかしていません。本来、航空旅客数と比較すべきなのは、
感染者数ではなく、1人から何人に感染が広がるかを示す「実効
再生産数」。問題の資料をベースに比較してみたところ、航空旅
客数が増えた直後に二次感染が増えていることが分かりました。
  ──西浦博京大大学院教授/「週刊文春」/12月24日号
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 「人々の移動は感染拡大に影響する」ことは常識ですし、そん
なことは素人にだってわかります。しかし、そのことを客観的に
示すエビデンスがないだけです。したがって、そういうエビデン
スがないからといって、GoToキャンペーンを推進していい理
由にはならないのです。
 分科会の学者グループの不満が頂点に達したのが、12月1日
の菅首相と小池都知事との会談で決まったことです。
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[東京/1日/ロイター]菅義偉首相と東京都の小池百合子知事
は1日夕に会談し、東京発着のGoToトラベル事業について、
高齢者や基礎疾患を持つ人の利用自粛を求めることで合意した。
 菅首相は会談後、記者団に対し、「国と都がしっかりと連携し
感染拡大を何としても阻止することで一致した」と語った。両者
は午後6時半から官邸で会談。菅首相はその後に記者団に対し、
小池都知事から高齢者や基礎疾患を持つ人の利用自粛を呼びかけ
たいと申し出があったと説明した。その上で「東京都の対応とし
て理解できる」と都知事に伝えたことを明らかにした。
                  https://bit.ly/3ntgFLX
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 これについて、「あまりにもナンセンス」と批判したのは、分
科会のクラスター追跡の中枢メンバーで、公衆衛生学の「世界的
権威」である押谷仁東北大学大学院教授です。押谷教授は、決定
から2日後の12月3日に厚生省アドバイザリーボードの会議に
次のレポートを提出しています。
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     国内移動歴のある例での二次感染の頻度
         ──押谷仁東北大学大学院教授
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 これは、1月13日から8月31日の期間で、感染者の移動歴
が公表されている2万5276例を解析したもので、国内移動を
した人が他の人に感染させた割合(A)と、移動歴のない人や不
明な人が他の人に感染させた割合(B)の比較です。
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           A:25・2%
           B:21・8%
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 これを年代別にみると、感染して移動している症例数は圧倒的
に若年層が多く、移動した後に二次感染を起こした人も若年層に
多く、65歳以上だけのGoTo自粛はナンセンスてせあると指
摘しています。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/139]

≪画像および関連情報≫
 ●東京のGoToトラベル一部自粛に効果はあるか/元気な高
  齢者はそれでも旅行へ
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   政府は3日、観光支援事業「Go To トラベル」の東京
  発着旅行の自粛要請について、65歳以上の高齢者や基礎疾
  患がある人は、予約済み旅行を13日までに解約すればキャ
  ンセル無料になると発表した。重症化リスクの高い人に旅行
  を控えてもらう狙いだが、「中途半端。果たして効果はある
  のか」と疑問の声も上がる。
   自粛を呼び掛けるのは、12月17日までに東京を出発、
  または到着する旅行。小池百合子知事は2日、「東京の経済
  の規模は極めて大きい。全国への波及効果も非常に大きく、
  その点を重視して自粛していただくということで(国と)合
  意をした」と理解を求めた。豊島区の巣鴨地蔵通り商店街で
  洋傘店を営む小林哲さん(53)は「お年寄りに外に出るな
  と言われると、巣鴨の店としてはつらい」とこぼす。都民が
  日帰り旅行で地域共通クーポンを使うなど客足が戻り始めた
  が、「11月になってから人通りがめっきり減った」。
   同商店街を歩くお年寄りからは諦めや不満の声も。北区の
  女性(80)は「感染で重症になって死ぬのは自分たちだか
  ら」と遠出をする気にはなれないという。文京区の80代の
  男性は、「お年寄りは、ずっと頑張って働いてきた人たちで
  しょ。その人たちだけ楽しみを奪われるのはどうかと思う」
  と不満げだった。        https://bit.ly/2Wtxtqj
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西浦博京大大学院教授.jpg
西浦博京大大学院教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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