2020年11月25日

●「キレの良くない政府コロナの対策」(第5377号)

 2020年11月21日付、産経新聞は、次の記事を発信して
います。産経新聞といえば、最も政府寄りの新聞ですが、この記
事はかなり政権に対して批判的です。こんな大事な時に菅首相が
記者会見を開かず、ぶら下がり会見で済ましているからです。
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◎首相、感染拡大でも記者会見開かず/2020年11月21日
 新型コロナウイルスの新規感染者数が増え続ける中で、菅義偉
首相の情報発信に消極的な姿勢が目立っている。国民の不安や疑
問に応える情報発信は政府トップの役割の一つ。感染状況が悪化
した11月以降、首相は記者団のぶら下がり取材には応じるもの
の、記者会見は開いていない。    https://bit.ly/2V1LUkR
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 11月21日、1日の感染者が4日連続2000人を超え、専
門家による分科会の強い提言に押され、菅首相は肝いり政策であ
る「GoToキャンペーン」の見直しを表明しましたが、このと
きもぶら下がり会見しか行なわず、記者の追加質問にも答えず、
記者に背を向けています。これは、記者ではなく、国民に背を向
けているのと同じです。
 コロナ禍のような国家的危機に陥ると、国のトップの資質が見
えてきます。野口悠紀雄氏は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相
のこの国家的危機に対する対応を高く評価する一方で、わが国の
前首相の対応を批判しています。とくに、事態が深刻だった4月
12日の時点で、「私は犬を抱いて自宅で寛いでいる」という動
画を投稿していたことを批判し、次のように述べています。
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 われわれは、いま極限の恐怖の中にいる。医療が崩壊すれば、
コロナに感染したらどう扱われるか分からない。これは、底知れ
ぬ恐怖だ。持病が悪化しても、怖くて病院に行けない。医療関係
者たちは、医療崩壊寸前の現場で必死の努力を続けている。
 在宅勤務をせよと政府は言っているが、満員電車で通勤しなく
てはならない人が大勢いる。収入が激減したので、これから生活
を維持できるかどうか分からない。
 メルケルが正しく指摘しているように、これは、第2次世界大
戦以降、経験したことがなかった事態だ。そうした中で、最高権
力者とその周りの人々だけが、この恐怖から逃れている。コロナ
は誰にも平等というが、感染した場合の扱われ方は違う。彼らは
熱が出ても、保健所に連絡して指示を受ける必要はないだろう。
そうしなくとも手厚く看護される。そして、所得減少は、2割の
歳費削減だけだ。
 国民が極限の恐怖に直面する中で、恐怖をまったく感じていな
い人たちがいるということがよく分かった。私の友人が2月下旬
に言った。「コロナに感染するなら早いはうがよい。入院できる
から。医療が崩壊してからでは、放置される」。そして、「権力
者はこの恐怖を理解できないだろう」と言った。あまりに恐ろし
い予言なので、何とか忘れようとしていたが、思い出してしまっ
た。「うちで踊ろう」というのだが、いまの日本で踊りたくなる
人が、いったい何人いるのだろか。
           ──野口悠紀雄著『経験なき経済危機/
 日本はこの試練を成長への転機になしうるか』ダイヤモンド社
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 そもそも国の対応は、最初からキレがよくなかったのです。安
倍首相が東京などに緊急事態宣言を発令する方針を固めた4月6
日の正午前のこと。小池東京都知事は、都庁で報道陣に「さまざ
まな準備に入っている」と明かしています。その準備の1つが、
宣言と同時に店舗などに休業を要請することだったのです。
 6日午後4時ごろ、都は都議会の各会派に、休業要請の対象業
種リストを示し、翌日の宣言発令を前に、小池知事は午後5時か
ら発表すると決めていたのです。ところが、休業要請のリストを
入手した政府は、休業要請による経済への影響を懸念し、都に対
して「待った」をかけたのです。その原因としては、対策の根拠
となる特別措置法の規定が、両者の権限を曖昧にしているという
点があったのです。
 政府と東京都の折衝は難航したのです。「理髪店はだめ」「百
貨店もだめ」。次々と注文を付ける審議官に、都幹部は「感染拡
大を防ぐためには、今やらないといけないんです」と食い下がっ
たが、それでも両者は折り合えないまま、午後7時に安倍首相は
7都府県への緊急事態宣言を発表しています。
 同じころ、それでも小池知事は都庁で会見を開き、「休業要請
は10日発表、11日実施」と表明。一歩も引かない構えを見せ
ています。このやり取りでは、感染を何とか拡大させまいとする
小池知事の真剣さが政府を上回っていたように感じます。なぜな
ら、都と政府の調整が難航するなか、都内の新規感染者数は8日
9日と連続して最多を更新していたからです。政府は休業要請の
2週間先送りを求めていますが、小池は「命の問題だ」と抵抗し
「経済か命か」の二者択一を迫るような小池知事の訴えに、世論
も「国が都を邪魔している」ととらえて背中を押し始めたことも
あり、東京都は独自の休業要請や、飲食店などへの営業短縮の要
請を発表したのです。
 そして、協力事業者に対しては、「感染拡大防止協力金」を支
払う制度を創設。2店舗以上を持つ事業者に100万円、1店舗
の事業者には50万円を支払う方針を表明しています。
 しかし、安倍首相は、「個別の損失を直接保障するのは現実的
ではない」と主張しています。間接的影響までを含めると、総額
が巨額になってしまうからです。また、「自粛は要請であって強
制ではなく、したがって補償の義務はない」ともいっています。
腰が引けているのです。こういう都との交渉のバックにいたのが
菅官房長官(当時)です。菅首相の「自助/共助/公助/そして
絆」の考え方は、こういうところから出ているのです。本来営業
自粛要請と補償はセットであるべきです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/121]

≪画像および関連情報≫
 ●休業補償の問題をどう決着させるか/木内登英氏
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   4月7日の政府の緊急事態宣言を受けて、対象区域7都府
  県の一つである東京都では、感染拡大のリスクが高いと考え
  られる一部業種に対して休業要請を実施した。これに先立ち
  対象企業の支援とともに、要請の実効性を高める観点から、
  休業要請に応じた企業に補償を行う、いわゆる「休業補償」
  を政府(国)に求める声が高まっていた。全国知事会も政府
  に対して、休業要請で生じる事業者の損失を補償するよう提
  言していた。
   しかし、政府は「休業補償」を実施しないとの方針を堅持
  したことから、東京都は、自らの財源を用いて休業および時
  短要請に応じた企業に給付する「感染拡大防止協力金」制度
  を新たに創設した上で、企業に対して休業要請を実施した。
  対象区域の他府県も、東京都と概ね足並みを揃えて、一部業
  種の企業に対して、休業要請を実施していく流れとなった。
   しかし、東京都と比べて財政余力が限られる他府県は、引
  き続き政府に対して休業補償を求めており、両者間で激しい
  議論が続いている。世論は、政府(国)に休業要請を実施す
  べきという論調に傾いている。共同通信社が10〜13日に
  実施した全国電話世論調査によれば、緊急事態宣言を受けて
  休業要請に応じた企業や店舗の損失を国が「補償すべきだ」
  との回答は82・0%だった。これは、「補償する必要はな
  い」との回答の12・4%を大幅に上回っている。
                  https://bit.ly/3lVVd1j
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「うちで踊ろう」/安倍首相
「うちで踊ろう」/安倍首相.
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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