2020年11月20日

●「1人当たりGDPでの日本の惨状」(第5375号)

 20年以上にわたって経済が成長しない国である日本、ひたす
ら悪いタイミングで消費税を何回も増税し、そのつど成長の足を
引っ張っています。そのため、ずっとデフレのままであり、国民
もそれに慣れてしまっています。ところが、衝撃のデータが野口
悠紀雄氏の新刊書に出ています。
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          1人当りGDP    労働生産性
   アイルランド   84575   185842
     アメリカ   62852   130300
      ドイツ   54456   100655
     フランス   46242   110653
     イギリス   46885    96010
       ―――――――――――――――――――
       日本   41501    76189
       韓国   42135    81071
       ―――――――――――――――――――
    スロベニア   38785    78730
      トルコ   28454    80642
               注/単位ドル/OECD
           ──野口悠紀雄著『経験なき経済危機/
 日本はこの試練を成長への転機になしうるか』ダイヤモンド社
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 この数字は、OECD(経済協力開発機構)のウェブサイトに
出ている数字です。2018年の日本の1人当りGDPは、4万
1501ドルで、米国の66%にしか過ぎない低さです。ところ
が、米国に負けても、日本人はあまり恥ずかしいとは思わない習
性が身についています。しかし、1990年代は、日本の1人当
たりGDPは米国よりも高かったことがあるのです。
 衝撃的なのは、日本は韓国にも抜かれていることです。日本人
はあまり意識していませんが、韓国人はこの数字を十分意識して
おり、「日本何するものぞ」と考えています。知らないのは、日
本人だけということです。このように、日本は韓国にも抜かれて
おり、表には載っていないものの、イタリアにも後塵を拝してお
り、スペインにも抜かれる寸前です。
 表の右側の数値「労働生産性」は、就業者1人当りのGDPを
あらわしています。これを見ると、日本は、米国の59%でしか
なく、韓国だけでなく、スロベニアにもトルコにも抜かれている
のです。日本のメディアでは、こういう日本の惨状を伝えること
はありません。野口悠紀雄氏にいわせると、「まさに惨憺たる状
況にある」といえます。
 国民の数による格差で中国の1人当りGDPは低くなっていま
す。2000年では中国は日本の3%でしかなかったのです。し
かし、2020年には日本の27%、IMFの予測によると、2
022年には日本の3分の1に達するといわれます。経済が成長
しないということは、こういうことを意味しているのです。韓国
との差について野口悠紀雄氏は次のように述べています。
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 韓国では、次世代通信である5Gの商用サービスがすでに開始
されている。それに対応したスマートフォンでも、サムスン電子
やLG電子の製品が大きなシェアを占めている。大学のランキン
グでも、韓国は力を蓄えつつある。国際機関のトップの座に就く
韓国人出身者が増えている。
       ──野口悠紀雄著/ダイヤモンド社の前掲書より
─────────────────────────────
 添付ファイルとして上下2つのグラフがあります。これも野口
悠紀雄氏の新刊書に載っていたものです。上のグラフは、OEC
Dの平均値よりも高いグループの順位です。ここには、アメリカ
とドイツ、これは、G7平均を超えている2国です。カナダ、イ
ギリス、フランスはそれに続いてます。G7のうち5国がこのグ
ループに入っていますが、日本は、入っていません。
 下のグラフは、OECDの平均値よりも低いグループの順位を
示しています。ここにイタリアと日本が入っています。情けない
話です。すなわち、G7では、イタリアと日本はこの位置にいま
す。このグループでは日本の前に韓国がいます。イタリア、韓国
日本、ニュージーランド、スペイン、チェコ、イスラエルの差は
わずかであり、順位が変動しても不思議はありません。とくに日
本の場合、経済がまるで成長していないので、これらの国々にど
んどん抜かれる可能性があります。
 日本はG7の最下位です。これに関して野口悠紀雄氏は、次の
ように述べています。
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 低所得グループの中では、日本は上位にあるが、それでもイタ
リアと韓国より低位にある。1人当りGDPでも労働生産性でも
OECD平均値よりも高い国を「先進国」と定義するならば、日
本は残念ながら、先進国とはいえない状態になっている。しかも
労働生産性の場合には、日本はOECD平均よりも低いグループ
の中でもかなり低い順位にいる。
       ──野口悠紀雄著/ダイヤモンド社の前掲書より
─────────────────────────────
 問題は、このような事実をどのくらいの日本人が知っているか
ということです。なんだかんだといっても、日本は中国と並んで
アジアの重要な存在であり、先進7ヶ国のなかで重要な地位を占
めていると思っているのではないでしょうか。
 1978年のボン・サミットでは、日本とドイツ(西ドイツ)
が世界経済を牽引する機関車であるといわれたものです。しかし
それから40年経って、ドイツは上位に踏ん張っているものの、
日本はかつての地位から凋落してしまっています。日本は、何に
問題があってこうなってしまったのかについて、真剣に考え、向
き合う必要があると思います。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/119]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ日本の1人当たりGDPは低いのか
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   日本は国内総生産(GDP)が米国、中国についで第3位
  世界に誇れる経済大国だと言われます。しかし、国民1人当
  たりのGDPはなんと世界26位。有数の経済大国にもかか
  わらず生産性はとても低い。これはなぜなのでしょうか。
  石倉:日本は経済大国だ」と言われていますがどうお感じで
   すか。
  アトキンソン:日本のGDPが世界第3位なのは「日本人が
   勤勉だから」「日本の技術がすごいからだ」と言われてい
   ますが、経済は"労働人口×生産性"で表されますから、ほ
   とんどの場合が人口の差という要因で説明できます。
                  https://bit.ly/3ffh2Xm
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1人当たりGDP国際比較
1人当たりGDP国際比較
posted by 平野 浩 at 08:08| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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