2020年11月17日

●「米国でいま起きているAOC現象」(第5372号)

 米国のジョー・バイデン政権が発足すると、MMT(現代貨幣
理論)が再注目される可能性があります。既にEJでは、MMT
を取り上げ、解説していますが、別の角度からこの理論を検証し
てみることにします。
 アレクサンドリア・オカシオ=コルテスという米国人女性がい
ます。名前が長いので、「AOC」の愛称で知られています。彼
女は、ヒスパニック系であり、前職はバーテンダーという労働者
階級の出身です。AOCは、2018年11月の米中間選挙で、
共和党の大物議員、ジョセフ・クラウリー氏を破って、29歳の
史上最年少で下院議員に当選しています。
 2020年4月末の時点で、ツイッターのフォロワーは685
万4千人、インスタグラムでも436万8千人を有し、自身の考
え方や活動内容をSNSを通じて伝えています。ツイッターでの
発信といえば、トランプ大統領と同じですが、AOCとトランプ
大統領との違いについて、武蔵大学社会学部教授の奥村信幸氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 オカシオ=コルテスのツイッターのタイムラインを見れば一目
瞭然だが、彼女とトランプの大きな違いは、自分自身の一人語り
よりも、リプライ、メンションをしてくれたユーザーへのコメン
ト、自分がとりあげられたものだけでなく、関心があるニュース
やイベント等のリンクやリツイートなど、ツイッターの持つ機能
を最大限に生かしたコミュニケーションをめざしている点だ。そ
のリツイートやリンクも、必ず自分のコメントを追加するなど、
自分に関心を持ってくれたユーザーと対話をしようとしている。
           ──武蔵大学社会学部教授の奥村信幸氏
                  https://bit.ly/35uY2Rm
─────────────────────────────
 AOCは、自らを民主社会主義者と称し、次の2つの政策を推
進しています。
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       @    国民皆保険制度の導入
       Aグリーン・ニューディール政策
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 @はわかりますが、Aはどういう政策でしょうか。グリーン・
ニューディール政策(GND)とは、環境問題や貧富の格差是正
という近代的な課題について、かつて世界恐慌のさいにルーズベ
ルト大統領が推進した政策にちなんだ名称を採用し、具体的には
次のような項目の実現を目指しています。
─────────────────────────────
         @温室効果ガス排出ゼロ
         Aスマートグリット整備
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 政策の具体的な内容に言及することは避けますが、これらの政
策を実現するには、巨額な財源が必要になります。グリーン・ニ
ューディール政策だけでも10年間で7兆ドル(約735兆円)
すべてを合わせると、30兆ドル(約3150兆円)は必要であ
るといわれています。AOCは、そんな巨額のお金をどのように
して調達しようとしているのでしょうか。
 AOCの政策の財源について論じている「道草」というブログ
では、次のように述べています。
─────────────────────────────
 オカシオ=コルテスと同調者たちが法案を通すためには、財政
赤字を理由に使って反対勢力の支出案に対抗するという共和党の
実績ある戦略を潰さなければならないだろう。そこでMMTが登
場する。MMTは政府は増税せずに、さらには、国債で民間から
借り入れすることすらせずとも、支払いをすることができるとす
る。政府は単に新しいお金を作って支払いにあてる。MMTの下
では、政府支出の上限は、政府が国の生産能力を使い尽くすとこ
ろだ。それを超えれば高いインフレがもたらされるだろう。現在
のように、インフレ率が低い限り財政赤字は問題ない。普通の経
済学者は、たとえ自国通貨建ての債務であっても、印刷機に頼ら
ずとも債務を返済する能力があるという投資家からの信頼を失っ
てしまえば危機に陥る可能性があると答えるものだが・・・。
                  https://bit.ly/38HInQE
─────────────────────────────
 その政策が実現できるかどうかは別として、AOCは、20代
の若さで、なぜこれほどまでにダイナミックな政策を展開できる
ようになったのでしょうか。その支援者の1人がステファニー・
ケルトンニューヨーク州立大学教授なのです。トランプ氏が勝利
した2016年の米大統領選で、ケルトン教授は、若者の熱狂的
な支持を集め、民主党の代表決定の台風の目になったバーニー・
サンダーズ上院議員の経済ブレーンを務めていたのです。
 アレクサンドリア・オカシオ・コルテスとステファニー・ケル
トン──MMTは、これら2人の米国人女性によって、注目を浴
びることになったのです。
 AOCの目指す政策は、バイデン氏の政策と一致していますが
問題は巨額の財源です。米国の経済学者で、元財務長官のローレ
ンス・サマーズ氏は、MMTを「ブードゥー経済学」と呼び、全
然問題にしていないし、現在のFRBのジェローム・パウエル議
長も「この理論は間違っている」と発言しています。前FRB議
長のジャネット・イエレン議長も「ハイパーインフレを起こす」
として、反対を表明しています。
 しかし、MMTは、内容を精査すると、決して否定できない内
容を持つ貨幣理論です。少なくとも、「ブードゥー経済学」でな
いことは確かです。MMTに批判が多いのは、現在の経済学と真
逆のことを唱えている面があるからです。しかし、あのビットコ
インも、はじめのうちは、FRBをはじめ、世界の中央銀行関係
者は、まるで理解できていなかったのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/116]

≪画像および関連情報≫
 ●今、アメリカでなにが起きているのか?「AOC現象」が象
  徴すること/池田純一氏
  ───────────────────────────
   アメリカでは、今、小さな旋風が吹き荒れている。
  その旋風の中心にいるのがAOC。この1月に女性では史上
  最年少の29歳で下院議員となった“AOC”=アレグザン
  ドリア・オカシオ=コルテスだ。瞬く間に彼女は2020年
  の大統領選のアジェンダセッターになりつつあり、「AOC
  現象」という、時代を象徴する、文化的アイコンと化してい
  る。実際、AOCは、一年生議員としては異例なことに、年
  明け早々、アメリカの伝統的な報道番組『60ミニッツ』に
  出演し、そこで「1000万ドル以上の年収のある層への所
  得税率を70%に引き上げる」という案や、気候変動対策と
  して、20年をかけて化石エネルギーから、再生可能エネル
  ギーへと完全転換を目指す「グリーン・ニューディール(G
  ND)」などを提唱した。
   特にGNDは、AOCの看板政策だ。AOCは昨年の中間
  選挙の際、国民皆保険や公立大学の学費無料化などを公約と
  して掲げていたが、これらは彼女のメンター(師匠)にあた
  るバーニー・サンダースの2016年大統領選における公約
  でもあった。だがGNDは、AOCが今回、全面的に押し出
  した目標だ。29歳の彼女が50歳になるまでにかなえたい
  夢であり、当然、再生可能エネルギーに転換した暁には、そ
  の後の世界の未来構想も50代以後の彼女の仕事となる。夢
  物語に聞こえるものの、今29歳の彼女が20年かけて行う
  事業といわれれば、その壮大な夢にかけてみたいと思わされ
  てもおかしくはない。      https://bit.ly/3nm7FI2
  ───────────────────────────
アレキサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)
アレキサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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